2005年12月の本の感想



エネアドの3つの枝 最後の封印

樹川さとみ/木々(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

女性が大好きなさわやか好青年のヒューリオンに何があってもなびかない治療師シーリア。とある貴族に言い寄られているシーリアを助けるためにヒューリオンはシーリアの恋人だと宣言し周囲を阿鼻叫喚の渦に巻き込んだが、二人の間にはなにやら事情があるようで……

おもしろかったー。エネアド三部作の最終巻、謎の治療師シーリアとタラシの船乗りヒューのラブストーリー、前2巻にはほとんどなかったファンタジー要素が盛り込まれた物語でした。
なんというかですね、いや、もう、ラブですね。思考の迷宮に突入するシーリアと、とにかくシーリアを口説きまくるヒューの一進一退の攻防(と思っているのはヒューだけでしょうが……)がすばらしい。エネアドの人たちもとってもいい味出しているし、ミシアやララたちの登場&活躍もシリーズを通して読んでいる人間にとってはうれしい限り。そしてアドルファっ!やっぱりここでも墓穴を掘って墓穴に突っ込んでおられました。
やっぱり樹川さんのこの方向でのラブストーリーは好きだなぁ。
Dec/27/2005 ↑TOP
 『エネアドの3つの枝 女ぎらいの修練士
 『エネアドの3つの枝 それでもあなたに恋をする 


GOSICK V―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋―

桜庭一樹/武田日向(イラスト)文庫bk1amazon

夏休みが終わる直前、学園からヴィクトリカが消えた。ヴィクトリカを取り戻すために一弥はベルゼブブの頭蓋と呼ばれる修道院に向かう。ベルゼブブの頭蓋ではなにやら怪しげなマジックショーが開かれるらしく……。

ラブかったです。かなりラブかったです。ヴィクトリカと一弥の間にはもう誰も入れませんっ、というラブ満載のGOSICKの最新刊でした。
ミステリー面ではマリア関係のはかなり初期に見当がつくし、最後の種明かし一挙公開も何かの付録(小学○年生とか?)みたいなノリなので私でも手応えがないなぁと感じてしまったり、今回の事件は二人とは別次元で起きている別個の物語みたいで少々不満な点も残ってしまったりもするのですがそんなこともうどうでもいいのです。とにかくヴィクトリカと一弥が(以下略)。一弥vsヴィクトリカ父や謎に包まれたコルデリア・ギャロの登場などでますます物語は盛り上がってきているというところかなぁ。
次の事件が起きて終わるというなんとも読者泣かせの展開でしたので、次が待ち遠しいです。
Dec/23/2005 ↑TOP
 『GOSICK s―ゴシックエス 春来たる死神―


小説エマ 1

久美沙織/森薫(イラスト)ファミ通文庫bk1amazon

19世紀末、ロンドン。ジョーンズ家の長男ウィリアムは恩師である元家庭教師のストウナー夫人を訪ねることとなる。そこでウィリアムはストウナー家の雑役メイド・エマに一目惚れをし……

これはすばらしいヴィクトリアン小説ですね〜。綿密な取材(?)に裏打ちされた細かな描写。ウィリアムとエマの心情描写もさることながら、ふとした時代背景等の説明が(ライトノベルとしては)すごいですねぇ。オーブン掃除の説明に5ページ以上もかけてますから。
それはそうと、ストーリーとしてはじれったい身分差ラブがとても切ない。エマの控えめさがいじらしい。ウィリアム坊ちゃんのなんとなく情けなくて、でもエマさん一直線なところがおもしろい。一番好きなのはストウナー夫人なんですけど、ね。
原作はちょこちょこしか読んでいないのですが、これを機に一気に読んでしまおうかと思ってしまう罠に落ちそうです。ヴィクトリアン時代・身分差・メイドと坊ちゃんなどのキーワードに反応する方にはお勧めです。
Dec/23/2005 ↑TOP
 


死が二人を分かつまで 2

前田栄/ねぎしきょうこ(イラスト)新書館ウィングス文庫bk1amazon

とある子爵とその奥方が謎のオルゴールが原因で昏睡状態に陥った。事件の解決を依頼された『J・C』はオルゴールを持ち帰るが、『J・C』もまたオルゴールにより昏睡状態に陥ってしまう。『J・C』を救うために、『J・C』の心の中に潜ったミカエラは……

おもしろかったー。今回は『J・C』の過去編。『J・C』の人生の岐路3ポイントでの選択が描かれていました。
1巻ではよくわからない何となく怖い人だったヘンリー卿の好感度がだいぶアップ。『J・C』と出会った直後の彼と今の彼を比べると……、彼いいわ〜。カールと『J・C』の過去ももちろん描かれております。「追う者と追われる者」という簡単な言葉で表すことのできない『J・C』のカールに対する思いがよかったです。しかし、一番いいのはやっぱりミカエラですね。思いやりに溢れ、そして前向きでパワフルないい子だ。とある事情で出番が2ページのウォルフ君にも是非とも頑張ってもらいたいですねぇ。
気になる幕切れでしたので、続きがとっても楽しみ。
Dec/20/2005 ↑TOP
 『死が二人を分かつまで 1


風の王国 河辺情話

毛利志生子/増田恵(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

吐蕃を去り、サマルカンドに向かう慧とその同行人・赤兎は案内役であるシャンシュンの役人カロンと共にタシガンに到着した。街中で助けた少年セギンの姉ウィシスが営む宿に滞在することになるが、街の人間のウィシス姉弟への風当たりはきつく……

風の王国番外編は吐蕃を去った慧が主人公のお話でした。しかし、慧は主人公向きじゃないなぁ。あまりにも淡々としすぎですがな。
それはさておき、いつもながらに楽しませていただきました。淡々としている慧と頑張る少女の微妙な関係がよろしかったですなぁ。で、なんでそこで残るという選択肢を取らないんですか慧さん。淡々としすぎだ……。あと赤兎さんの株が「けっこいいヤツじゃないかと」と急上昇。
本編ではリタイアしてしまった慧のその後が読めて「慧はその後は?去って終わり?」というストレスから解放されたという意味ではこの外伝はよかったですねぇ。
Dec/16/2005 ↑TOP
 『風の王国 月神の爪


銀盤カレイドスコープvol.6 ダブルプログラム:A long, wrong time ago

海原零/鈴平ひろ(イラスト)集英社スーパーダッシュ文庫bk1amazon

至藤響子とドミニク・ミラー。女子フィギュアのトップスケーターであり、よき友・よきライバルである二人のバンクーバー五輪までの軌跡は……

最終章(?)のバンクーバー五輪へ向けたクッションとでも言うべき、今までタズサとリアの陰に隠れてしまいがちだった二人にスポットを当てた物語でした。スケートを始めるところからはじまるのでかなりのダイジェストな展開。まるで『いつ見ても波瀾万丈』を見ているような気分でした。いつもながらの圧巻のスケートシーンに、熱くなる展開はすばらしかったのですが、ドミニクがあんまり好きじゃないので心からは楽しめなかったのは事実。それをさしひいても十分楽しめるんですけどね〜。
さて、次巻からはいよいよ五輪開催ということで、どのような熱い物語が繰り広げられるのかがとても楽しみです。しかし、圧倒的すぎる力を持つリアに勝つとかそいう展開になる想像がつかないよ……。
Dec/14/2005 ↑TOP
 『銀盤カレイドスコープvol.5 ルーキープログラム:Candy Candy all my rules


空ノ鐘の響く惑星で9

渡瀬草一郎/岩崎美奈子(イラスト)電撃文庫bk1amazon

タートムとの問題に一応の決着がついたアルセイフでは、貴族達の交流のために舞踏会が開かれることとなった。フェリオはもちろん、ウルクやリセリナも出席することとなるその舞踏会にラトロアの工作員の襲撃が……。

うわー、おもしろい!一言で表すと”L・O・V・E LOVE!”という感じの展開が非常に好みでございます。お腹一杯。
全編に渡って非常においしい展開でございまして、本当に幸せ。終始ニヤケながら読んでいるといっても過言ではありませんでした。お兄ちゃん!(思ったより展開が早かったですね)とかベル!とかディアメル!とか。そしてフェリオもさすがにあれだけ言われて、行動を起こされると気付きますよねぇ。目のやり場に困るフェリオが少しおもしろかったです。二人とも幸せなエンディングだといいんだけどなぁ。どうなるのか予想が付かないだけに、やきもきしてしまいます。
ラブ方面はさることながら、フェリオの出生の秘密関連にも前進があったのも収穫かな。このことについては、これ以上のつっこみはないように思うのですが。それと、空鐘世界とリセリナのいた世界の関係についてもちらっと。どのようにこの謎が広がっていくのか楽しみです。
あと、ライナスティ。頭突きを食らわされるライナスティに大笑い……、じゃなくて、この作品の一番の謎はライナスティだと思ってしまいました。明かされる日は来るのかっ?。
Dec/11/2005 ↑TOP
 『空ノ鐘の響く惑星で8


蒼闇の刻 華の末裔

足塚鰯/貴里未知(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

人とは異なる能力を持つ異種族”花喰い”の少女カティアは、花喰いの最後の一人としてご近所さんの少年ヨドリギスとともに逃亡生活を送ることとなった。わけも分からぬまま逃げることとなったカティアだが、ヨドリギスはカティアに何かを隠しているようで……。

足塚さんの新作は、二人の神様と十五人の世界の王様がいる世界のファンタジー。結構緊迫した状況なのに、始終和やかムード(のように感じた)のストーリー展開は足塚さんならではなのかな。しかし、全体的に何となくしっくり来なくて物足りない気がしてしまう。二人+変な同行人(出番少なかったけどフィリオール君が好きだ)が無事蒼闇王の元にたどり着けるのかなどは気になります。もうちょっとこれだ!と感じることの出来る面があればもっと楽しめるのでしょうが……。舞台とか二人の置かれている状況は大変好みなので今後に期待。
Dec/10/2005 ↑TOP
 『晩夏の手紙 蛇と水と梔子の花


偽りの花嫁 女神幻想ダナスティア

灰原希・桃木毎実(原作)/椎名咲月(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

女神によって作られたダナスティアにある国のひとつ、グレイル王国は芸術に秀でた国。舞踏会でお披露目される姫君との対面を楽しみにしていた第一王女プリステラであったが、当のセーピア嬢はなにやら悩みを抱えているようで……。

なんだか、けっこうはちゃめちゃな物語だったような。西洋風なのになんで和風な名前が?いきなりタカラヅカっ?などと最初に感じた違和感を乗り越えた中盤以降から楽しくなる話でしたね。表紙見たときに、こりゃツボかもと思ったんですが看板に偽りありまくり。実際はあの表紙で1人も女の子がいないのはサギだと思ってしまったりも……。男装の麗人はツボだけど、反対は一部の例外を除いてあんまりツボじゃないんです。(ネタバレ終了)
オンラインゲームの世界をノベライズしたもので、その世界が「女の子のためだけに」作られたようなものなのでいろいろと違和感ありまくり。続きがあっても、これは回避コースですいません。地雷に特攻するというのはこういう気分なのかもしれない……。怖いもの見たさがあるのならおすすめ。
Dec/08/2005 ↑TOP


鳳拳の花嫁 朱明探求

森崎朝香/由羅カイリ(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

綏の後宮の舞姫・朱桃は閃の次期国王・巴翔鳳の器を見極めるために閃に向かうこととなった。閃に向かう道中、翔鳳とその従弟・稜伽と親交を深める朱桃であったが、閃にたどり着くやいなや閃王崩御の知らせが……

えー、えーと、この前みたいに「心の涙で前が見えませんっ!」ということはないんですけど、「ちょっと切なくて目の前がかすんでます」レベルの終わり方でした。前巻で期待していた彼の人が出奔した経緯やらなんやらが語られる話なのですが、前巻を読んでいなくても楽しむことは可能です。朱桃の舞への並々ならぬ情熱や翔鳳の求めるもの、そして3人の何とも言えない関係の形成過程とかを結構楽しめました。何より、翔鳳がかっこいいし(結局ここが一番大事〜)。それにしても、綏の悲惨さには合掌。『雄飛の花嫁』よりもそれぞれパワーアップしている王太后や仙華がいっそあっぱれ。
といわけで、なんやかんやでやっぱり結構お勧めなわけで。墓所のシーンでは思わずうるっときそうになったりと前2作を読んでいるのであれば要所要所の描写に思わずにやりです。次こそは目指せハッピーエンドということなので、期待しておりますです。
Dec/04/2005 ↑TOP
 『翔佯の花嫁 片月放浪


死が二人を分かつまで 1

前田栄/ねぎしきょうこ(イラスト)新書館ウィングス文庫bk1amazon

劇場で働くミカエラは、幼い頃に感じたものと同じ寒気を感じていた。そこで、ミカエラが助けを求めたのはヴァンパイア・ハンターの『J・C』。ミカエラはJ・Cと共に劇場に向かい、吸血鬼と対峙することになるが、そこにミカエラにもJ・Cにも関わり合いがある青年が現れて……

ヴァンパイア・ハンターと、なぜだかヴァンパイアに関わりをもってしまう女の子がメインのお話でした。私もミカエラと同じくすっかり騙されていましたので、真実(?)を知ったときにはびっくりした口です。さて、この話の中で気になるのはやはりJ・Cとカールの追いかけっこにどう決着が付くか、ですね。カールの事情については来年に出るコミック版で語られそうなので、そちらも期待しておこうかと。
ミカエラがJ・Cの住む家に居着く経過を描いた書き下ろしの短編もかなりお気に入りです。本編が重苦しい雰囲気だっただけに、楽しさ倍増。旅から旅へで鍛えられたミカエラのたくましさがすばらしいですね〜。続きが気になる作品です。
Dec/03/2005 ↑TOP


銀のパルティータ  運命は花嫁を誘う

めぐみ和季/かわく(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

辺境の男爵令嬢ローダリアは臨終間際のディオシラ皇帝の妃となるために都に向かった。ローダリアの使命は、幼い皇太子の後見人になること。しかし、ディオシラを支配するアテオの検分役はローダリアを後見として認めようとはしない上に、皇太子の守役にまで邪険に扱われ……。

前作と同一世界観での新作でした。物語の流れとしては結構好みで、ヒロインも前向きで元気な女の子だったのでかなりポイントは高かったんですが……、なんか、こう、残念ながら全体的に微妙にツボから外れまくっていたんですよね。笑うところの場面(たぶん)でも全く笑えなかったりと……。前作と同じく、どことなく違和感を感じてしまいました。守役とローダリアとか、皇太子も健気でかわいいしでポイント毎に見ると結構おいしいのに。
いろいろとまだまだ謎に包まれた人もいるので(アテオのオルガとか)、続きがあるかもしれない。
Dec/02/2005 ↑TOP
 『運命は銀弓のように