青海の牙―恋語り― / 青目京子

本の感想, 作者名 あ行青目京子

東虎と水見は幼い頃、奴隷のような生活から共に抜け出し、今や有力な海賊・牙衆として海に君臨していた。ある日、二人は海に落ちた周子と円子の双子の貴族の姫君を救う。二人は、巫女姫の力を持つ円子が大王の不興を買ったことから都をおわれ、行く場所がないたため、牙衆に置いてほしいという。


恋語りシリーズ第三弾。中世日本っぽい感じの世界で繰り広げられる貴族の姫君と海賊の首領とのラブストーリーでございました。前回の予想(篠衣さんが主役に違いない)という予想は見事はずれましたが(しかし、きちんと登場されてそのかっこよさを遺憾なく発揮されております)……。
今回は憎き大王が言葉でしか語られぬ存在でしたが、やっぱりやなヤツーというのはかわりませんね。

健気なヒロイン周子とかっこいいヒーロー東虎のつかず離れずの微妙な関係が良かったですね。巫女姫の家系に生まれながらもその力を持たないために劣等感にさいなまれ、力を持つ妹を守ろうとする周子と、その周子の心のわだかまりを少しの会話だけでほぐしてしまう東虎のこのやり取りにとかは王道ながらもやっぱりはずせません。

水見と東虎についてはほろ苦く、なんとなくもの悲しいものが残っています。全てが丸く収まるシリーズではないということは前2作を読んでいたら明らかなんですけどね、やっぱり完全なハッピーエンド好き人間にとってはちょっと辛いモノがあるといいますか。
しかし、そういう点を除いてもかなりお気に入りのお話であるわけでして。最後の最後のエピローグのさわやかさというか、してやってり感はすごく気持ちよくて最後まで読めて幸せーと感じることができますし。

少女小説的胸キュンストーリー好きにははずせない一作かと。各作品単作で楽しむ分にも問題はありませんが、続けて読むと大王の非道さがよくわかって尚よし(←違)。
前作、前々作に引き続き非常に私のツボにごりごりとやってきたので続きも読みたいんですが、ちょっと厳しいのかなぁ。前回は後書きに次回予告があったのに今回はなんだか最後っぽいような……。つ、続きを……。