とある飛空士への追憶 / 犬村小六

本の感想, 作者名 あ行犬村小六

レヴァーム皇国の傭兵飛空士に与えられた任務は皇太子妃候補のファナ・デル・モラルを連れ、単機で敵中の海上を翔破することであった。シャルルは満足な武器もない複座式水上偵察機にファナを乗せ、一万二千キロの空の旅に出る。


いろんなところで絶賛されまくっているので読んでみることにしました初ガガガ作品(でもって、またしばらくガガガも読まないだろうなー←好物そうなのがなさげ)。あまりにも評判がいいのでどれだけごろごろできるんだろうとかなり期待していたのですが、まろんさんうららさんと同じく期待値を高く設定しすぎたらしく、(かなり)面白かったけど絶賛ではないかなぁ、というのがとりあえずの感想です。たぶん私が期待していた「ごろごろ」感を楽しむ作品じゃないんです。もっと別のところに燃える何かを感じる作品なのですが、最近読む本がアレなのが多いので「かなりおもしろい=ごろごろできる」という思い込み回路を形成してしまっているのが悪いのではなかろうかと。

飛行機関係は全く詳しくないんですが、ぬるく好きです。そんなぬるく好きな人でもそれなりに楽しめるんではなかろうかという熱い空中戦のシーンがなかなかによかったです。熱かったです。これ以上書き込まれるとぬるい人間にはついて行けないけどここまでならなんとかついて行けるよ……というぎりぎりラインだこれは。しかし、個人的は飛行機関係はぬるく好き程度なのでまあ置いておくとしてです、やはり本作の最大のポイントはファナとシャルルの距離間でしょう。自分を守るために自分の殻に閉じこもってしまったファナがシャルルの前で年相応の女の子になれるあたりは非常にいいです。なんで荷物が水着だけなんだとかそういう少年向けっぽいサービスも気になりません。すばらしい。ファナの絶世の美女っぷりな描写がどうも受け付けなかったりもしましたがそこら辺はもう些細な問題です。いいですね、ボーイ・(再)ミーツ・ガール。

いろいろな苦難を乗り越えてのエンディングは圧巻でした。後日談となる終章も、さらりと書かれている中にきっといろいろあったのだろうなぁと感慨深いものがあるきれいなラスト。こういう、多くは語らず何気なくかかれている中にもドラマを感じるラストというのはいいものです。

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とある飛空士への追憶
犬村小六/藤沢晴行
小学館ガガガ文庫(2008.02)
ISBN:978-4-09-451052-2
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