アストフェルの舞姫 / 木村千世

本の感想, 作者名 か行木村千世

東領聖撰軍に所属する舞師のシュマリアは、帝都アルサームで開かれる『闘舞』に参加するために東領旅団の仲間と共に旅をしていた。アルサームを目前に立ち寄った村で謎の一団とまみえ、アルサーム到着後も何かと怪しい事件に巻き込まれるシュマリア。シュマリアの組舞の相棒でもある義兄のアレスがなにやらその事件に関わりがあるようだが、その怪しい一団を追いアシュラートの王子達も水面下で動いていた。


第10回えんため大賞ガールズノベル部門佳作受賞作の新人さん。アラビアンな世界で軍に所属する舞を生業とする元気なお嬢さんと、その義兄、そして謎の吟遊詩人に王子様が繰り広げる活劇モノ(?)でした。

元気なヒロイン、その舞の相棒はかっこいい義兄、軍に所属する舞師・楽士たち(特にここが個人的になぜかポイントが高いけど今回はあんまり生かしきれてなかったような)、謎の吟遊詩人、武勇に優れる王子様、帝政を揺るがす一族と、キーワードだけを並べたらかなり好物というか胸躍る展開が繰り広げられそうでおおざっぱに見れば実際もそうだったと思うのですが……、なんか全体的にごちゃごちゃしていてとても惜しいなぁと思いました。私のこの感想が何となく錯綜しているところ(いつものことだというつっこみは無しの方向で)からもよく分かるように、私の理解力の問題もありますが一読しただけではつかみきれない部分が多くて。旅団の仲間達は誰が誰だか最後の最後までつかみきれませんでした(1回読んだだけでは)。
まあそこらへんはちょっと残念かなぁと思うのですが、楽しまないのはもったいないのでヒロインとその義兄の絆に胸を躍らせるといいと思います。ヒロインと義兄の互いを思いやる所とかとてもいいです。謎の吟遊詩人と急に降ってわいたロマンスより義兄です。ヒロインと義兄で行けばいいと思います(※超個人的好み)。一冊だけではもやもやっとしたものが残ってしまうお話でしたので、たぶん出るであろう続きも読んでみようかな、と思います(出ますよね、続刊)。

しかし、この物語を読むのであれば、ヒロインとその周辺が割合と軽い感じの口調で会話するので、そこら辺が許容範囲内で有ることが必要かと。ここは受け入れられない人はたぶん無理だと思うので(慣れるまではちょっと違和感でした)。

imgアストフェルの舞姫
木村千世/蘭蒼史
B’s-LOG文庫(2008.06)
ISBN:978-4-7577-4293-2
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