佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を / 九月文

本の感想, 作者名 か行九月文

大名・鳥居家の姫である「あこ」は、三度延期になった婚儀を今度こそ成功させるために嫁ぎ先である井伊家の領地である佐和山にお忍びで向かう。佐和山城で出会った許嫁の直継は予想外の美形だったが、あこに今すぐ江戸に帰れと告げる。江戸に帰るわけにはいかないあこは、なんとか佐和山城にとどまろうとするが、佐和山に入ってから感じる妙な違和感の正体を知る。


第6回ビーンズ小説大賞 優秀賞・読者賞受賞作品の新人さん。嫁ぎ先(予定)でとある理由から許嫁(とその小姑ポジションの化け猫)に邪険にされつつも持ち前の健気さと根性で最後には許嫁の心をがっちり鷲掴みにする話(うん、間違ってない)。

関ヶ原の戦いから数年後の井伊家、つまりは舞台は琵琶湖の北の方を舞台にした作品で……いつひこにゃんがでてくるのかと!(彦根城は築城の最中です)舞台設定としては結構珍しいような気がするんですがいかがでしょうか(注:日本史ものあんまり読まないのですごく適当な感想です)。

あことその許嫁である直継の思いの描写がとても丁寧で、そして佐和山城の面々が直継のことを本当に慕って支えているんだなぁと感じるあれやこれやが好印象でした。なによりヒロインのあこの健気さと元気さがとても好みです。

あやかし関係はなるほどーと思いつつも、最後のオチは……シリーズ化を見据えたいかにもビーンズ的な終わり方でちょっと違和感を感じました。これ、あこは山を下りて今度はちゃんと嫁ぎましたっていうラストだと思ってたのにまだ続くのかいな!という感じで……(この巻のラスボスの退場の仕方からそんな予感はしてましたが)。しかし、なんやかんやいっても続き出たらたぶん読むと思いますが(結構好きらしい)。

面白いのですが、攻撃力というか、破壊力はあんまりなくて堅実で大人しい優等生的作品だと感じました。もうちょっとこれはっ!っていうところがあるともっと良かったんだけどなぁと思いながら次回作も楽しみです。

きっと続き出たらあこの侍女”しの”と直継の腹心である采女殿にはラブロマンスが生まれると思う(超適当予想)。

img佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を
九月文/久織ちまき
角川ビーンズ文庫(2009.02)
ISBN:987-4-04-454501-7
bk1/amazon