天涯のパシュルーナ1 / 前田栄

本の感想, 作者名 ま行前田栄

山賊の頭領の養い子として育てられてき、養父のあとを継いで頭領となったトゥラルク。中央や神殿と全く関係のない人生を歩んできたはずだったが、ある日彼の山賊のアジトにやり手の青年貴族ヒルクィット卿の兵がやって来、トゥラルクは捕らえられてしまう。ヒルクィットはトゥラルクを行方不明になった第一王子として中央に連れて行くというのだが、そんな自覚が全くないトゥラルクは……


前田さんの新作は、シンデレラストーリーなのかなぁとうい展開を見せるファンタジーでした。山賊の中で育ってきたのに実は王子とかいわれても!とたくましい少年がいろいろ巻き込まれるお話。ヒルクィットが語る言葉や、並べられた過去からはもしかしたら、そう、なのかな?と思わなくもないけど、果たして真実はいかに?というところです。

一巻ということで、世界や登場人物の説明が多め。舞台となるバシュクルムの状況や、バシュクルムをじんわりと侵していくカラクルム帝国や、バシュクルムの神殿の役割など興味深いところが多かったです。そんな若干どんよりとした状況の中、たくましく生きているトゥラルクとトゥラルクを使って何を企んでるんだろうなぁ腹黒ヒルクィット、トゥラルクに脅されまくってちょっとかわいそうないい人の巫子シュルムのそれぞれの立ち位置が面白かったです。
中盤まではまあ面白いかも?という所だったんですが、後半ヒルクィットの婚約者イーシャさんが出てきてからとても素敵でした。やっぱりパワフルな女の人はすばらしい。妙にトゥラルクと意気投合してしまうお姫様でしたが、彼女も今後旅の一行になるのかな?とそこはかとなく期待しつつ、続きを待ちたいと思います。

img天涯のパシュルーナ1
前田栄/Thores柴本
新書館ウィングス文庫(2009.05)
ISBN:978-4-403-54137-7
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