“文学少女”見習いの、初戀。 / 野村美月

本の感想, 作者名 な行野村美月

聖条学園に入学した日坂菜乃は文芸部の部長井上心葉に一目惚れをし、ノリと勢いで文芸部に入部してしまう。果敢にアタックを続ける菜乃だが、心葉は揺れることなく前部長・遠子への想いを胸に抱き続ける。ある日、菜乃は図書館で出会った一人の女性と仲良くなる。「一緒に心中をしよう」と妙なことをもちかけられる菜乃だが、妙に彼女に惹かれてしまい……

「きみに見せるデレは、最初からない」がクリーンヒットすぎました。

心葉部長のもと心機一転の文学部にやってきたノリと勢いで初恋を成就させんとする文学少女見習いの菜乃ちゃんが主役の物語。菜乃ちゃんは明るく元気で心葉を振り回すとてもかわいらしい少女なのですが、ネタが「曾根崎心中」で、いろいろ陰々滅々の風が吹きすさんでいる一連のゲストキャラ関係のアレが……とても切なかったです。心中が究極の愛というのもなぁ。菜乃ちゃんにとても同意してしまいました。
今回から「文学少女の想像」を心葉が引き継いでいますが、遠子のようにうまくいかないことに落ち込む心葉にしんみりしてしまいました。しかり、菜乃ちゃんの体当たりの言葉の数々が図らずしも心葉をよくフォローしていて、とてもいいコンビだなぁと思ったり。

本編終了後なので本編に出てこられるあの人やこの人がちょこっとずつ出てこられるのもちょっともうけもの、かな?まだ少し続くということは、心葉の再デビューのあれやこれやがあるのだろうか?と続きも楽しみにしておこうと思います。やるせない中になにかほっこりするものがあるのがこのシリーズの醍醐味だとは思いますが、次はもうちょっと後味のいいものを……。

“文学少女”見習いの、初戀。
野村美月/竹岡美穂
ファミ通文庫(2009.05)
ISBN:978-4-7577-4829-3
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