嘘つきは姫君のはじまり 東宮の求婚 / 松田志乃ぶ

本の感想, 作者名 ま行松田志乃ぶ

「乳姉妹との秘密を知っている」と、東宮妃候補として後宮に乗り込んできた大姫より思わせぶりな宣戦布告を受けとった宮子は、着々と次郎君との距離を縮めていく大姫に焦燥感を感じていた。

蛍の宮がっ!

乳姉妹のかわりに姫君になりすまし、後宮で東宮に迫られる物語第7段。いろんな人から「今回は凄い」という話を聞いていて、どれだけ凄いのかととても(いろんな意味で)期待して読みましたが、確かに凄かったです。

蛍の宮が。

次郎君と幼なじみならどちらかというと幼なじみだけどそれは実はカムフラージュで本命は蛍の宮です、という私に対するこれは何かの挑戦ですかという程度に蛍の宮が大変な目に遭っていてぎゃーと心の中でごろごろしながら読んでいました。苦労性のお兄ちゃんを地でいく蛍の宮の予想外の活躍っぷりが素晴らしかったです。もうこれ蛍の宮エンドでいいよ!って思ったのは私だけではないと信じたい。
大姫の駆け落ち事件の真相が語られたり、次郎君がだだもれの色気で本気出して迫ってきたりと息もつかせぬ展開の連続でした。そんななか、宮子が出したある結論は……本当に切ないなぁ。自分の気持ち、次郎君の気持ち、そして九条家の一員(の身代わり)としての立場と様々なことを勘案して導き出したあの言葉とはいえ……そしてそこで続くとはなんて焦らし!と続きが楽しみで仕方がありません。

そして、どちらかといえば幼なじみ派の私でも、出番が少ないことが全くどうでもよかった真幸も実は一歩踏み出していて……(大方の読者がたぶん流してると思うけど、アレだよ、あれ!有子姫関係じゃないよ!有子姫の片思いもなかなか切ないけど)、彼の新たな選択もどう影響するのかな、とちょっと期待しています。

img嘘つきは姫君のはじまり 東宮の求婚
松田志乃ぶ/四位広猫
集英社コバルト文庫(2010.04)
ISBN:978-4-08-601394-9
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