風にも負けず粗茶一服 / 松村栄子

本の感想, お気に入り, 作者名 ま行松村栄子

武家茶道の一門、板東巴流の跡取りであることに反抗し、東京から京都に家出をした遊馬は修業をしてみる気になったため、当初父に放り込まれそうになった比叡山の天鏡院に入る。しかし、天鏡院の柴門老師は茶道嫌い。常に空腹と闘いながら、とある事件で老師に心酔した地元のちょいワル少年と一緒に「修業」に入った遊馬は……

遊馬坊ちゃんが、ワイルドに……(物陰から見守る気分)。

板東巴流なんてつぎたくねー!と家出したのはいいものの、転がり込んだ先が「本家巴流」の門下の人で、なんやかんやと茶の湯から離れられないことに気付いていっちょ修業でもしてみるかっ!と比叡山にお籠もりすることにした遊馬坊ちゃんの奮闘を描いたシリーズ二作目。あ、前作感想書いてない。

比叡山のお籠もりが本気でお籠もりで、思った以上にワイルドすぎて面白かったです。遊馬君、ずいぶんとたくましくなって……(物陰から見守る気分)。今回は遊馬の葛藤というより、遊馬を軸に行馬や翠、そして佐保や哲哉、さらには本家を含めた周囲が変わっていく色が強かったですね。主人公は遊馬なんだけど、あくまでも傍観者というかなんというか(うまく言えないんですけど)。遊馬は全然悟りとかは開いていませんが、大物というか器がでかいというか、育ちがいいんだなぁと思います。面倒見のいいアニキ肌のところもかわいい。
前後に語られるカンナのアレコレにあっと驚き、遊馬の弓道のシーンは非常に緊張感があって面白くて、そしてどの人もみんな面白くて。

とても面白いのですが、このおもしろさを言葉に表すことができなくて非常に歯がゆいです。お茶のことまったくわからないのですが、それでも十分面白くて好きなシリーズです。前作含めてとてもおすすめ!

……ですが、この、表紙は、なんというか、どこを狙っているのかとかなんとか。今回の遊馬は弓を引いてるときはこんなに小綺麗じゃないし(笑)。いやべつにイケメンなので問題ないですが、損をしているのか得をしているのかよく分からない表紙だ。

img風にも負けず粗茶一服
松村栄子
マガジンハウス(2010.12)
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