人形草子 桜下の誓いと散華の絆 / 紫月恵里

本の感想, 作者名 さ行紫月恵里

鬼を滅ぼす力を持つ特殊な人形・七宝とその人形に動く力である「息吹」を吹き込むことのできる七宝士。幼い頃死にかけていたところを師匠に七宝士として見いだされた桜は、七宝の瑠璃の主となり、都を、国を守る任務に就いていた。鬼に関する連続殺事件が勃発し、都の守りを担当していた桜は瑠璃とともにその真相を探るが、その背景には七宝と七宝士の悲劇が見え隠れし……

桜ちゃんが結構飄々としてるところがなんだか好きだ。

第一回 一迅社文庫大賞・アイリス部門入選作品の改題・改稿策。なんとなく日本っぽい耶麻を舞台に繰り広げられるジャパニーズ・不思議ファンタジー。どったんばったんファンタジーかと勝手に思ってたんですが、かなりシリアス目に、重たく話は進んでいきました。桜ちゃんの桜餅のくだりはちょっと面白かったんだけど。
連続殺人事件の真相は、それか!と素直にだまされながら読んでました。うまいことミスリードされて、そっちの方向は考えてなかったわーといい意味で裏切られたように思います。七宝士と七宝の絆、短命が故に何かを残したいと思う心、次々にかわる主への七宝の想いと、いろいろやるせなく、切なくなりながら読み進めてましたが……桜とその相棒・瑠璃を見ていると、なにか新しい関係が生まれるんじゃないかな?と少し期待してしまう面もあり。

今回の事件はうまく収まりましたが、きれいにまとまってはいるのですが、桜の「秘密」を含めてもう数冊あっても面白いんじゃないかな?と思ってしまったりも。重めになりがちな展開でありつつ沈み込まないというこの物語の雰囲気が好きなので、次回作も楽しみです。

img人形草子 桜下の誓いと散華の絆
紫月恵里/高星麻子
一迅社アイリス文庫(2011.01)
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