幽霊伯爵の花嫁 / 宮野美嘉

本の感想, 作者名 ま行宮野美嘉

両親と家族を亡くし、遠縁の親戚に引き取られてそこの息子と婚約していたサアラだが、その婚約を解消して不吉な噂ばかりのある「幽霊伯爵」と呼ばれるジェイクの十七人目の花嫁として嫁ぐことになる。住めば都とばかり伯爵家での新生活を満喫するサアラだが、よそよそしい使用人に無関心な夫、そして突っかかってくる親戚の男の子に夜な夜な現れる幽霊と穏やかな日々とは縁遠く……

なんという強いヒロイン。

第5回小学館ライトノベル大賞でルルル賞と読者賞を受賞した作品の文庫化。タイトルだけで政略結婚モノかと思ってたんですが、なんか想像と全然違いました。いい意味で裏切られた作品です。とにかく、ヒロインが強烈。美人で、そのことを自覚していて謙遜する気もなく、言いたいことはずばずば言い、さらに幽霊に動じずそれどころか襲ってきた幽霊に「人」としての道義をこんこんと諭し、マイペースに自分の居場所を作っていきます。さらに、最後の最後は押せ押せな所も面白かった~!腕力というか物理的には強くないんですが、あきらかに物語中最強の人物であったことは確かですね。一歩間違えれば嫌みすぎるヒロインなんですが、彼女のバックヤードが語られるとこれもこれでありだね、と思える愛すべき性格でした。

対するダンナは消極的と言いますか、圧倒的な存在感を醸し出すヒロインに押されて影が薄い。話を動かす人じゃないんですが、ヒロインに押されてもなかなか動き出さないところに読者としてじれじれするという楽しみがあったように思います。

img幽霊伯爵の花嫁
宮野美嘉/増田メグミ
小学館ルルル文庫(2011.06)
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