孤城に眠る薔薇 / 倉本由布

本の感想, 作者名 か行倉本由布

ダミアーノのもとに嫁いだアリーチェは、ダミアーノにとって二人目の妻。一人目の妻はアリーチェの従姉ヴェロニカで、ヴェロニカは三ヶ月前に謎の死を遂げたばかりであった。ヴェロニカの死の真相をダミアーノに尋ねようとするアリーチェだが、ダミアーノの態度はそっけなく取り付く島がない。しかし、アリーチェが夢で出会うダミアーノはアリーチェに優しく、アリーチェの理想そのものであった。

優しいけど切なくて辛い、そして若干後味が悪い良い少女小説でした。

少女小説好きなんですが、実は倉本さんを読んだことがないという半端者でしたのでこれを機会に読んでみました。
お話は淡々と進んでいくんですが、アリーチェがダミアーノに抱く好意と不信の表裏一体の乙女心がなかなかに読み応えがあり、面白かったです。従姉を殺したかもしれない、しかも態度が冷たい、だけど夢で会うときはやさしいと嫌いになれず、薔薇の香りとともに見る夢ではとても幸せで、と夢と現の境界が曖昧で、なんとも幻想的なお話でした。

お話のからくり自体は「おんなのひとこわっ」というところで、伯爵様それでいいのか、というかがまんしろよ!と突っ込みたい点がいくつかあったのは事実なんですが、個人的には好きなお話かなぁ。好きなんだけど、ストレスたまるという何とも言えない読後感であったことは確かですが、倉本さんの他のお話にもチャレンジしてみようと思います。

img孤城に眠る薔薇
倉本由布/くまの柚子
f-clan文庫(2012.01)
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