バルベスタールの秘婚 / 平川深空

本の感想, 作者名 は行平川深空

家に帰ると望まぬ結婚が待ち受けるローダは、遊学先のフロリンダ大陸でお目付け役の教育係の目を盗み、逃亡を図る。意を決して飛び乗った電車でローダを助けたフェルウスと名乗る青年は、暫くの間ローダを「助ける」代わりに、自身も望まぬ結婚を回避するために、「偽装結婚」の相手になって欲しいとローダに提案した。

なかなかに手堅い少女小説でした。

第6回ライトノベル大賞ルルル賞・読者賞受賞作品の新人さんのデビュー作。自分の未来は自分で切り開いてやるんだ、と一歩踏み出した新興国のお嬢さんと、お嬢さんのガッツを見込んで偽装結婚 [1]そういえば、なんか最近偽装結婚物をよく読むような気がする……。を持ちかけたバルベスタールの皇太子さんの物語でした。あらすじ全くチェックせずに読んだので、「秘婚」の秘に宗教行事的なものを想像してたんですが、全くそういうことはなく、周りに内緒で電撃結婚したった!という、そんな意味合いでした。

で、お話ですが。双方結婚から逃れるという目的のために偽装結婚し、期限まで周りをうまく騙す!という基本の設定は結構好きですし、ヒロイン元気で恋するオトメのところも可愛かったしなのですが、全般的にちょっと山が足りないかなぁ、というようなあっさり風味の印象を受けました。展開は面白いんですが、大事件がそんな肩透かしで!とか、フェルウス君の結婚したくない理由が甘いとか、フェルウスとローダの結婚を無効にするという一番の盛り上がりのところの悪役の行動が物足りなさすぎる、とかそのあたり。フェルウス君の最後の告白のあたりは少女小説的にも非常に美味しかったので、そのあたりで相殺といえば相殺なんですが、もうちょっと何か欲しかったなぁ、と。

いろいろ言っていますが基本は好きですし、なかなか好みの安心して楽しめる少女小説でしたので、次回作も楽しみです。

バルベスタールの秘婚
平川深空/くまの柚子
小学館ルルル文庫(2012.07)
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References

1 そういえば、なんか最近偽装結婚物をよく読むような気がする……。