幽閉王子の恋の抜け道 / 斉藤百伽

本の感想, 作者名 さ行斉藤百伽

20歳になるまでに災厄をもたらすと予言され、人の踏み入れることのない山中に幽閉されている第二王子のアキは、教育係兼「看守」の目を盗んで「移動の神具」を使い(タイムリミット付きではあるものの)幽閉先から脱走した。そこで出会ったのは見た目はどう見ても清廉潔白な聖女だが、ある目的のために「偽巫女」をしているフィリア。初めての脱走でフィリアにいいように使われたアキはもう二度とフィリアに関わるまいとするが、移動の神具を使うたびに何故かフィリアと出会ってしまう。そして成り行き上、アキはフィリアのとある目的に付き合うことにするのだが……

偽巫女様が面白かったー!

ルルル文庫でなんとなしに可愛らしい、そして床ローリングなお話を書かれていた斉藤さんの最新作は、幽閉されている王子さまが主人公のボーイ・ミーツ・ガールモノでした。ルルル文庫で男の子が主人公を読むのが初めてのような気がするのですが(あんまり記憶に無い)、こう、元気な男の子と(悪ぶっているけど)健気な女の子っていいね!というお話で満足です。看守(お目付け役)もしれっと脱走を楽しんでいるところが地味にツボに来ました。ひょうひょうとしている側近というものは、いいものです……。
周囲からすればそれは恋だ!と全力で突っ込まずに入られない王子様の不器用さと察しの悪さがよかったですね。ニヤニヤとせざるを得ない。

悪役が何考えてるかわからなくて、ちょっとその辺りもうちょっと何かアレばいいのにな、というところはあったのですが、悪役にいいように扱われているものの伸びしろのある悪役なのに憎めない第一王子などもなかなかに良いポジションで、全体としては好みのお話でした。前作まではシリーズだったのに(数冊続くシリーズ物の方が、好きなのです)またルルル文庫の「読み切り量産」になっちゃうのかなぁ、とその辺りは心配ではあるのですが……次作も楽しみです。

幽閉王子の恋の抜け道
斉藤百伽/山下ナナオ
小学館ルルル文庫(2013/06)
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