花冠の王国の花嫌い姫 騎士と掲げるグラジオラス / 長月遥

本の感想, お気に入り, 作者名 な行長月遥

ひどい花粉症から逃げるために、なんとか北方の小国の王太子イスカとの婚約を成立させた大国の姫君フローレンスだが、北方の国にも夏がやってきてしまう。故国よりましとはいえ花粉は飛んでいるため、フローレンスは自室に引きこもることを決意するが、そんな矢先に西方諸国との国境に大砂漠帝国軍が攻め込んできたという情報がもたらされる。フローレンスは故国の権威を盾に進軍の助けとなるため、軍を率いて救援に向かうイスカに同行することになる。

まさか戦記物少女小説になるなんて!(嬉しい誤算)

シリーズ3冊目。当初は「花粉症から逃げるために嫁に行く」というこの設定だけで1冊読み切りを、というようなお話かと思っていたのに続刊が出て、そしてシリーズ決定の模様で4冊目も無事予定にあるらしいという昨今の少女小説事情から考えると非常に喜ばしい展開の一冊。シリアスめな戦記物少女小説(というジャンルが一般的に認知されている知らないけど(たぶんない)、私の中では確かに存在している)で、非常に楽しかったです。
小細工を弄するよりも実直一本のイスカと、引きこもり生活の中で身につけた軍事的才能を活かした軍略を練るフローレンス、というこの組み合わせが非常に良いもので、そしてフローレンス兄のセクトとフローレンスとの絆もいい兄妹だなぁ、しみじみ思い、そうそう、こういう少女小説っていいよね……と改めて実感した次第です。ついでにいうと、セクトと副騎士団長の息の合ったあれとかこれとか、もああそういえばこのシリーズはコメディだったと思わせる対応で楽しかったです。

というわけで、いろいろと楽しみな点が多いので、硬い部分と柔らかい部分のバランスが非常に良い感じの戦記物少女小説として続きも楽しみにしております。

花冠の王国の花嫌い姫 騎士と掲げるグラジオラス
長月遥/まち
ビーズログ文庫(2015.10)
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