ロマノフ大公女物語 大公の恋文 / 一原みう

本の感想, 作者名 あ行一原みう

18世紀のロシア、ピョートル大帝の娘アンナ公女は偉大な父の庇護の元、妹のリーザとともに宮廷での生活を謳歌していた。ある日、リーザとの真夜中のパーティーのために酒をくすねるために忍び込んだ酒保でであった青年貴族カールは、アンナに求婚するために宮殿に忍び込んできたという。いろいろな思惑が重なりカールと婚約することになったアンナだが、彼がアンナに求婚したのは他に理由があるらしく……

大河ロシアもの、読み応えがありました。

コバルトでわりとどっしりとした物語を書かれる一原さんのデビュー作。この時代のロシアについては表面上しかしらないのでなんとも言えないのですが、どうも調べた限りはかなり忠実に物語が描かれているらしい、そんな骨太のお話。
求婚してきたカールに対し、どこか「自分への恋心」からではないかなという雰囲気を感じ取るアンナ、という展開からこの二人の壮大な恋物語が紡がれるのかと思いきや、この二人の物語が進んでいるようにみせかけつつも、実のところの物語のメインは大帝とアンナの家庭教師マリアの物語だったというそんな物語でした。

非常に面白かったし読み応えがあったので個人的には好きなのですが、一方でこれはコバルトじゃないので読みたかったかもなぁという気持も持て余してしまいました。コバルトだからこそ出版できた物語でもあるとは思うのですが、コバルト文庫のお話はもうちょっとキラキラしてほしいというか、少女小説であってほしいというか。例えば、アンナたちが両親を「とーちゃん/かーちゃん」と呼ぶのは、背景や彼女たちの育ちを考えるとこの訳が一番しっくりくるのですが、なんかモゾッとする!とか、酒浸りのヒロインとか(酒浸り具合があまり美しくなく……)。
史実は史実で置いておくとして、もうちょっと少女小説風味のほうが好きかなと思いつつ、物語としてはとても楽しめたのでそれはそれでありかなと思っています。

ロマノフ大公女物語 大公の恋文
一原みう/真敷ひさめ
集英社コバルト文庫(2014.3)
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