イノシシ令嬢と不憫な魔王 目指せ、婚約破棄! / 秋杜フユ

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行秋杜フユ

騎士として生きることを決めた公爵令嬢クロエは、祖父であり宰相である祖父ヨルゴスの護衛騎士として充実して日を過ごしていた。ある日、ヨルゴスとヨルゴスのもう一人の孫で国王の側近のデメトリに請われ、前王を廃し国を立て直した国王アルセニオスの婚約者として王宮に入ることとなる。時期を見て解消される婚約であり、副産物として「婚約解消後は令嬢としての結婚を望めないため騎士として邁進できる」ことに期待したクロエは、喜び勇んで任務にあたるが……

ラブコメと見せかけてシリアスな展開に持っていく展開が相変わらず面白かったです。

アレサンドリ神国とその周辺国を舞台にした、シリーズものというかスピンオフの最新作。今回は前作で悪役分を一手に引き受けていた国王アルセニオスと、祖父と従兄に口先三寸で丸め込まれて護衛兼婚約者という任務を忠実に果たそうとする猪突猛進なクロエのコメディ分多めのラブコメ(しかし、話が進むといきなりきな臭くなる)が楽しかったです。アルセニオスさんが終始クロエにツッコミを入れていて、前作からは考えられないくらい柔らかい人で、このスピンオフがあって本当に良かったね……と思わずにはいられませんでした。デメトリさんとアルセニオスさんのクロエに対するツッコミがひたすら楽しかったです。

クロエもチート級のある能力を持っているものの、その「おバカ」ポジションでいろいろと台無しなのがこれまた面白かったです。宝の持ち腐れも甚だしい!(ので周囲の人が有効に使ってました)。あとは、アルセニオスさんが華麗に着実に外堀を埋めていくところもよかったですね……。しれっと既成事実を積み上げていく姿が良いものでした。

このシリーズは基本的には独立していますが、今回は前作と直結していたので前作を読んでいたほうがより楽しめる一作だったように思います。そして、この話を読んだ後は、デメトリさんに幸せになってほしいと感じましたのでまた次のスピンオフをお待ちしております。

イノシシ令嬢と不憫な魔王 目指せ、婚約破棄!
秋杜フユ/サカノ景子
集英社コバルト文庫(2017.05)
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