春華とりかえ抄 榮国物語 / 一石月下

本の感想, 作者名 あ行一石月下

貧乏官僚の家に生まれた双子の春蘭と春雷は、一家の苦境を救うべくそれぞれ後宮の女官と官僚として出仕することなるが、活動的な姉の春蘭が春雷として、そして大人しく着飾ることが好きな春雷が春蘭として、それぞれ入れ替わりで都に向かうことになった。

姉弟の男女入れ替わりモノ、期待通りの面白さでした。

とりかえばやをモチーフにした、中華風な国が舞台のドタバタ劇。金勘定が得意で元気な姉が官僚として、そして美人で有名な弟が後宮の女官として出仕することになるが、いろいろと陰謀に巻き込まれて、昔なじみの宦官の手助けもあるものの男女の入れ替わりがばれそうになりつつ、ひらめきと気合と根性と人たらしで乗り切っていくというようなお話。

後宮に入った絶世の美女の身内、ということで駒にするために通常文官が配属されることはない軍事部門である枢密院に配属されることになった春雷(春蘭)が、嫌味な上司に憤慨しつつもマイペースに自分の居場所を作っていく様子が楽しかったです。また、いっぽう春蘭(春雷)は「帝の近く」に侍るわけにはいかないので、あの手この手でそれを避けようとする涙ぐましい努力……とりかえばやならこれよね、という方法ではあるんですが。公女様のででん!がかわいかったです。

根底はシリアスでありながらも、春蘭と春雷の前向きさというかポジティブな姿勢のお陰でドタバタとしたコメディのようにもなっており、気楽に読める楽しい作品でした。そして読んだ後に、この作者さんの作品を以前読んだことがあると気付き、ああ、たしかにこのドタバタ感はあれだ、と納得した次第。かなりのドッタンバッタン感が個人的に若干苦手……なんですが面白かったといういろいろとコメントに困る点もあるのでそれはもう作風なんだろうなぁと思いました。

春華とりかえ抄 榮国物語
一石月下
富士見L文庫(2017.09)
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