2007年7月の本の感想



空ノ鐘の響く惑星で 外伝〜tea party's story〜

渡瀬草一郎/岩崎美奈子(イラスト)電撃文庫bk1/amazon/boople

王弟フェリオの二人の子供・アスティナとリグルスの教育係を任されているシアは、朝早くから王宮を脱走した二人を追ってライナスティの家に向かった。折しも今日はフォルナム神殿からやってくるシアの義父のムスカ司祭を囲んでのお茶会が予定されていた。アスティナとリグルスを追うシアは思わぬ人と再会した。

空鐘本編終了後のお楽しみ短編集。その後の二人は〜、とやきもきさせられたハーミットとシルヴァーナの物語、今明かされるライナスティの秘密、ヴェルナルフォンの過去、そして王と王妃の微笑ましいエピソードを軸に、幕間に十年後の大同窓会といった内容でした。
読んでいて幸せになれるようなほのぼのとするお話の数々が良かったです。至る所でみんならぶらぶでやんの(注:こういうの大好きです)。空鐘の正ヒロインはソフィア王妃だね、と思わずにはいられない気合いの入り方がすばらしかったです。ハーミットさんの所は言うに及ばず、ライナスティも死にそうな目に遭いながらも幸せそうでいいですねぇ。そして某かぼちゃさん。おいしいところをかっさらっていった上に妙なところで存在感のある人です。この人メインの話も読みたかったけれども、これくらいのポジションがかぼちゃさんらしいなぁと。
そんな短編の中、ベルナルフォン物語だけは異彩を放っていました。最後まで読むと、これはシリーズ一の悲劇ではないかと思ってしまうほどで……。ベルナルフォンは空鐘一いい男かもです。

これを読むとまた本編を読み返したくなってきました。困ったものです。
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恋語り〜緋風の蝶〜

青目京子/樹要(イラスト)講談社X文庫WHbk1/amazon/boople

貴族の姫君・早子は美しいが好奇心が旺盛で他の姫君とは一線を画していた。そんな早子は嫌々ながら大皇の主催する花狩りに出席し、皇太子のお付きの武士の左近に出会う。幼い頃彼に助けられた早子は、この再会で彼に淡い恋心を抱くようになる。しかし、早子の父を恨む大皇の策略により、入内することになた早子。断れるはずもなく、渋々宮中に向かう早子だが……。

中世日本風異世界を舞台に繰り広げられる、恋と陰謀の物語でした。
これはWHで時々ある「ツボ、このラブは私のツボっ!」というような非常に好みのお話でした。タイトルからしてバラ色ハッピーな物語かと思えば、そうでもなく。どちらかといわなくても早子は行くとこ行くところで受難の連続で、早く彼女が救われるのを願わずにはいられない展開でした。とにかく一途に左近を想う早子。そして、早子の想いを誠実に受け止めながらも一歩引いている左近のこの距離感がたまりません。やきもきしながら読めること請け合い。しかし、ラストは二人に関してはいいかんじにハッピーエンド(?)だったので、満足です。

同じWHでいうなら『雄飛の花嫁(←数年前の超お勧め作品。感想取り下げ中なのでbk1リンクで)でコレだ、と思ったのと同じテイストがあるように思うのですが……、個人的にはわりとオススメ。
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BURAIなやつら 流浪の王女

あまね翠/遠藤海成(イラスト)小学館ルルル文庫bk1/amazon/boople

神の国とあがめられ繁栄を続けていたシルディーヌ神王国だが、突如隣国の侵略を受け、王都は陥落する。王家の秘宝と共に何とか落ち延びた王女ルティアナは、国を奪回するための助力を得るために叔母が嫁いだルクレチオ王国を目指す。彼女の旅のお供は凄腕の傭兵と、美しい者なら何でも好きな妙な男で……

亡国の王女様が国を奪回するために男装して旅をする……、これだけですごく好み。国の陥落から旅立ち、そして立ち寄った先での世直しとお決まりといえばお決まりの展開で話が進んでいきましたが、面白かったです。オーソドックスな王道展開万歳。
ルティアナの前向きで元気でおせっかいな性格が憎めないです。そして、普段やる気がないのにお金になると目の色が変わり大事なところでさりげない気遣いができる傭兵のグレイ、妙なお金持ち貴族の息子に、グレイをつけねらう傭兵集団と彼女の周りも一癖も二癖もある人物がたくさん。
序盤の落城シーンでは予想できないような割と軽いノリの中盤以降についていけるかが楽しめるかどうかの鍵でしょうかね。何で亡国の王女様で無頼なんてタイトル……、と思っていたら世直しを読んで納得。確かにやっていることは無頼。すかっと決まって気持ちよかったですけどね。

あとひとつ突っ込みたいのはイラスト。基本的にイラストはあってればいいなぁ程度の期待で臨んでいるんで、いつもそんなに気にならないといえばならないのですが(苦手とかはありますが)。最初のイラスト、本文では短剣となっているのにどう見ても長剣なのには異議ありです。ぶーぶー。
Jun/30/2007 ↑TOP