2004年10月の本の感想
緑翠のロクサーヌ 王を愛した風の乙女
アルカシア王ライアスは、昔失った思い人・イニアスにそっくりなロクサーヌと名乗る少女と出会う。ロクサーヌは暗殺集団・風のバスパの頭領の娘で、とある目的からライアスに近づいてきたのだが……。
去年デビューされた新人さんの第2作目。この話だけでも一応読めることは読めるんだけど、前作(と、できれば雑誌The Beansの2冊目)も読んでおいた方がいろいろとむふふとしながら読めるかと。
内容自体は至ってオーソドックスな「愛と戦い」ものですが、まー、なんといいますか少女小説ってええですなーとおもわず感慨にふけってしまうような、そんな王道なストーリー展開が素敵です。お互いの置かれる状況・過去からなかなかくっつかないというこの絶妙な距離感がいいですなー。でもって、ライアス陣営の親衛隊、人数揃って個性ある割には存在感があんまりなかった可哀相な人もいました(特に丁寧語をしゃべる彼。フォローなしかいな……)。ページ数の関係もあるでしょうが、そこのところはちょっと可哀相。
業多姫 六之帖―夢見月
青津野の本拠地に乗り込んだ鳴と颯音だが、鳴が青津野にさらわれてしまう。鳴を助けるために、土一揆を起こそうとする農民達と合流するが……。
業多姫最終巻、最後の最後だというのに(だからこそ?)いろんな秘密がどどどっと明かされていって息つく暇がなかったような。今回は中盤以降は、鳴と颯音は引き離されているのでラブ度は少々落ちるかなーと思っていましたが、そんな私が甘かった……。何はともあれ、しっかりと骨のある物語がきちんとラストを迎えられることができて、そしてそれを読むことができてよかったなーと思います。
でもって、最後だから書くけど実はこのシリーズ、他の本を読む時よりも読了するのにかなり時間がかかっていました。面白いんだけど、なぜかどばっと読むことができない。よく言えば描写が丁寧、悪くいえばくどい文章なのかな。一人称で視点が鳴と颯音という二人に固定されているというのも根本にあるかも知れません。面白いんだけどなー、どこかちょっときついところがあったのは事実です……。人それぞれですが、もうちょっとさらっとした文章の方が私の好みかも。
GOSICK
第一次世界大戦後、ヨーロッパの小国ソヴュール公国の名門校聖マルグリット学園に留学生としてやってきた九城一弥。図書館塔の上で出会った不思議な少女ヴィクトリカと共に謎に挑んでいくことに。
富士見ミステリー文庫から富士見『L・O・V・E』ミステリー文庫に生まれ変わったミステリー文庫の看板作品を魔が差したので(笑)読んでみました。面白いです。実のところ期待していなかったんですが(失礼)、惜しいものを見逃していた、と。きちんとミステリーもしていますし(注:私の判断基準のハードルはとても低い)、何よりもちょっとくすぐったいLOVEがいい。犯人はなんとなーく結構初期に分かるんですけど、モノローグの過去話が(個人的に)怖くて怖くて。ああいうの苦手なので怖さ三倍増しくらいでした。二人の出会い話とか読みたいなー、とか思いつつ(短編であるらしく。そのうちまとめて出ないかな)次も読もう。
スカーレット・クロス 隠されし月の誓約
瑞山いつき/橘水樹・桜林子
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
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ギブが殺人事件の重要参考人として総総合本部に拘束された。反抗する様子を見せないギブに不安を感じたツキシロは、レオンと共にギブがとらわれている本部に向かう。
まー、あの程度では終わらないだろうと思っていた人がパワーアップして復活。そして読者サービス(メイド服、拷問、ラブシーンなどなど)もこれでもかというほどパワーアップ。サービスしすぎです。レオン、いや、作者さんはメイド服になぜこれほどまでに執着されるのでしょうか(笑)?
内容としては、これで終わりといえば終わりなんだけど次も絶対あるような、そんなラスト。ギブの秘密が明かされたりしましたがまだまだ引っ張れますからね。ツキシロも今回はすごく頑張っていて、しかも役に立っていた!ということで読んでいてうれしかったです(ある意味後輩を見守る気分)。
PARTNER2
柏枝真郷/高里ウズ
(イラスト)中央公論新社C-Novels Fantasia【
bk1・
amazon】
殺人事件の重要参考人として事情を聞こうとしたところ、逃げ出してしまった参考人を追いかけてセシルとドロシーは真っ昼間のNYでカーチェイスを繰り広げるハメになる。
しょっぱなから白昼のカーチェースで今度こそ派手な展開になるのかっ!と期待しながら読んでいたんですが、最初だけでした。いえ、べつに地味な展開でも面白いですよ。いろんなことが積み重なっていって最後一つにまとまる様はそれはそれで気持ちがいいし。今回はセシルの過去に焦点があたっていました。想像していたよりも重い過去に思わずホロリ。セシルにとってはほぼ乗り越えている過去とはいえ、あまりにも淡々とした語り口に余計にしんみりしてしまいました。
シャドー・イーグル6
大学に入るために予備校に通い始めた真澄は生まれて初めて親友と呼べる友達・鞠子と出会う。しかし、ある日鞠子は誰かに殺されてしまい……。
だいぶ久しぶりのこのシリーズ、なんだかラストに向けて急いでカップル大製造(育郎と省吾おじさん)みたいなノリでちょっと嫌(笑)。あと、今回のラスボスが今まで以上にヘボヘボだったのがもう個人的に許せない(笑)。登場数ページでやられるラスボスってどうよ……。次がラストらしいですが、最後の最後くらい骨のあるラスボスを(げほげほ)。
片山さんの話は、超常現象一切なしの日常をつづったハートフルストーリー
(『さよなら月の船』、とかコバルト本誌のベアシリーズ(?)とか)の方が断然面白いと思う今日この頃。
鏡のお城のミミ 子供たちの夢と目覚め
国王からミミを守るためにカルネー公のもとに身を寄せたエリック。ミミのために身を引こうとするエリックだが、ミミはエリックの真意に気付かない。しかも以前にも増して積極的にアプローチするようになったバティスタに心揺れるミミは……。
読み終わって最初の感想は、「ムカムカ」というのがメインかと(笑)。ミミの自分しか考えていないあの思考回路にムカムカ(エリックもバティスタもミミのことを考えて行動してるのにさー、なんで当のミミはああなんですか。ここまで反感覚えたヒロインは久しぶりです)、ミミ伯父ダニエルのダメ人間っぷりにムカムカ。最後の方には少し進歩があった(っぽい)けど(ラストもラストで、目的語付けろと突っ込んでしまいましたが)、次もこの調子ならちょっときついかなー。次こそは、人間的に成長しているミミを希望。
読み始めが、かわいいイラストにのほほんかわいい物語、という認識だったので最近の展開にすこしついて行けなくなっているのは事実かも。っつーかですね、あののほほんな人物紹介からこういうダークな展開を誰が予想できますか(笑)。
これがマのつく第一歩!
小シマロン王サラレギー、大シマロンのコンラッドそして眞魔国のユーリ&ヨザックという通常では考えられないメンバーで聖砂国を目指すことになった一行。しかし、船旅はうまくいかないことづくしで……。
おにいちゃんとムラケンが面白かったです。兄に関しては本編では出てこないんじゃないかなと思っていただけにうれしい誤算。弟バカ全開の兄がいい味を出していました。
でもって、生まれた時から王様サラレギーとへなちょこ王ユーリの対照的な二人の王様、王様としてはサラレギー(しかし、やるかも!と思っていたあの歴史的名(?)台詞を本当に言うとは……)の方が正しいんでしょうが、やっぱり庶民派王の方が個人的には好きだ(笑)。容赦ないところで次回に続く、という心臓に悪い構成なので、早く続きを読みたい。時間をおかずにすぐ出るのがせめてもの救いかも。
同時収録の短編は前回のThe Beansに掲載されていたもの。ギーゼラさんが面白すぎるのでこれも大好きです。
彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ
州牧として茶州に赴くこととなった秀麗たち。貴陽からの旅路も茶家の妨害が入り一筋縄ではいかなく、一行と別行動を取らざるを得なくなった秀麗は…。
茶州編のプロローグといった趣の彩雲国第4巻。今回は王都組の出番がほんの少ししかないのでちょっと寂しいな。やっぱり王様と秀麗のとんちんかんな掛け合いがないと寂しい(笑)。まー、でも王様以上にトンチンカンな人の登場で……、想像以上のマイペースぶりにすっかりはまってしまいそうになりました。
しかしながら、先のあんまり見えない展開に続きが楽しみです。秀麗の周囲もなにやら今まで以上に不穏なものになってきてしまったし。彼女の心を乱しに乱したあの御方、王様との直接対決なんかあるのかなーとそこはかとなく期待しながら次を待ちたいと思います。
伯爵と妖精 甘い罠には気を付けて
エドガーお抱えの妖精博士になったリディアだが、仕事といえばエドガーに付き合って毎日毎日お茶会や演劇鑑賞。嫌気がさしていたリディアだが、ロンドンで資産家の令嬢が行方不明になるという話を聞く。霧男にさらわれたのではないかという相談を受け、リディアとエドガーは早速調査を開始。もちろんエドガーが純粋な親切心からこの話を受けたわけではなく……。
セリフの8割以上が口説き文句じゃないだろうか?と思うくらいのエドガーとそれをかわそうとするリディアの攻防が最高。どこまでが本気でどこまでが嘘か、そこらへんの微妙なバランスも素敵ですね。この二人の距離感がたまらないわけで(笑)。そしてそのエドガーに付き合って、だいぶ人間的に丸くなってきたがんばるレイブンとか、いつの間にかナチュラルにニコと会話をしているエドガーとか、もう全体的にツボすぎて続刊が楽しみ。
でもって、読んでいる時ちょうど舞台となる地にいたので、セントポール、メイフェア、むふふと妙な楽しみ方をしてしまいました(ただのアホ)。やっぱりイギリス舞台の小説はいいですなー。
風の王国 天の玉座
リジムとの結婚式も無事済み、吐蕃の人々にも迎え入れられた翠蘭。しかし、翠蘭は唐と吐蕃の文化の違いにとまどう。
1巻よりも確実にラブ度が増しております第2巻。しかしそうは問屋が卸さないとばかりに不穏な空気が流れまくっていたお話でした。あんまり裏を読んで読み進めない人間なので陰謀のカラクリが暴露された時はただただほーっと感心しておりました。まさかあの人が(以下略)。あと、リジムの前妻の息子ラセルがかわいいですな。犬とセットでかわいさ5割増。リジムと翠蘭のラブも良かったんですが、リジムとラセルの親子関係もポイント。
やっぱりコバルト文庫はラブがいいですな(しみじみ)。
キターブ・アルサール 不機嫌なイマナ
サイードの策略により領主を押しつけられてしまったティルフ。知識を得たいという欲求を抑えきれなくなったある日、不幸な厩番を巻き込んで彼はついに行動を起こす。
えーと、サイードの性格ってこんなんやったかな?と少し悩みながら読んでしまったキターブ・アルサールの外伝。雑誌掲載の短編にそれの後日談、というか本筋の中編でディラムの領主であるティルフの話。本編の中ではサイードの食えない弟という認識しかなかったんだけど、この話では主人公としては異色な性格が面白かった。話自体も、ギャグではないのだけど外伝という気楽な位置づけからか、それともティルフの運動音痴おかげか要所要所が妙に面白かったです。
彩雲国物語 花は紫宮に咲く
初の女性官吏として宮廷にあがることとなった秀麗。しかし、周囲の目はごく一部のものを除いて冷たく厳しいものばかりで……
やっぱり女の子が頑張る話は素敵ですね。という感じの、いじめられてもひたすらへこたれない秀麗がよかった。
今回は、さりげなく王様が格好良かったな。うん、あの調子で頑張ればそのうちいつか落とせるのではないかと希望的観測がもてます(笑)。そして今回は紅一族大集合。みんななかなかひん曲がっている上に敵に回したらこれ以上なく怖い人ばかりで……。裏の主役は絶対にあのお二人のような気がしました。
そのとき君という光が
ホークランドの皇太子訪問のため、フラン達絶対無敵団はローランドで足止めを食っていた。そして、ローランド皇太子の愛妾はゼフリードの後継者でフランがどうしてもあわなければいけない人物だった。ミルドレッドの腹心であるエルゼリオの力を借り、宮殿にあがることになったフランはいつの間にかミルドレッドの「大事な人」ということになってしまう。
なるほど、継承者はこの人ですか、とちょっとビックリしてしまいました。たしかに、あの後あのままではあんまりだなーとは思っていたけれども思いもかけないところでダークモードで復活していてこわかった。高殿さんはこういうかんじで女の人を書くのがうまいなーと今さらながら感心してしまいました。そしてフランにミルドレッドにしーちゃん、これもどうなるか予測がつかないこじれ方をしてきて先が心配。最後のフランの独白でどうしようもないくらいのところまでいってしまいそうなのは避けられなさそうだし。最後にエルゼリオ。あのラストのシーンは、大丈夫ってことですよね、いえ、大丈夫じゃなきゃ話が進まない!と思うので、是非ともゼフリートに打ち勝ったということにして欲しい。だから続きを読ませて(笑)。
空ノ鐘の響く惑星で 4
レジークを止めるためにラシアンと共に蜂起したフェリオ。王都で国王軍と直に対決することになるが、レジークの陣営には油断のならないクラウスがいて……。
燃える展開だ。もう、熱くて熱くて読んでいて本当に楽しかった!とにかくフェリオがかっこよくてですね、もう、なんというか王道過ぎるかっこよさがたまらないのです(笑)。それと同じくらい、鈍感すぎるフェリオもいいんですがね……、いや、あのウルクのイラストは反則だと思います。
にしても今回も思ったのは、フェリオ陣営にいい人材が集まりすぎているということ。レジークにはクラウスの頭があったけど武の方はぱっとしないのがいなかったからナー、ちょっとそこら辺はアンバランスかも、と思ってみたりもしたけれどもまだまだ次がありそうですから。
内乱には一応けりがついたのですが、まだまだいろいろとやっかいなことは山積みでこれからどうなるのか本当に心配。
Edge4 檻のない虜囚
宗一郎と離れて暮らすことになった錬磨は、宗一郎がいない生活にも次第になれてきた。そんな折、謎の犬虐待事件が起きる。錬磨は誰に依頼されるでもなくそのプロファイリングを開始する。一方、宗一郎は空手の稽古の帰りに出会った女性の行方不明の犬を探す手伝いをすることになって……。
久しぶりのEdgeシリーズ第4巻、クライマックスもクライマックスでこれから本当にどうなるのだろうとどきどきワクワクしながら読んでいました。犯人の心理描写のところはやっぱり見事だったし。ここの部分は救いがない訳じゃなかったから読後はさわやかでしたし。でもなー、宗一郎と錬磨の方はさわやかでも何でもなかったなー。泥沼という言葉がこれほどふさわしいとは。でもって、最後に出てきたあの人、ほんまに何で今頃っ!というタイミングで……。次で本当に終わるのかな、というくらいのこじれ具合。来年くらいに読めたら幸せ。