2004年11月の本の感想
舞闘会の華麗なる終演 暁の天使たち 外伝1
ルウの暴走を止めることの成功したリィたちだが、宙域から脱出するのに少し手間取って……。
「暁天」の外伝というか前作の後日談なんですが、どこをどう読むと外伝になるんでしょうか。ナチュラルに前の続きからはじまってます。「7」と銘打って頂いた方が良いような気がしますな内容でした。読んでいる間はすごく楽しかったです。妖怪大集合とか、最強夫婦の夫婦漫才とか。あ、クッキー作りとそれに関する一騒動(?)もそれぞれの味が出ていて面白かったですね。
でも、やっぱり商業ベースで読むものじゃないんじゃないかな、とうがった見方をしてしまう性根の曲がった読者がここに1人(苦笑)。まーなんですか。割り切って読むことができると楽しいんですけどねー。前の感想ではウォルとか出てきたら楽しいとか書いてますが、もうあの発言はなかったことにしておいてください。あの世界はあの世界できれいなままで……。
キーリ 死者たちは荒野に眠る
教会の寄宿学校に通うキーリは霊をみることができた。だから彼女は気付いていた。この世界に神様はいないと。長期休暇の宿題のためと、街で出会った不死人のハーヴェイとラジオに憑依した幽霊・兵長の旅に勝手についていくことにしたキーリは――。
大きな戦争が終わって微妙に殺伐とした雰囲気に包まれているどこか遠くの植民地星が舞台。不思議で独特な雰囲気に包まれた話だと思うのです(個人的に)。軸は自分の居場所が見つからない女の子と、生きることに疲れて半分投げやりなおじさん(見た目青年)のほんわかストーリーだと思うんですけどね(途中までは)、ほんわかで終わると思ったらなかなかの急展開で。私は最初のベッカの物語が一番好きなんですが、どれもこれも非常にコンパクトにまとまっている割には短すぎるということもなく、でいい感じかと。ただ、文章に少し癖があるのかな?それが最後までなじまなかったんですが「こんなん読まれへんわ」というほどのことでもないので、続きもぼちぼち読んでみようと思います。
GOSICK II―その罪は名もなき―/III―青い薔薇の下で―
一弥に見せられた新聞に載っていた不思議な三行広告を見たヴィクトリカは学園を抜け出し、母の生まれ故郷だという村に向かった。その村は彼女の母の出身地で、世間とは隔離された時間の中にあって……[その罪は名もなき]
姉に頼まれた買い物をするために首都ソヴレムを訪れた一弥。有名デパート・ジャンタンに何かきな臭い物を感じた一弥は、学園に残るヴィクトリカと電話で連絡を取りながら偶然出会ってしまったブロア警部と共に事件の真相を探る。[青い薔薇の下で]
表面的にはすっごくかわいいのに内容は結構ヘビーなGOSICK、堪能させて頂きました。事件自体はどろどろしていて、犯人もなんだか私の苦手なタイプだったりするんですが(描写が怖いわ……)、とにかく一弥とヴィクトリカがほほえましいんですよ。ヴィクトリカはかわいいし、一弥の世話焼きぶりがおもしろいし。舞台となっている時代から考えるとしばらくしたら二人は離ればなれになっちゃうんだな、と思うとせつなく感じてしまうんですが(予言にもありますしね)、二人がその別離をどう乗り越えるかとかいろいろ楽しみな部分も多々あります。
それでもって、ドリル頭警部。三巻でかなり株が上昇しました(笑)。それまではただの意味不明なおかしなお兄さんだと思っていたんですが彼の行動原理にはそれなりの理由があるようですし、何より警部は警部なりにヴィクトリカに対してお兄さんしてるんじゃないかな、と。あと、ヴィクトリカのお母さんも気になります。一体何やったんだろう?
フルメタル・パニック! 終わるデイ・バイ・デイ(上下)
任務で学校を休む宗介を心配しながらも、いつものことだと彼の帰りを待つかなめ。しかし、今度の休みは宗介にしては長すぎて……。(←このあらすじかなりいい加減です)
テッサが、かなめが、そして宗介がかっこいい!この巻でテッサの好感度がいきなり急上昇。こんな艦長だとみんなついていきたくなりますよね、かっこいい。そしていつも通りマオ姐さんがよかったな。こう、おっとこまえなキャラクターって好きなんですよ(笑)。
だんだん人間くさくなってきて迷いまくって自爆して、でもきちんと答えを見つけることができた宗介には思わず拍手かな。ラストの(切れた?)宗介は今までになくきまっていたように思われます。
フルメタル・パニック! 揺れるイントゥ・ザ・ブルー
夏休みの最後、かなめは宗介からいきなり南の島に誘われた。もしかしたらと淡い期待を寄せるかなめだったが……いつの間にか飛行機からダイブするハメになっていた。
宗介の事を抜きにしても、かなめとテッサっていいコンビだと思うのです。ごく普通の女子高生だったのにごく普通でなくなっていっているかなめともとから普通でない高校生(くらいの年齢の)テッサってなんとなく通じ合うものがあうんじゃないかな、と。
潜水艦といういわば密室状態での死闘というものがはらはらどきどきで結構好きなんですけど(映画とかでよく見ますね)、臨場感そのままで面白かったです。
クイーンズ・ガード 夜明けのダンス
とりあえずやっかい事を全部押しつけられる形となっている「処理班」の解決すべき問題は、ホテルに次々と仕掛けられる嫌がらせの犯人を調べること。その真相を探るうちに数年前におきた事件に関係があるかも知れないということを突き止める。
いつも通りのどんちゃん騒ぎっぽいノリで楽しめました。所々にちりばめられた思わず脱力してしまいそうになる水南樹のおとぼけぶりに笑いをかみ殺しつつ、犯人は誰かいな?とのほほんとしながら読んでいました。ただ、読んでいるときはたしかに楽しいんだけど、たのしかったーの一言だけなのがちょっと残念(「たのしかったー」だけの感想で済ましているのも多々あるんですが、そういう場合でも他に何かしら心にくるものが多いんですが……)。ノリは土曜サス○ンス劇場と思えばこんなものなんでしょうけど。実写でサスペンスにならないかな?ホテルもののシリーズの一つとして。レギュラーキャラに課長のライバルのやり手女性社員でも加えたら結構いけると思うんだけど(笑)。
空ノ鐘の響く惑星で 5
内乱を鎮圧した第四王子フェリオはきたるべきタートムの侵攻に備えて、アルセイフの立て直しに奔走していた。フェリオは第三王子ブラドーになんとしても王位に就いてもらおうと話し合いを重ねていた。一方、フェリオのためにカシナート司教の動きを止めようとするウルクはウィータ神殿に戻ることを決意するが……
おもしろい!大満足。内乱編とタートム編との接着剤みたいなお話なんですが(妙なたとえしかできない自分が悔しい)とにかく、はらはらドキドキの連続で。もう、ウルクが、ウルクがっ!と本当にこの先どうなるか分からなくて、とにかく続きが早く読みたくなる。
そして、今回ダブルヒロインの醍醐味を味わえたと思います。リセリナにもウルクにも頑張って欲しいけど、ウルクがあの状況では。元に戻るのかは微妙なラインですが、まー、愛の力があれば問題ないかと(無責任)。そして表紙のお二人。やっぱり二人はアレですよねー、うん、きっと。色つきウィスタルは思ったよりも渋くて格好良くて素敵過ぎると思います……。
今回は指示語が多すぎて申し訳ないんですが、ネタバレさけたらこうなるのも仕方がないですね。
雄飛の花嫁 涙珠流転
綏国の公主・珠枝は先帝の寵愛を一身に受けた公主であったが、先帝の崩御後は王太后に徹底的にはみ出しもの扱いをされる不遇の日々を送っていた。珠枝にとっての心の支えは、異母兄である皇帝・燿桂。そんなある日、最近台頭してきた閃国が綏との国境を越えたという報がもたらされる。閃は綏への侵攻をあきらめたものの、和睦の条件として公主を求めてきた。珠枝は「3年経ったら迎えに行く」という兄の言葉を信じて閃に嫁ぐことを決心する。
こういう話を待っていたんだ!と声を大にして主張したい作品でございました(笑)。
敵国に嫁ぐ公主と嫁ぎ先の王様との心の信頼形成過程を描いた話はかなり好きなんですが、もうこれそのまんまで楽しくて楽しくて。「珠枝は養女」と自分に言い聞かせる飛鷹(閃国王)がちょっとできすぎている気がしなくもないですが、まー、そんなの些細な問題です。
ベタ?似たようなやつ最近あった?ちょっとくどい?などなど難をあげれば何点か出てくるんですが、もうはっきり言ってそんなことはどうでもいい(相当ひどくない限りあんまり気にしない質だし)、これぞ少女小説の醍醐味っ!と多くを語らずとりあえず握り拳でお勧めします。だってさー、最近こういう王道物語少ないじゃないですか……。
この路線で行かれるのであれば個人的には要チェックな作家さんです。
遠征王と秘密の花園
パルメニア女王アイオリアの第一寵妃・オクタヴィアンが突然の引退を表明する。なんとかオクタヴィアンを押しとどめたいアイオリアはオクタヴィアンととある賭をする。アイオリアが勝ったらオクタヴィアンは引退を断念、負けたら後宮に新しく男性を入れるという賭に後宮中を巻き込んだ大騒ぎとなって……。
あー、もう最高
(注:信者補正入ってます)。一部を除いて始終笑いっぱなしでした。遠征王シリーズの番外編、本当に楽しく読むことができました。後宮(花園)が舞台ということで女の子はいっぱい、「わたしもアイオリア様の花園に入り隊」は爆走、コック軍団の愛は暴発、メインキャラの巻き込まれ具合が本当に楽しくて。そして思わぬゲストキャラの方々、しかもイラスト付きで遠征王世代との競演とファンにはヨダレモノのサービスだと思います(笑)。途中からはがらりと雰囲気が変わり、アイオリアの内面に深く突っ込んだところがありましてお笑いだけじゃないのはさすがだなと感心していました。
この後が『
尾のない蠍』だと思うとすこし切なくなるモノもあるんですが、こういうお祭り騒ぎもいいな。楽しかった!
フルメタル・パニック! 疾るワン・ナイト・スタンド
テロリストに追われる<ミスリル>の艦長・テッサをかくまうことになった宗介。不幸な偶然から思いっきり勘違いしたままのかなめ、宗助、テッサ、そしてテロリストの少年タクマの3人でタクマを取り返そうとする一団から逃げることとなったが……。
かなーり昔に1冊目(『
戦うボーイ・ミーツ・ガール』)を読んで以来とんと御無沙汰だったんですが、そんなこんなで2冊目。なんといいますか、戦争ボケした宗介が格好良くみえるので楽しかったですね。あと、渋いオッサン(カリーニン)も格好良かったですね。かっこいいおねーさん(マオ)もいいですね。そしてロボットがいいですね。宗介をめぐるラブバトル(かなめ vs. テッサ)も楽しみですね。
ということで、密かに一人フルメタル・パニック!祭を開催中ですのでちょこちょこ読んでいきたいと思います。