2007年5月の本の感想
プリンセスハーツ〜麗しの仮面夫婦の巻〜
父を倒し、アジェンセンの若き大公となったルシードは、幼い頃人質としてパルメニアで過ごした時に心を通わしたメリルローズを彼女との約束通り大公妃として迎えた。しかし、アジェンセンにやってきたのは彼女とうり二つの身代わりの少女ジル。ルシードはジルと共にパルメニアを併合するという共通の目的を掲げ、奇妙な同盟関係が続いているのだが……。
高殿さんのパルメニアものと言うだけでテンションがあがっていましたが(注:ここの管理人はパルメニア信者)、色眼鏡が入りまくっているとはいえとっても面白かったように思います。今まで何度となく名前だけは挙がっていた「廃園王女」(平たく言うと、アイオリア(遠征王)の祖母)の物語です。
幼い頃の約束を胸にやっと目的を果たしたと思ったらやってきたのは鉄面皮のそっくりさん、でもなんだかんだで憎めなくて心穏やかではない日々のルシード。そしてジルはジルで共通の目的達成のためにルシードに手を貸しており、それ以上の関係ではないはずなのに徐々にルシードに愛着(?)らしきものを感じてきて……、とこの二人の微妙な距離感がよいですね。宮廷陰謀劇もいつもの高殿さんらしく、一筋縄ではいかない結末。国内問題と国外関係と絡み合いつつも、この先どうなるかといったところでしょうか。
各所にちりばめられた伏線や、どうやらかなりぶっ飛んだ感じらしい本物の王女様、そしてジルがルシードの元にきた当時のことなど気になる点はたくさんありますので……、是非とも続きを読みたいです。
舞姫恋風伝
不作の年に家族の生活のため人買いに買われた愛鈴は、宮廷で妓女見習いとして生活する16歳。貧しい出のため宮中では目立つことはないものの、持ち前の身の軽さから舞の腕を上げ、前向きに毎日を生活していた。そんな彼女の心の支えは、3年前に宮中で偶然出会った王太子・慧俊とのただ一度限りの短い逢瀬だった。慧俊にまみえることを目標に、舞の鍛錬を続ける愛鈴は、慧俊も出席するという宴にようやく出ることができたのだが……
ルルル文庫第一弾、とりあえず軽くっ!と思って読んでみました。元々は
創刊前にwebで連載していたものを加筆修正の上完結させての出版のようです。オトメ向けの小説としてはツボにはまる点がたくさんあって良かったと思えます。悶えポイント多数。いやー、こういう話は個人的に大好きです。ごちそうさまでした。
話の筋は非常にオーソドックスで、大きく期待を外されることもないので安心して読めます。ただ、いろいろと非常に甘いので(主に政治面やらなにやら)しっかりした物語を期待するのは間違っているかもしれません
(少々詰めが甘くても甘いと感じない私が甘いと思うのだから、だいぶ甘いかと)。国の名前が猿って、猿って
(フェードアウト)……等他にも思わず突っ込みたくなるところが多々ありましたが、まあ、なんですか。求めるものが違うところにあったので個人的には問題なし。主人公の親友カップルも、とってもツボだったなぁ。
お狐サマのから騒ぎッ!
江都を騒がすお尋ね者・刀鬼坊シデンを退治に行った桐緒は、シデンに気に入られてしまい風祭道場に新たな居候が増えた。更ににぎやかになった風祭道場だが、紗那王は毎日どこか不機嫌な様子で……。
お転婆なお嬢さん桐緒と傍若無人なお狐サマ紗那王のドタバタ(?)ラブコメ第二弾。今作では紗那王は桐緒に隠し事、そんな中桐緒は行方不明と、すれ違いながらもアツアツな展開に少女小説的満足感を十分味わえました。離れて改めてわかる、あなたへの思い〜、なんてすばらしい展開。紗那王一族はかなり個性的な方が多くて、読んでいて楽しいです。お兄ちゃんもお姉ちゃんも美形なのに、美形なのに(笑)。紗那王との温度差がこのおもしろさを引き立てていますね。お兄ちゃんといえば里芋兄もよいですねぇ。いろんな意味で、オトコマエ。
一難去ってまた一難、とはこのことで、次になにやら強敵襲来の模様。続きも楽しみです。
紅牙のルビーウフル Tinytales 1 クローバーに願いを
ミモザを助けた謎の二人組は二匹の狼を伴っていた。兄とひっそり森で暮らすミモザに今までにはないにぎやかな時間がやってきて……<クローバーに願いを>
ルビーウルフの短編集。雑誌に連載されていた6編と書き下ろしの1編、計7本のルビーウルフ(とミレリーナ)の物語でした。この物語の醍醐味は(個人的に)ルビーとジェイドのラブコメだと握り拳で主張している私としては、非常に満足のいくできでございました。なんといいますか、日常のほのぼのしたところを読んでいて楽しいシリーズだなぁ、と。侍女の皆さんも再登場されて(本編は諸国漫遊ばかりですから)、最強なのはフロストのしっぽを全力で掴めるキャスではなかろうかという気がひしひしと。
他にもジェイドの旅立ちの物語(またの名を「エリカからの脱出」)、そしてミレリーナとロビンの物語とかゆいところにも手が届く仕様となっています。ラブコメだけじゃなくてきちんと「いい話や」と思えるところも詰まっていてよかったです。
ファルティマの夜想曲 恋するカレン
港町ファルティマで娼婦として生活するカレンは、仕事仲間であり幼なじみのルーク、養い子のフィル、そして気の合う仲間たちとそれなりの満ち足りた生活をしていた。ある日、カレンの前に謎の男が現れる。彼のお陰で今まで感じたことのない感情を持てあますようになったカレンは……
B's-LOG文庫の新シリーズ、穏やかに淡々と過ぎていく物語でしたが、面白かったです。
ヒロインがストレートに夜の住人という少女小説ではあまり見られない設定でほほーと最初から感心してしまいましたが、とにもかくにもラブに溢れるええ物語でした。カレンの強さと一瞬見せる弱さのアンバランスさのこれまたよくて。ルーイ、いいやつやな、こいつっ!フィルの一途さには感動したっ!謎の男キースの決断もかっこよかったぞっ!と三者三様の素敵さにオトメゴコロが無駄に疲れること請け合いです。個人的にはルーイが好きなんですけどね。……、絶対、貧乏くじを引きまくるタイプだなぁ。
いろいろと思わせぶりなところも多くて、これってこの世界で続きありますよねぇとは思わずにはいられませんでした。カレンの物語はこれで終わりでしょうが、まだまだ気になるところはたくさん。少女小説読みさんにはオススメです。
トワイライト1 愛した人はヴァンパイア
ステファニー・メイヤー/小原亜美(翻訳)ソニーマガジンズ【bk1/amazon/boople】
母親の再婚のため、離婚した父親と暮らすことを選んだベラはアリゾナからフォークスにやってきた。無難な高校生活を送ることを望んだベラだが、不思議な美形エドワードの謎の態度に振り回される。エドワードには極力近づかないようにしていたベラだが、彼に惹かれていく心はなぜか止めることができなくて……。
「『ニューヨークの魔法使い』にはまったのならこれも是非」とオススメされまして、早速ためしてみました。うむむ、これも翻訳物ですが私も読めます
(くどいようですが翻訳物苦手)。
一冊目はまだまだ謎が謎を呼びまくっていてどうなってるんですかこれっ!という状況なのですが、非常に面白かったです。ベラの一人称で進む物語で、彼女が非常に冷静で読んでいて落ち着いてしまいます。そんな冷静な彼女がわけもなくエドワードに惹かれる様子に、エドワードの謎についてサブタイトルから何となく分かる(笑)読者側としては読んでいてにんまり。ベラサイドで読んでいるので、ベラがエドワードの訳の分からない態度に苛立ったり悲しくなったりする気持ちが非常によく分かります。この、わかりにくい奴めっ!
どうも原本は一冊の所を翻訳した際に三冊分冊にしているようで、これ以上にないくらい途中で次に続く、という生殺し状態です。エドワード一家の秘密やエドワードのベラへの態度なども気になるところですし、何よりまだベラもエドワードも互いの真意をつかみかねている状況ですから……。あと、ベラにも何かありそうな感じですね。さぁ、続き続き。
神曲奏界ポリフェニカ ミッシング・ホワイト
転校生のミナギの言葉から、忘れていた過去を思い出したスノウ。ブランカに真相を問いただすも、答えを得られないことにいらだったスノウはブランカとの契約を解消してしまう。そんな折、謎の精霊行方不明事件の犯人と対峙し、戦うことになってしまったスノウは……
ミナギ編の完結編。スノウとミナギの過去が明らかになり、そして二人がそれぞれの道に進んだ物語でした。最後はかなりもの悲しいラストだったので切なくなってしまいました。失ってから気付くものというのはいつも大きいんですよねぇ。
精霊と人間との考え方の違いからすれ違いを続けるスノウとブランカでしたが、またひとつお互いを理解できたようでこちらは良かったです。シリアス目に進んでいったお話なんですが、もう一つのエピローグでは和んでしまいました。牛最高です。大事なときにヘタレなブランカがある意味哀れでした。
ダナーク魔法村はしあわせ日和〜ドラゴンが出たぞ!〜
国境付近にドラゴンが出現したという知らせを受け、ことの真偽を確かめるためにビーとイズーは現地に(文字通り)飛ばされた。都から派遣されていた魔法使いのライと合流し調査に取りかかるビーだが……。
過去の遺物のドラゴンが出現して大騒ぎ、のとっても面白い作品でした。「しあわせ日和」というシリーズタイトルから想像されるほのぼのからだんだん遠ざかってきておりますが、巻を追う毎に面白くなっていきますね。今回はイズーに強力なライバル・魔法使いのライ君登場。ビーと同じ世界を見ることのできるライとイズーとのある意味ガチンコ勝負が良かったです。ビーの「えへっ」であそこまで読み取れるイズーもたいした物だと思うんですが……、今後の二人の勝負も気になるところですが、とりあえずイズーを応援していきたいと思います。
今後の事件にはイズーの過去も大きく関わってくる模様ですね。イズーは単に「飛ばされた」だけではなく、この「栄転のような左遷」にはなにやら大きな意味があるような、ないような。そして、ビーの背負っているものもだいぶ大きそうです。今後の展開がとっても楽しみなシリーズです。今のところ、かなりオススメの作品。
風の王国 波斯の姫君
翠蘭と別れた慧はサマルカンドを目指し、隊商と西域を旅していた。途中、政変から逃れてきたペルシアの姫君の願いを叶えるため、彼女が発見されたという洞窟に一行は立ち寄ることとなる。
風の王国の番外編。表題作の慧の旅情編他、書き下ろしのガルとその奥方の物語、そして本誌で連載されていたジスンの過去を描いたマンガの三本立てでした。
慧はすっかり旅情編の主人公が身に付いておりまして、その風格もたいした物ですね〜。個人的に今回一番気に入ったのは、やっぱりガルの奥方かなぁ。あのガルをここまでいいように(?)扱うとは、ただ者ではありません。無計算の天然ほど最強なものはないということでしょうかね。ガルもなんやかんやでそれって奥さんにメロメロってことじゃないの?と思ってしまうような場面のひとつひとつが、いつものスキのないガルとのギャップで楽しかったです。
流れよ、凍りし我が涙 幻獣降臨譚
初めての戦場で光焔を使いこなすことができず、味方に大きな損害を与えてしまったアリア。今まで好意的に受け入れていてくれていた騎士団の雰囲気も悪化し、アリアを排斥しようという動きまで出てくる。一緒にここから逃げ出そうという甘い誘いに、アリアは騎士団を去ることを決意した。
幻獣第5巻。この巻はシリーズ中最も後味悪っと思えるような展開だったように思います。確かにアリアにも責はあるけど、でもねぇ(ちょっと納得いかない)。この悪評の数々が誰かの陰謀の可能性も高いし、そうなるとそれはそれで有りかな、という気もしますが。
登場人物ほぼ総ダーク化の道も着実に歩み始めてきましたが、マルチェの態度には安堵しました。彼女、いいなぁ。そしてライルと王子には最後の壁として白き道を歩んで頂きたいと思ってしまいました。しかし、相変わらず男性陣が誰が誰だかよく分かっていません(登場人物紹介に乗っていない人は本当に分からない。最初の紹介はイラストなしでたくさん紹介してほしいと切実に思いました)。
今回も最後の最後の数ページで驚きの展開を見せているので、続きが気になります。相変わらずヒキが上手いなぁ。
光炎のウィザード 追憶は五里霧中
≪学園≫から逃げ出したユローナ捕縛のため、ヤムセは地方に出かけてしまう。今回は留守番のリティーヤは、研究室の先輩バドの心労の種になりながらもマイペースに毎日を過ごしていた。ある日、リティーヤは親友のミカの様子がおかしいことに気付く。幾日も経たないうちに急に≪学園≫を出奔したミカに、通常では考えられないメンツの追っ手がかかったことを知ったリティーヤは、なんとかミカを見つけ出そうとする。
第三巻は主に学園を舞台に、一巻の最初にちょこっとだけ出てきていたリティーヤの親友ミカの事件をメインに話が繰り広げられていきました。ヤムセの代わりにリティーヤを指導するハメに陥ったバドさんの苦難の日々は少し面白く、リティーヤを教えてきた教師がすべからく彼女を恐れているところが所々に描写され、彼女が一体どのような基本過程を過ごしていたかというところが非常に気になるところです。リティーヤの家族関係や虹ドロさんのあたりも、どうやらユローナさんやらなにやらが関わっている……、のかな?記憶を操作することもできるという≪夢≫魔術でどこまで入り組んだ状況になっているかがここではまだ分からないのですが……。
ミカ関係の問題はまだまだ解決にはほど遠いので、続きが楽しみです。願わくば、リティーヤと二人また笑って過ごせる日が戻ってくるといいのですが。