2006年6月の本の感想



聞け、我が呼ばいし声 幻獣降臨譚

本宮ことは/池上紗京(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

女性の出生率が異常に低いリアラ女神に守護された世界、少女たちは生まれたときから精霊と共にあり幻獣に守られて育ってきた。14歳を迎えたアリアはようやく幻獣との契約の儀を迎えることとなったが……

あきさんt-snowさんの感想を拝見しておもしろそうだなーと思って手に取った6月の新人さん。たしかに、これは少女小説的ファンタジーの醍醐味を各種取りそろえている大変ツボにはまる作品でした。おもしろかったー。WHは侮れません。
たしかに3点リーダーの多さは気になりましたが、そういった欠点をも上回るおもしろさだったといいますか。ヒロインは前向きで好感が持てますし、彼女を守る三人の男性陣もなかなかよさげではないでしょうか。女性が非常に少ない世界ですので、必然的に逆ハーレムまっしぐらですが、逆ハーレムモノによく感じる「女の子が持ち上げられすぎて微妙」ということも今のところなく、純粋に楽しめるような気がします。
続きが大変楽しみなシリーズになりそうです。
Jun/23/2006 ↑TOP


風の王国 朱玉翠華伝

毛利志生子/増田メグミ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

酒楼に売られ、占い師として働いていた朱瓔と翠蘭との出会いや後宮での出来事等を描いた短編集。

コバルト本誌に掲載されていた短編とこれまた本誌に掲載されていたマンガを合わせた一冊でした。一番ボリュームのある「花の名前」が一番のお気に入りかな。こんな所にも切ないラブがっというのと、妙な存在感のある武才人の正体を最後の最後に知って、おおっと妙に納得。あとは食べられたのだろうかと密かに案じていた犬の行方がはっきりしてよかったです。ラセルはかわいいなー。
すぐそこに迫っている本編の新刊も余計に楽しみになってきました。「花の名前」の最後を読む限り、結構さくっと史実通りに行くかもしれないけどでもでも、と妙な期待をしつつ。
Jun/19/2006 ↑TOP
 『風の王国 河辺情話


オペラ・フィオーレ 花よ荒野に咲け

栗原ちひろ/THORES柴本(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

ミリアンの魔法修行のため、そしてカナギは魔物の情報を手に入れるため、一行はカエキリアの城主セロフと共に闇魔法教会の本部に向かった。一方、カエキリア出足止めを食っていたバシュラールの元には光魔法教会から巡査庁の軍人がやってきた。

あれ、急に世界が動き出した……。今まで良くも悪くも「カナギ・ミリアン・ソラ(ついでにバシュラール)」が中心でその他はスパイス程度(に感じる)の物語だったのに、急に全世界規模のお話になりましたよ。これは驚き。そしてがぜんおもしろくなってきました。
光魔法教会と闇魔法教会の対立に、謎の組織の暗躍、そしてうわそれってありですかというラストにミリアンの出自はまあ決まりだなーという感じで続きも楽しみです。
Jun/11/2006 ↑TOP
 『オペラ・カンテンテ 静寂の歌い手


銀のパルティータ 求婚者は銀を抱く

めぐみ和季/かわく(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

皇帝リオンの即位披露宴に出席した皇太后のローダリアは隣国オーシェルのイリス王子と懇意になるが、庭園で二人っきりになったときに王子が何者かに殺害されてしまう。あらぬ疑いをかけられるローダリアと皇帝の守り役フェルナンであったが、数日後、死んだはずのイリス王子が蘇ったという知らせを受ける。

『銀のパルティータ』第二巻。一冊目に比べたらぐっと笑いの要素も減ってシリアスモードに移行していました。他国の神獣が出てきたり、神獣同士の因縁がちらっとかいま見られたり、ローダリアのご先祖さまがポイントとなりそうな事件などが起こってみたりと今後に向けての布石は万全といったところかな。新キャラの妙な泥棒もいい味を出していました。
しかし、いろいろとポイントポイントはかなり好みなんですが、やっぱりどういう訳か私のツボをことごとく微妙に外れていました。なんか、重たいのに妙に軽いというところが合わないというか、それでええんかいな、というか。展開としては好みなんだけどなー、やっぱり合わないのかな……。
Jun/09/2006 ↑TOP
 『銀のパルティータ 運命は花嫁を誘う


カストレーデの皇子

雨川恵/桃季さえ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

バルハールの離宮でユスティニアと共に心穏やかな日々を送っていたアレクシードであったが、ある日王都からユスティニアの兄が面会を希望しているという知らせが届く。家族と再会できることを楽しみにするユスティニアではあったが、この申し出の裏にはカストリア皇太子ルシウスの思惑が隠されていた。

今回も毎度のことながら姫様がかわいすぎてかわいすぎてお腹一杯。子どもじみた喧嘩をしつつもアレクに絶対の信頼を寄せている所なんか本当にかわいいですよ。いいですなぁ、姫様。そして今回もアレクは一人で思考の迷宮に突入していて若干うっとおしいのですが、姫様のかわいさで相殺可能。
物語はえらい方向に進んでしまい、凶悪なこのヒキが憎い。一筋縄ではいきそうになかった皇太子殿下はやっぱりとっても腹黒く、兄王とどんな化かし合いをするのかと今から気になってしまいます。今までに出てきた人何人かも再登場で盛り上がってきました。次巻ではどん底からはい上がるであろうアレクがどのような行動に出るのか楽しみです。
Jun/09/2006 ↑TOP
 『バルハールの姫君


ねじまき博士と迷い猫

樹川さとみ/うたの(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

カラクリ作りの天才アレックス博士は若干16歳にして頑固偏屈博士の名をほしいままにする変わり者だった。そんな彼が、行方不明中の同姓同名の祖父にかわり、少女・リーの後見人となることとなった。動物に育てられたというリーの巻き起こす騒動にカラクリ作りに専念できない博士ではあったが……

樹川さんの新作は、天才少年博士の日常に野生児少女が非日常をもちこんで大騒ぎ、のドタバタ物語でした。野生児のくせに意外と食わせ物のリーと、嫌がりながらも彼女に振り回されつつ後見人としての役を全うしようとする博士のこの微妙な関係が好きだなぁ。カボチャのカラクリ人形の妙な人間くささもお気に入りだし、なにより旦那様大好きな使用人たちも読んでいて楽しかったです。最後の方にはドタバタの中に思わずほろりとくる場面もあり、このあたりのバランスもさすがといったところかも。
まだしばらくは続くようで、博士の家族関係とリーの出生の謎がどのように関わっていくのかが楽しみです。
Jun/04/2006 ↑TOP
 『エネアドの三つの枝 最後の封印


星宿姫伝 しろがねの鼓動

菅沼理恵/瀬田ひなこ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

波乱はあったものの、斎宮としてのお披露目を終えた白雪。そんな折、杖州を原因不明の寒波が襲う。白雪の斎宮としての力が足りないのではないかという噂を聞いた白雪は、何とかして寒波を収めようと行動を起こすが……。

しろがね第4巻。今回は三男にスポットが当たっていたお話でしたね。もしかしなくても一番腹黒いのは三男でしょう……。そんなことはさておき、お話もずいぶんと佳境に入ってきた上にラブくなってまいりました。このあと新たに驚きの事実が明かされない限り、三男と元父と隣の次代さまの三つ巴?うーん、個人的には長男イチオシだったのですが。それにしても白雪母は最強。破天荒だけど皆に愛されていたということが節々に伝わってきました。
個人的にはこのシリーズ、逆ハーレム状態の話にしては、ヒロインが持ち上げられすぎずに適度に凹まされた上でそれを乗り越えようとして成長する姿は結構好感が高いのですが、いかんせん根本的にヒロインを好きになれないのでそれほど嵌れません。しかし、続きが気になるというにくい魅力を持っているのもまた事実で。舞台というか、設定は作り込まれていますからねー(そして、大半を記憶の彼方に追いやった状態で読むから余計に混乱する)。後二冊らしいので、のんびりと追いかけていこうと思います。
Jun/03/2006 ↑TOP
 『星宿姫伝 しろがねの追憶