2003年11月の本の感想
The Beans Vol.2 その1
角川ビーンズ文庫 (感想は順不同、つまり適当。長いんで感想を二分しています。その2は真下)
眞魔国でマた逢いましょう。 喬林知/松本テマリ
(イラスト)
ユーリ生後四ヶ月、偶然向かった大病院で勘違いだらけのソーシャルワーカーに「保護」されて……。
次男好きなら至福の時間が過ごせるだろう短編。ユーリ母がパワフルすぎて面白かった。個人的には随所に出てきすぎるガンダムネタに大笑いしたのだけど……、ここまでして大丈夫なのだろうか(笑)?
透きとおった白い羽根 高殿円/小田切ほたる
(イラスト)
エルゼリオの妨害を切り抜けて、ミルドレッドは恋人との逢瀬のために夏の宮殿に向かう。
遠征王シリーズではオリエに邪道扱いされていたエルゼリオが出てきておりますが、思ったよりもギャグな人だった。ナリスといいエルゼリオといい侍従というものは苦労するものなんだなぁ……。ギャグとシリアス、一粒で二度おいしい作品(笑)。そして遠征王シリーズの番外漫画「温泉でポン!」も必見。ナリスが哀れすぎる(笑)。
少年陰陽師 玄の幻妖を討て 結城光流/あさぎ桜
(イラスト)
道長の若君(9歳)の護衛にかり出された安倍家三兄弟。しかしその若君はとんでもくワガママで……。
三兄弟の共同戦線。こういうの大好きだ〜。年の離れた弟を優しく見守る兄二人……、なんていい響きなんだろう(笑)。幼い頃の昌浩ともっくんの心暖まる秘話(?)なども明かされて、とてもおいしい話。
キターブ・アルサール ご領主様の憂鬱 朝香祥/あづみ冬留
(イラスト)
不本意ながら領主の座に着いたティルフは、兄サイードを領主にしようと策を練る。
最終巻後のお話で、気になっていた点が捕捉されていて満足。サイードはあまり出番がなかったんだけどかっこよかった(笑)。コバルトで出ていた三国志シリーズがビーンズに移ってきたみたいですね(1月発売とか)。もう、コバルトから新刊が出ることはないのかな(涙)。
The Beans Vol.2 その2
角川ビーンズ文庫 (感想は順不同、つまり適当。長いんで感想を二分しています。その1は真上)
暁光のデュランダル 志麻友紀/高橋ユキ
(イラスト)
女公爵であるシルヴィルは、隣国の王子の誕生日パーティーの席で思いがけず王子に一目惚れされてしまい……。
志麻さんの新作のプロローグ部分かな?おっとこ前なヒロイン(今度は正真正銘ヒロインですっ)と、性格豹変の王子の会話が面白かった。ローゼンの読み切りもあり。こちらはシュザンナがけなげでいい感じ。
彩雲国物語 幽霊退治大作戦! 雪乃紗衣/由羅カイリ
(イラスト)
仕事がなくて暇な李絳攸は、腐れ縁の藍楸瑛を巻き込んで府軍に出没する幽霊退治に乗り出すことに。
本編(『
彩雲国物語』)でなかなかいいポジションにいた、後の王の腹心二人のオマヌケ物語。本編の直前の話でして、先にあちらを読んでいれば犯人はすぐわかります(笑)。ノリは本編そのまんまでじじいどもも健在だし、絳攸の上司が予想外に面白くて楽しかった。2巻が3月に発売とのこと。
西風の皇子 英雄の烙印 喜多みどり/宮城とおこ
(イラスト)
生け贄になりそうなところを助けられたディディウスは英雄に助けを求めるようお願いされて……。
12月(もうすぐやね)に出る新作の短編とかなんとか。でも、世界は前作(『天空の剣』)とどう考えても同じなんですよね(笑)。あの妙な吟遊詩人が登場しておりますから。一読した限り、ディディウスの過去がえらくつらそうですが、そこに興味が(のせられてますな)。新作出たら読もうかなぁ……。
FLESH & BLOOD2
松岡なつき/雪舟薫
(イラスト)・徳間書店Chara文庫【
bk1・
別窓版】
ジェフリーの船に乗って航海に出ることになったカイト。しかし、ひどい船酔いにかかった上に、嵐で船は破損してしまう。仕方なくフランスのとある港に補給のために停泊することになるが……。
私が今まで読んだ小説の中でいちばん生々しく当時の衛生状態が描かれている作品だと思った(そういうモノノ本ならば何冊か読んだことあるけど……、小説となるとやはり伝わり方が違いますな)。ここら辺の容赦なさが素晴らしいと思う。それはさておき、自分の居場所を見つけて強くなっていくカイトは好感が持てますね〜。心理描写もしっかりしていて読み応えはすごくあると思う。なんだかカイトがモテモテまくりまして、いったいどうなるんだかというちょっとした不安あり。早く次が読みたいよ〜。
なお、レーベルからもわかりますようにBLの要素が過分に含まれます。そっち系統がダメな方はお気をつけください。
KLAN6 策謀編
浅野智哉
(原案:田中芳樹)/いのまたむつみ
(イラスト)・集英社スーパーダッシュ文庫【
bk1・
別窓版】
虎之助たちは重大な難問に直面していた。すなわち、お金がない……。資金面での不安を解消すべく、虎の血族に援助を申し出るべく、虎之助は風子と孝行とともに危険を押して香港に向かうが……。
ラブコメか、これはラブコメなのか……。と読みながら思ってしまった。年下にやりこめられるルネが情けない(笑)。虎の血族の頭領・天才美少女麗汎の意図がいまいち見えてこないんだけど(読み込んでいないせいかな?)、またまたこの先予測がつかない展開になりそう。
緑のアルダ 謀略の都
榎木洋子/唯月一
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ようやく王都にたどり着いたアルダ・ココとその一行。しかし、運悪く王都は冬至の大祭を迎えて泊まる宿屋もないほどの混雑ぶりだった。気持ちを切り替えて王に会うために城に行くが、王にはなかなか会えそうになくて……。
なーんか、物理的に薄いような気がするなぁ……、というちょっとしたわだかまりはおいておいて。思いっきりいいところで終わっている前編らしい王都編。動きがあったような、なかったような。元気で好感の持てる王女様が登場してきたので、このままカートラム郷とともにレギュラーの地位を確保してほしいところ(笑)。一気に登場人物増えるし、アルダ・ココの道行きもだんだん険しくなってくるしで次の巻の解決編(?)が待ち遠しい。
が、『リダー・ロイス』シリーズを読んでいない人間には少しつらい展開になってきていることは否めない。某『暁の〜』ほどリンクしているわけでもないのだけど、ね。
千の翼の都 翡翠の怪盗ミオン)
樹川さとみ/鈴木理華
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
王都ではルムラ(黒アゲハ)と呼ばれる謎の怪盗が夜な夜な巡検使の網をかいくぐっていた。ルムラの正体は昼間はミオンというのんびりとしたさえない侍女。彼女が奉公することになったのは、巡検使「隼」の長・ジューロの屋敷で……。
今か今かと出るのを待ちわびていた樹川さんのビーンズ新作。前のビーンズ文庫のやつが、私としてはちょっとムムム、な感じだったけど今回はとても面白かった。しいていえば、樹川さんの初期のコバルトを思い出すような感じで……。ミオンとジュールのなんとなーくの微妙な進展具合はオトメゴコロ(っえ?)をくすぐるし、舞台となる世界もオリジナリティーあふれて興味深く読むことが出来た。ただ、これもまた最後はあれよあれよという間に進んでいってしまった。ジューロ妹とか、王子様とかそこら辺、もうちょっと掘り下げられていたらうれしかったかなぁ、とか思ったり。なんだ、ビーンズ文庫は最後がとてもとても忙しい展開になるのがお決まりなのか(笑)?2冊くらいかけてじっくり話が進んでいっても十分OK、と思ってしまった。
黒蜘蛛島(ブッラックスパイダー・アイランド) 薬師寺涼子の怪奇事件簿
田中芳樹/垣野内成美
(イラスト)・光文社カッパノベルズ【
bk1・
別窓版】
日本人の男女二人の変死体を捜査するためにカナダ・バンクーバーにやってきた涼子と泉田。捜査に非協力的な総領事に憂さ晴らしをしてストレスを発散した涼子に、ハリウッド王・グレゴリー・キャノン二世が面会を申し込んできて……。。
オリンピック作家田中さんのまごうことなき新作(この前、新作と思って手に取ったらタイタニアの出し直しだったからさ)。相変わらず涼子の筋の通ってるんだか通ってないんだかの傍若無人な女王様ぶりは健在。はっきり言って、身近にいると迷惑きわまりないけど、遠くから見守る分には気分爽快な女性だ。いつも通りの展開で、これといって特記すべきことはないんだけど(流れも岸本の情けなさもメイドさんのかわいらしさも涼子のあからさまなアプローチもあからさまな社会風刺も)、安心して読めるおもしろさがあると思う。悪役は巻を経るごとにヘボンになっていっているような気もしますが。さて、泉田君の一人称で話は進んでいくんだけど、最初の頃に比べてだいぶ涼子に感化されていっている模様。ツッコミがだんだん常人離れしてきてますよ……。
あと、個人的に折り返し部分にあった「筆者の言葉」にある江戸時代なお涼にも少し興味が(笑)。ついでに、今年度中にアル戦出るのかなぁ〜。
彩雲国物語 はじまりの風は紅く
雪乃紗衣/由羅カイリ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
秀麗は国でも有数の名家のお嬢様だが、貧乏きわまりない生活を送っていた。そんな彼女の前に極上のもうけ話が舞い込んできた。年若いやる気のない王様の教育係として後宮に入るというその依頼に一も二もなく飛びついた秀麗だが……。
3ヶ月連続刊行のビーンズ文庫新人さんのラストの人。ごくごく個人的な感想なのだけど、3作品の中では一番面白かったと思う。文章も読みやすかったし、舞台設定もおいしいし(エセチャイニーズ?)、何より萌えが……(笑)。秀麗は私の好きなタイプの「自分で未来を切り開こう」とする女の子で、周りの登場人物もかっこいいのが多かった(ここ重要)。王様の天然、というか犬っぷりがほほえましくて面白い。どちらかといえば軽いノリで進んでいくけど、締めるところはきちんと締められていたしね。序盤のじじいどもの的はずれな会話とか楽しかったな。
ただ、終盤は少し詰まりすぎてちょっといっぱいいっぱいな感じは否めない。もう少し余裕を持ってラストを迎えてほしかった。登場人物も少し多いし、何より漢字の名前が覚えきれなくて「こいつは、どっちや」と時折振り返りながら読むのは面倒くさかったぞ(これは単に私の脳みそがついていけてないだけか……)。
薔薇の密書 アヴァンチュール1606
真瀬もと/松川祐里子
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
海賊王の娘・ガビーは道端で摺った獲物のおかげで国王暗殺の陰謀に巻き込まれる。それは奇しくもつい先日なくなった父親の遺言となにやら関係がありそうで……。
真瀬さんの初女の子主人公もののビーンズ文庫の新作。1606年のフランス、ということでいろいろと見たこと・聞いたことのある事件や人名がつらつら。読んだ後に思わず世界史の資料集を引っ張り出してきてしまった。それはさておき、私としては全体的に何かが足りない。ガビーとにかくパワフルで行動力にあふれる女の子、ちょっとした謎解きやロマンスも出てくるから好きな部類の話なんだけど、何かが足りない。一言で言ってしまうと微妙なんですな……。前作の方が私は好きだな。ということは、足りないものはプリティーな愛玩ドラゴンということでしょうかね(笑)。
ついでにいうと、海賊王と聞くとなにやら別のものが思い浮かんでしまい、あの単語が出てくるたびにその邪念を払う必要が生じてきて困った(笑)。
FLESH & BLOOD
松岡なつき/雪舟薫
(イラスト)・徳間書店キャラ文庫【
bk1・
別窓版】
キャプテン・ドレイクにあこがれる日本人高校生海斗は、旅行中に時空の狭間に飲み込まれ、ドレイクの活躍するイギリスにタイムスリップしてしまう。そこで海斗はドレイクの腹心であるキャプテン・ジェフリーに運良く助けられて……。
お気に入りサイトさん(複数)が一括購入や一気読みをなさっているのを見て、悶々と読みたくなって読んでしまったシリーズ第一巻。読む前から結構な期待をしておりましたが、期待に添うおもしろさだった。やむにやまれぬ事情で自分の素性を明かせない海斗があの手この手で周りをだまくらかしていく様子ははらはらしながら読めたし、裏で繰り広げられる政治劇はおおすぎもせず、少なすぎもせずのいいあんばい。歴史好きにもたまらない描写がちょこちょことありつつも、べつにそんなに人を選ぶようなマニアさないのでこのバランスもいい感じだなぁ。
いわゆるひとつのBLというやつで手に取るのに結構躊躇しましたが、そういう存在が生理的に受け付けないというのでもない限り読めると思われます。うん、今のとこまだ自分基準では大丈夫。うーん、自分がふだんチェックしないレーベルは時々大きなお宝が眠っているということを再確認してしまいましたね〜。