2003年8月の本の感想
でたまか アウトニア王国再興録5 青天霹靂篇
鷹見一幸/Chiyoko
(イラスト)・角川スニーカー文庫【
bk1・
別窓版】
前皇帝ダイテツがアリクレストに宣戦布告をした。マイドたちアウトニア軍は、全宇宙を舞台にフランチャイズ計画を実行し、そして義勇軍としてダイテツ側に立ちアリクレストに戦いを挑むことになる。<
あらすじかきにくい……第5巻。「ハッピーエンディングで最終巻だ!」という淡い期待をことごとく裏切られ、まだ続く模様。読者側から見たらまさに青天の霹靂のように感じるこの引っ張り方は、相変わらすというか何というか(次の敵の異星人って、前フリあったっけ?(あまり読み込んでいない一読者の素朴な疑問)。ヴァルとかギンガーとかのことを考えると、異星人関係の問題はなんとなくこいつらに裏がありそうで納得できるけど。ローデスとの最終的な決着もついていないし、一体どこまで風呂敷が広がるのかな?)。
チャーマー初登場の時から彼にエールを送っておりますので、そういう意味では次の巻が楽しみ(物語の性質上、なんとなく死にそうにないので安心して読めますな。これが田中某氏なら、あの時点で間違いなく死んでいたと思われます)。
業多姫 壱之帖−風待月
時海結以/増田恵
(イラスト)・富士見ミステリー文庫【
bk1・
別窓版】
戦国時代の小国・美駒ので異能の力を持つために周囲に恐れられていた領主の娘・鳴。嫁入りを目前に母親が謎の死を遂げ、その真相を究明しようとする鳴の前に、颯音と名乗る不思議な青年が現れる。
表紙に惹かれて読んでみようかなぁ、と思った1冊。表紙と裏のあらすじとレーベルから、「歴史物しつつミステリーで、儚げなお姫様と、隠密者(って言葉あったっけ……?)のラブストーリーに違いない!」と思いこんで読み進めてみたのだけど……。すいません、間違っておりました。ヒロイン(=鳴)はヒーロー(=颯音)よりももしかしなくても(物理的に)強いかも知れない(笑)。それはさておき、賞をとった作品だけに、読み応えは◎。物語のメッセージはきちんとつかめたように思う。
もうすぐ3巻も出るようで、4巻目も着々と進行中の模様(作者さんのサイトより)。コバルトででてもおかしくない内容ですし、ふたりのらぶっぷりに期待して、ぼちぼち読み進めてみようと思う。
マゼンタ色の黄昏 マリア外伝
榛名しおり/池上紗京
(イラスト)・講談社X文庫WH【
bk1・
別窓版】
ハプスブルク家の一員として、13才でハルバーシュタットに嫁入りしたエルザ。しかし、新郎は自分の父親より年上の老公だった。おとぎ話のような恋に憧れていたエルザは、若くて有能な宰相の息子フランツに惹かれるが、その心は隠し通さねばいけなくて……。
デビュー作『マリア』(昔の感想にはちょっとリンクしたくない(汗;)……)の親の世代のロマンスを描く外伝。マリアとこちらとどっちが好きと聞かれれば、難しいところだけどこっちと答えるかな?お互い惹かれつつも、その立場から想いを伝えることのできない2人の切ないラブロマンス、という点で、ストーリーとしてはこっちの方が好きだし。最後はマリアを読んでいるならどんな結末になるか分かってしまうのだけど、そこに至る過程がなるほど、と思わせるもの。マリアとセットで楽しまれるとよろしいかと。
創竜伝12 竜王風雲録
田中芳樹/CLUMP
(イラスト)・講談社文庫【
bk1・
別窓版】
どこかの時代に落ちてしまった長兄・青竜王を探し出すため、白竜王(三男)はお供の動物と宋の時代のに降りたった。一見平和なように見える宋も、なにやら見えない部分で異形のものの介入がありそうで……。
何年ぶりだろう、の創竜伝12巻。文庫本派なので新書版で2000年に出たのをようやく読む(つい最近13巻も出ましたが、これが読めるのはいつのことでしょうか。文庫本になるまで待てるんですがね)。
実は、ここ数冊の創竜伝は個人的に読むのが少しだるかったんだけど……、そんなこと思っていてごめんなさい、と思わずあやまりたくなる12巻だった。田中さんの中国歴史活劇物って、やっぱり面白い。もういっそ、このままずっと四兄弟中国漫遊記でもOKとかでもいいかも知れない、という邪悪な考えが頭の中をよぎってしまった(笑)。
片翼の天使 ヨコハマ浪漫す
綾乃なつき/みささぎ楓季
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版
祖父のお供で鹿鳴館の舞踏会に出席していた朱緒は、そこで憧れていた男性・シオンとの再会を果たす。しかし、浮かれる朱緒に薫は冷酷な忠告を与える。シオンには、朱緒にはいえない秘密があったのだ。
明治浪漫第2冊。で、今出ている分ではこれで終わりかな?急転直下な朱緒の恋の模様がはらはらどきどきで読めるかと。朱緒の気持ちもよく伝わってくることは伝わってくるけど、あんまり共感ができなくて、それどころか朱緒が身勝手だと思ってしまう自分には少しきつい展開だったかも知れない。薫が自分の気持ちに自覚したりと話は大きく動いたけど、続きが出ることがなさそうなので少し残念。
夢見る乙女じゃいられない ヨコハマ浪漫す
綾乃なつき/みささぎ楓季
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
文明開化の明治時代、車屋の一人娘朱緒は女学生。良家の子女が通うというその学校で、ウマの合わない雅子といつもどおり喧嘩をした次の日、雅子が何者かに殺されて……。
大正時代とか、明治時代とかのレトロな雰囲気の物語って結構好きなんっすよね(最近のだと『
双霊刀あやかし奇譚』とか。サク○大戦とかも好きだからなぁ……)。勝ち気そうなお嬢様と、意地悪そうなきつめの美形(笑)が表紙にきているこの物語、おもしろいかもセンサーがはたらき手に取ってみた。おおよそお嬢様らしくない横浜の下町育ちの朱緒(あけお)が元気のよいヒロインで面白かった。謎解きものとしては、それなりにわくわくしながら読めたし、私のセンサーは間違っていなかったようだ。
少し前(98年)のコバルト文庫だから、普通には書店にならんでいないと思われます。
レリック・オブ・ドラゴン 世界樹の水晶
真瀬もと/雪舟薫
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
ロルフは”世界樹の水晶”という予知能力を手に入れてしまい、未来を予知するビジョンに悩まされる日々を送っていた。そのロルフの能力を狙い、アンセルムの旧知・ディ・エムリスはWHに力を貸していて……。
最終巻。ロルフはやっぱりええ子や、と涙なしには語れないお話でした。アンセルムはともかくディ・エムリスという人外なお方の思考回路は最後までよく分からなかったけどね……。
近代への道を歩みつつ(でも、第一次世界大戦後は既に近代だな)、神話や伝承というものがたくさんそこら中にあふれているイギリスでの物語。最後にふさわしく、分厚くて読み応えがあった。ついでに、個人的にはヒジョーにおいしい最終巻。前の回しか出番ないのかなぁ、と思っていたダフネが大活躍(?)で(かわいいっ)、愛玩ドラゴン・タフタフもパワー全開で(キュートっ)。あー、満足満足。
女王と海賊 暁の天使たち5
茅田砂胡/鈴木梨華
(イラスト)・中央公論新社C-Novels Fantasia【
bk1・
別窓版】
復活したキング、目覚めた女王、起動したダイアナ。ジャスミンはケリーに文句をいうために、ダイアナと共に<ダイダロス・ワン>に急行する。
サブタイトル:ダンの苦悩。
いえ、このサブタイトル(↑)と、「女王と海賊」という題がこの巻の全てを語っている、というのは全くの思い過ごしでもないような。やはりこの物語はスカウィの続きなのだということがはっきり分かるの5冊目。3巻とか4巻から読んでも全く差し支えないかも。でもってやっぱりケリーとジャスミンっていいな、という認識を新たに。なんやかんやいってラブラブやん(笑)。そして、ダンに思わず合掌したくなる「母親と父親」の真実。ほんまにかわいそう……。
金銀はお気楽にことの成り行きを見守るだけの今回、存在理由はというと、キングと女王の行動にツッコミを入れることだけ(笑)。いえ、このツッコミも面白かったですよ。さすが茅田さん。
鏡のお城のミミ 〜山賊たちにご用心!〜
倉世春/水谷悠珠
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
城での事件が一段落ついたので、村に帰ることにしたミミと、なぜかミミについてきたエリック。道中、エリックとケンカ別れしてしまったミミは山の中で山賊に捕まってしまう。ミミを探すエリックも、これまた別の山賊に出会って……。
『鏡のお城のミミ』の続編。山賊同士の抗争(?)のはずなのに、あまりにものんびりほわほわした雰囲気だったので和みながら読んでしまった(だって、『楽魔女』の虹の谷の兵士さんみたいなのばっかだからなぁ)。これまたあまり書くとネタバレ必須なのであまり書きませんが、セルジュさん、性格変わってません?(笑)もとの性格はこっちだったのかも知れませんね。
鏡のお城のミミ 〜カンタン王国の冒険〜
倉世春/水谷悠珠
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
平凡な田舎娘のミミは、いつもどおり普通に生活していた。しかしある日、弟のフィディルが騎士によってさらわれてしまう。じつは、フィディルは現王の隠し子であったというのだ。ミミは城に潜り込み、フィディル奪還の機会を虎視眈々と狙っていた。そんなミミは城で仲良くなった下男のエリックの陰謀に巻き込まれてしまうことに!?
コバルト文庫的たのしみを十分に満喫できる一冊。表紙からして、悪くいえばもうちょっと軽めのものを想像していたけど、謎解き部分もからくりがあかされるまで気付くことなく、楽しく読めた(とある人の正体は、本当に最後まで気付かなかったから……)。
あんまり書くとネタバレ必須なんであんまり書きませんが、がんばるヒロイン、かわいい弟、なにげにかっこいいヒーロー、健気な親友、かっこいいお姫様といろいろ素敵要素がぎっしりな一冊
女神の花嫁(前・中編) 流血女神伝
須賀しのぶ/船戸明里
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ザカールの長老の子として生まれたラクリゼ。しかし、生まれるはずのない女であったラクリゼは、性別を男と偽り育てられた。そんなある日、「外」からザカールの村にやってきたサルベーン。彼との出会いがラクリゼを外の世界へ誘っていく。
『流血女神伝』の外伝。スーパーウーマンラクリゼと、怪僧サルベーンの過去が明らかにっ、という内容で、2冊で終わると聞いていたのでしばらく我慢していたのに終わらなかった……。我慢できずに読んだのだけど、早く後編が読みたい。ラクリゼもサルベーンも本編とは違って、おもしろかった。思わずサルベーンを見直してしまった(実は、個人的に彼の評価はどん底だった……)。前編はともかく、中編では”ラブストーリー”が繰り広げられており、オトメチックなラクリゼがこれまた素敵で。しかしながら、後編ではラクリゼとサルベーンの決別があるだろうというと思うので、それだけにこの中編での展開は考えさせられるものがあった
緑のアルダ 千年の隠者
榎木洋子/唯月一
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
王都を目指し旅を続けるアルダ・ココの一行は、途中山火事に行く手を塞がれ予定外の滞在をしいられる。その街で、ヨールは旧知からの伝言を受け取り……
順番からいって今度はヨールに焦点があたる番。『竜と魔法使い』のときに起こった悲しい事件を、ヨール視点で振り返っているのでなんだか新鮮だった。これを読むと、『リダー・ロイス』シリーズも読まないかんなぁ(実は未読)、読んだ方が面白いだろうなぁ、とも思うけど、なかなか。ウルファがどうして狙われるのか、何となくおぼろげながら黒幕が出てきたようですが、謎は深まるばかり。王都で再会するだろう物好きカートラム卿の出番を今か今かと待ち望んでおります。個人的には、今回のようなちょい登場でもうれしいのさ……。