2003年7月の本の感想
マリアさまが見てる 涼風さつさつ<
今野緒雪/ひびき玲音
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
花寺学院の学園祭に向けて、花寺生徒会のメンバーとの会合を持った山百合会。本格的な学園祭シーズンの到来を前に、祐巳の背後に不審な影が……。
学園祭前のプロローグ?つぼみたちにも妹、という問題が浮上する時期なんだなぁ、と改めて実感(……、あ、白薔薇姉妹の方はすっかり失念。あそこは熟年カップルって感じがしてもうこれ以上波乱起きそうにないし)。それにしても、今回は紅薔薇の絆が深まっただけ(途中のアレとか、ラストのソレとか)で、妹ができる余地が今まで以上になくなっただけではないのでないか、とちょっと心配になってきてみたり。
しかしながら、個人的には紅薔薇姉妹よりも花寺の方、というか祐麒君のほうが気になってしまった。えーと、かっこいいんです。いわゆるヒーロー系じゃないんだけど、悩む姿がとても、とても。さわやか系の好青年って感じが素敵で……。柏木さん(実は応援している)も、なんやかんやで出張ってますしね。世間様に真っ向から刃向かうような読み方してますが、花寺の面々が結構お気にいり。番外編とかで、花寺生徒会の話とかやらないかなぁ。
砂漠の花2 青海流砂
金蓮花/珠黎皐夕
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
シルヴァス公国との和解が水面下で進む中、相手は和解の条件としてカリュンと第一公子の婚姻を持ち出してきた。和解の話し合いと、相手国の新造船を見に行くという目的でカリュンはマーバンの地を訪れることになるが……。
女王然としているカリュンの、ときどきかいま見せる年相応の少女らしい一途さがちょっとよかったかな。新キャラ四人組の海軍将校さんたちが、なにげにいい感じかも。カリュンはなかなか痛い目にあっておりますが、シリスとはどうなるのか。私個人的にはレンソ−ルが幸せになれるのならもうなんでもいいや(ご察しの通り、「ずーっと仕え続ける腹心、しかし最近すれ違い気味」というのはツボ)。
針は何処に 黄金の拍車
駒崎優/岩崎美奈子
(イラスト)・講談社X文庫ホワイトハート【
bk1・
別窓版】
屋敷への帰り道、リチャードはとある騎士を助ける。謎に満ちた騎士が旅立ったあとに、リチャードはトビーが行方不明になったことを知る。二人の必死の捜索にもかかわらず、トビーは見つからない。どうやらトビーの失踪はあの騎士が関係しているようで……。
手にとって一番の感想は「薄っ」だったけど、そんなこと気にならないくらい一気読みしてしまった。話がなかなかに入り組んでいて(笑)、ボケた頭ではすらっと理解できなくて、何回もページをめくって読んでいた。あの騎士の”正体”や(最後まで気付かなかった……)、がんばるトビーなど、おいしいお話だった。半分個人的希望なのだけど、トビーって絶対いい青年になると思うなぁ
ミストルテインの矢 楽園の魔女たち
樹川さとみ/むっちりむうに
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
『禁断の魔女たち』……、4人娘たちのまえにずらりと並べられる、彼女たちをモチーフにした小説が世間では大ブレークしていた。このブームで思わぬ被害を被った娘たちは、発行者を割り出し、サラとファリスを直談判に向かわせることに。
楽しいことになっている(笑)。禁断の魔女たち、は少し読みたかったかも知れない……、少しだけ。今回はサラとファリスの出番が比較的多いんだけど、サラはいつもと違うからなぁ、新鮮だった。どのサラもやっぱりおもしろい。そして、ファリスがかっこいいから、もうなんでもいいや(笑)。
同時進行で、虹の谷のほうも一波乱。「お師匠様、貞操の危機!?」というのは間違ってはないけど合ってもいないような。
次からいよいよクライマックス突入らしいのですが、一体どういう展開になるのか予想もつかないので非常に楽しみ。
ブルー・ムーンに口づけを 怪盗紳士は夜、微笑う
一条理希/川添真理子
(イラスト)・富士見ミステリー文庫【
bk1・
別窓版】
桜真子は想像を絶する超貧乏な女子高生。父親が死んでからは、母親と共に桜探偵社をなんとか切り盛りしていた。そんな彼女の野望は世間を騒がす<怪盗ノクトルム>を捕まえて、その賞金で借金を完済すること。そんなある日、野望に燃える真子のもとに母親が”拾って”きた祐作とその兄・恭一郎が転がり込むことに。
もう、ルール違反なおもしろさ(笑)。根底に流れるお話はバリバリのシリアスなものなんだけど、それを包むありとあらゆる”小ネタ”たち。さすがにミステリー文庫ということで、ミステリー関係のネタ(ミステリーに疎すぎる私でもわかるようなネタ)が多かったけど、時事のネタもあったので、読むのなら今です、今。笑えますよ……。
基本はギャグ、しかしときにシリアスな兄弟と、貧乏語らせたら右に出るものはいない真子、そして裏では何を考えてるんですかの真子母と、おもしろくて、大変楽しく読むことができた。続きも読みたいな。
ゴッデュリアの予言
南天美保/後藤星
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
サムリユト王国の王女フィオは、期せずして異世界への扉を開いてしまい、その扉から異世界の王子スカイと魔物を呼び出してしまった。魔物にさらわれた弟を救うべく、フィオは魔術師のリヤと共にスカイの世界を救う旅に出る。
以前読んだ南天さんの本はほのぼの科学ありのファンタジー。今回はいわゆる”異世界に行く召還型ファンタジー”。フィオの健気な性格が◎。しかし、名前が覚えにくい……。物語の性質上、国の名前が似たようになるのはしょうがなし、ヒロインと”彼女”の名前が似ているのもまあよし。でも、他の人たちの名前の”響き”がなんとなく似ていて覚えにくかった……。これだれだっけ?と思いながら読んでいたので、思う程物語に集中できなかったのが残念。個人的には前のものより好きだし、ライトなファンタジーとしてお手軽に読むのにいいかも。
妖精姫と魔法使い
はすなみ透也/羽原よしかず
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
ダークエルフに屋敷を襲われ殺されかけたアンジェラは、通りがかりの騎士と魔法使いの二人連れに助けられた。アンジェラは二人を強引に従者し、殺された家人の仇を討ちにダークエルフが住むという森に向かった。
私の好きな路線で突っ走られているようなはすなみさんの3冊目。今回は、前2冊と違った雰囲気の前向きヒロイン(前のヒロインたちとは違った姿勢の前向きというか)が結構好印象。個人的には「ドレスで剣振り回して乱戦を戦えるわけないやん。しかも野宿」とか思ってしまうわけですが、ドレスに対するアンジェラのこだわりなどがなかなか興味深かった。展開は、実はミエミエといわれれば否定はできないのですが、べたべたなところがおもしろいわけで。
地にはマのつく星が降る!
喬林知/松本テマリ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
「天下一武道会(略してテンカブ)」の決勝戦、シマロン代表に3人目として現れたのは、ずっと探し続けていた人物だった。動揺するユーリにいつもどおりに接する彼。仲間と敵味方に分かれてしまったとい事態に混乱する一行は……。
一言感想:「次男〜!!」(←心持ち、フォントサイズは+2位で(笑))。
あ、この前と同じ感想。じゃあ、ついでに「ツェリ様、一生ついてきますっ!」という感想付け足しておこう……。
カロリア編(?)は無事終わったのだけど、物語全体の伏線(というのかな?)は増えて新展開がどうも気になる終わりだった。ユーリの力の謎や、次男の真意とか。これらがあかされるときがこの物語の終わりなのかな?今回、個人的にぐっとくる場面(舞踏会のユーリとフリンのシーン)などもあっていつもどおり楽しく読むことができた。
……、ただ、赤い悪魔の出番が、出番がっ(涙)。話に出てくるだけでも思わず笑ってしまったけど(笑)。
堕天使の柩 〜レマイユの吸血鬼〜
真堂樹/木々
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
吸血鬼の血を引くレマイユ伯イブ・アントワーヌは、観劇中に何者かに誤って誘拐されてしまう。イブと一緒に誘拐された誘拐犯の真の誘拐目的・アンジュ公シャルルは何者かに命を狙われているらしい。ひとりで逃げ出したイブは、利害の一致からジュラールと手を組みシャルル奪還計画を実行する。
レマイユの吸血鬼の2冊目。ところどころ個人的にムムム、というシーン(きわめて、個人的な嗜好……)もあったけど、展開もあっという間で楽しめた。「あなたはどんな柩に入りたいですか」という質問が今回のテーマになっているけど、物語全体の伏線にもなっているようなイブとジュラールの答えが印象に残った。
「レマイユの吸血鬼」の描写は、なんだか劇を見ているような感じがして(イブのセリフまわしとか)、物語の雰囲気に合ってるなぁ、とついつい感心しながら読んでしまった。しかしながら、あとがきをよんで一抹の不安が。主役二人の急接近、などいりません(笑)。モロにそっち方向に行ったら、読んでいける自信が……(でも、イブはオトコかオンナか微妙なところなんだろうけど、やっぱり基本はオトコだと思うし。なんつーか、あ、狙ってるかも、と思ってしまう自分が少し嫌かも……)。