2003年12月の本の感想
なかないでストレイシープ 鏡の魔法と黒衣のドレス
竹岡葉月/菊池久美子
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
立派な女主人になることに闘志を燃やすセリアは、ロドニーを説き伏せてガーデンパーティーにチャレンジすることにした。準備に取りかかろうとすると、ロドニーの妹の勤め先のお嬢様がセリアを頼って家出をしてきてしまい……
少女小説だ、コバルト文庫だ、むふふとうれしさをかみしめながら読めるシリーズ。やる気満々パワフルお嬢様なセリアと、その彼女を支える若き執事の「じれったい」関係が何ともいえない。この二人を「とことん前向きに迷走するセリアさんと、あくまで直角に後ろ向きなロドニーさん」と表している後書きなんですが、まさしく。ゲストキャラのエピソードも素敵だった。セリアを初めとして、ラヴィニアやクラリッサ、ジルなど女性陣が生き生きとしていて存在感があり、個人的にはとても好きなシリーズ。
月に濡れる獣(アムール)
辻野亞矢/椎名咲月
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
行方不明の恋人を探し、異世界をわたるリューンは生まれたばかりのアレックスと出会う。アレックスが立派な青年になったとき二人は再会したが、リューンはアレックスが追う魔獣とまちがわれてしまう。
ビーンズ文庫新人さんらしいひとのデビュー作品。表紙から男女ものだと期待して購入したのですが、ダマサレタ。正確にいうとどちらにも分類しがたいやつなんですが、期待していただけに落ち込み度合いも……。気を取り直して内容ですが、全体的になんとなく微妙。文章がこなれていない、というかちょっとばかり読みにくいというのが一番ネックかなぁ(新人さんなら別にいいか、と思う程度なのだけど)。話の筋はわかりにくいというわけでもないのだけど、何となしに乗り切れないというか。ちょっと唐突?とか思ったり。何よりも、リューンが一番理解しがたかった……。ストーリー自体は”ろまんてぃっく”に仕上がってるんで、ちょっといろいろもったいなかったかなぁという感は否めない。
マリア様がみてる レディ、GO!
今野緒雪/ひびき令音
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
学園祭の前にあるのは運動会。ということでファイティングスピリッツに燃える由乃とは対照的に祐巳は可南子との一件が気になっていた。
学園祭前の前哨戦といったところかな。紅薔薇と黄薔薇のつぼみの妹問題が現実味を帯びてきた。紅薔薇の方は可南子ちゃんと瞳子ちゃんの一騎打ちっぽいんですが、黄薔薇はどんな子なんでしょうかね……。燃える由乃ちゃんとおっとり天然志摩子さんの対比が面白かった。嵐の前の静けさといいましょうか、祐巳と祥子さまはいつも通りのらぶらぶでしたしね。祐巳父や祥子父のイラストを見てみたい今日この頃です。
次出るのもマリみてみたいだけど、スリピッシュ!の後編はいつかなぁ……。
天使の舞踏会 暁の天使たち6
茅田砂胡/鈴木理華
(イラスト)・C-NovelsFantasia【
bk1・
別窓版】
怒りでタカがはずれてしまったルゥをなだめるために、金銀+ファロット組、そして女王とキングとその息子が行動を起こす。
今回も唯一の常識人・ダンのツッコミが光っていました。
これで終わりといわれても納得がいかないような、そんなラスト。後書きにあるように「プロローグの完結編」だからね……。味方が一通りそろったのに加えて、いわゆる「悪役」の存在もちらほら。端役も端役、水戸黄門でいうならお代官様の部下その一くらいの存在でしたが(笑)。読み始めたらそれこそ一気読みで、「女王、キング、一生ついて行きますっ」ってくらい面白いのだけど、読み終わった後はなんとなく残るものがない……。あと、ラー一族の論理も納得いかないし。「(主人公側の)論理を否定するのは悪、もしくは取るに足らない人物」というような図式はもうお腹いっぱい。
なんのかんのいいつつも、やっぱり面白いんだけどなぁ、リィやファロット組があそこまでやるのならウォルも召還しましょうよ(笑)。ええ、是非。ウォルと女王、キングの会話なんて面白そうだ。要所要所にちりばめられたデル戦の「名台詞(?)」が憎い!もう一回読み直したくなること請け合い……。
天空の刻印(上)
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・小学館パレット文庫【
bk1・
別窓版】
騎馬遊牧民族・カブランの首長の養い子として育てられたレンは初陣で武勲を立てることが出来た。しかしその喜びもつかの間、南の大国・タスタリアがカブランに朝貢を求めて使者をおくってくる。
やっぱり、朝香さんのこういうお話は大好き。「三国志シリーズ」と「キラーブ・アルサール」を足してファンタジー要素を強くしたようなお話。主人公のレンは元気いっぱいの前向きな)かなりかわいい少年。レンの義兄たちもいい感じ。朝香さんの兄弟モノ(?)ってなんでこう私のツボにジャストミートなんでしょう(笑)。個人的には長兄エルクがイチオシ。今見てみると、イラストの面ではレンより目立っているかも……、なくらい活躍しております。
某シリーズのようにえらいところで終わっているわけではないのだけど(今回はあと14ページほど早く終わったら「続きは〜?」と叫びたくなったことでしょう)、やっぱり続きが気になるわけで。
汝、ひそやかに想う者たちよ
片山奈保子/小田切ほたる
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
母に望まれて司祭官になったトゥイータは並ならぬ笛の音の持ち主。しかし、誰にも心を開かず心の奥には他人には相談できない葛藤を持っている。それに気づいた同僚のキリオンは何とかトゥイータの力になりたいと考える。
読みながら困ったことが、一カ所。前の話をほとんど覚えていないので「キリオン、誰それ?」状態。別に困らないんだけど、ここら辺をきちんと補完してから読んだ方が楽しいでしょう。いつも通り普通に始まって普通に終わったような気がする。話の大枠については進んでいないくはないのだけど、ほとんど前進なし……。あまり進展のないシリーズものというのはちょっとだれたら停滞してしまいそうなので、もっとどどんと進んでくれた方がいいなぁ。いつの間にか準レギュラーのリリーヌさんが凄すぎます。彼女には是非ともこのまま我が道を突っ走ってほしいと考えております。リリーヌさんは面白かった。
楽園の魔女たち 楽園の食卓(前編)
樹川さとみ/むっちりむうにい
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
昇級試験を受けた四人娘たちは、その結果を待つ部屋で急な仕事を命じられる。曰く、帝国の皇子の一人、つまりはダナティアの兄が早急に四人娘たちの手を借りたいというのだが……。
しょ、少佐がっっ!(うれしさのあまりちょっと挙動不審)
楽魔女もクライマックス、というかこれと次ので終わりということで怒濤の展開。四人娘たちはそれぞれの立場で帝国の戦争に関わっていくんだけど、なんかすごいところで次巻に持ち越し状態で……。発売前に見たあらすじから、「ファリスの出番少なそー」と予想していたんですが、滅相もない。『
七日間だけの恋人』(私的楽魔女最高傑作)が好きな人間ならうれしくてうれしくてたまらない展開。ファリス関連に目がくらんで他のストーリーにあまり目がいってなかったんだけど、落ち着いて読んでみたらサラはかっこいいし、ダナティアもかっこいいし、マリアもお子様なりにがんばっているしで盛りだくさん。
願わくば、次の巻でいっぱいいっぱいで終わるということがありませんように。前中後編の三冊分冊でも個人的にはうれしいなぁ……。
魔女の結婚 女神の島よ眠れ
谷瑞恵/蓮見桃衣
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ステファンと結婚することを決意したエレインだが、彼女に何も言わずさろうとするマティアスの後をこっそりつける。「最後に一日だけ」マティアスといたいというエレインの頼みを拒絶できないマティアスは……。
悶々とした展開になってきた。ここまではいつも大体何が起こっても始終元気なエレインだったんだけど、起こったことがことだけに、マイナスオーラ全開の彼女は読んでいてちょっとつらいものがあったかな。お話はお話の方で、<とりあえず、ネタばれ→ついにマティアス全面対決の道を選ぶ、というかマティアスの宣戦布告によっしゃっ!と思ってしまった……。エレイン、マティアスの猛攻に耐えきれるのかなぁ……?←>
FLESH & BLOOD3
松岡なつき/雪舟薫
(イラスト)・徳間書店キャラ文庫【
bk1・
別窓版】
カイトたちの乗るグローリア号は通りがかりのスペイン商船を捕獲することに成功した。捕虜となった商船の船長と話す内に、カイトはこの世界が自分の知っている世界とは食い違ってきていることに気づいてしまい……。
いろいろともんもんと悩むカイトもかわいいんですがね〜、やっぱりしゃきっと賢く冷静に対処していくカイトがいい〜。この後、史実との食い違いはどうなっていくのか、そしてカイトはどう判断するのか。ちょっとした頭脳ゲームっぽくてそこら辺が面白い。今回は、ジェフリーの親友でもあり有能な右腕でもあるナイジェルが目立っていた。カイト争奪戦(……まぁ、一言でいいあらわすなら……)にナイジェルも参戦、ジェフリー、ナイジェル、そしてビゼンテの三つ巴の相を呈してきたような……。個人的には、この三人の中ではナイジェルが好き(笑)。