2005年11月の本の感想
雪月の花嫁
樹川さとみ/西炯子(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
辺境の島で育ったフェリアナは、17歳になったあるとき都の父に呼び出される。政略結婚の駒としてとある軍人に嫁ぐこととなったフェアリナだが……
樹川さんの初コバルト作品でとっても好きな作品。貴族のご令嬢(といってもいろいろワケあり)と不器用な軍人さんのラブストーリーです。フェリアナの啖呵の切り具合も素敵だし、素敵にうごめく陰謀もいい具合なのです。
主役の影でうごめく謎のお嬢さんとその一味が結構好きだったりするんですが、いろいろと謎に包まれたまま終わってしまったのが残念ですね。機会があれば謎のお嬢さんと王子様のお話も読んでみたかったりしたのですが……。何を今さら感な選本ですが、好きなんです。折に触れてついつい読み返してしまう作品です。
桃源の薬
山本瑶/香坂ゆう(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
魑魅魍魎の跋扈する白翼山をひとりで上る少女・招凛花。翼山に住むという方士に会って恋の媚薬を手に入れるという彼女の目的の裏には……。
健気でかわいい女の子と様々な事情から若干ひねくれている方士の恋愛ものです。半ば押しかけ女房のごとく家に居座ることに成功した割には押しが弱い凛花が好印象。「みなさん不器用ですなぁ」と外野からは好きなようにヤジを飛ばせるストーリー展開がなかなか好みでございました。
1冊できれいに終わっているので続編は蛇足かなぁと思うんですけど(後書参照)、でも読んでみないと分からないし、次にもそこはかとなく期待。というわけでコバルト的恋愛ストーリーとしてはオーソドックスに楽しめるのではないかと思われます。
ガイユの書 薔薇の灰に祈りを
響野夏菜/凱王寺安子(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
北方のとある街の宿屋の夫婦に拾われ、育てられているポーシアは≪灰かぶり≫と呼ばれる≪魔術師≫に作られた存在だった。≪灰かぶり≫であることを隠し、慎ましやかに生きるポーシアの元にポーシアにそっくりな少女を捜す青年が現れる。
「コバルト小説のファンタジーだなぁ」とうれしくなってしまうような新シリーズでした。物語はまだまだはじまったばかりで、謎がたくさんです。ポーシアに顔も名前もそっくりなナーシア、アーシアという二人がポーシアとどのような関係にあるのか、ルーと逃げることになったポーシアとナーシアを探すマイとユサーザはどのような形で再会するのか。なんにせよ、続きが楽しみなシリーズです。
というわけで、このお話がかなり好感触だったので他の話にもチャレンジしてみようかなー。
シェオル・レジーナ 魔女の刻印
村田栞/左近堂絵理(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
グランディエの元に彼の知り合いでエンディミオン名乗る堕天使がやってくるが、グランディエには面識がないという。そんな中、ファティマの元に教皇庁から異端の疑いがある儀式の調査依頼が来る。調査のためにファティマ一行はエンディミオンと共にチヴィダーレに向かった。
グランディエ(と山羊頭さん)の過去とファティマの前世が明らかになる話でした。1冊目よりだいぶおもしろく感じたし、話の展開もなかなか好みなんですがいかんせんファティマが(キャラとして)弱いなぁ、と。もったいない〜。
しかし、ファティマの描写よりもシオンにじゃれるグランディエやグランディエに猛アタックをかけるエンディミオンの描写に気合いが入っているのは気のせいだといいんだけど。どちらかといわなくてもそっちの方に流れていくのなら私としてももうこれ以上は無理です……。せっかくとてもストレートな組み合わせがあるのにそれよりも脇にそれるとは本当にもったいない。あー、BL系統が全くダメな人には既に若干きつい内容でしたねぇ。
スカーレット・クロス 月波の導べ
瑞山いつき/橘水樹・櫻林子(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
イプリスに≪聖櫃≫の鍵と認められたツキシロは、ギブの≪聖なる下僕≫としてある決意を固めていた。一方、任地を無断で離れたレオナルドの元に神殿から査問委員がやってくる。任意同行を求められギブもレオナルドと共に神殿に向かうことになり……。
ほー、そう来るかという風雲急を告げる展開でした。イプリスやハクティバの契約者たちの苦悩(”本心”と”命令”の境界のあいまいさ)がよくあらわれているな、と。一筋縄でいかないイプリスと契約者達の関係にどう決着が付くのかも楽しみです。
オウカさんはかっこよかったんですがそれに対してギブがー、えーと、これまたご愁傷様。日頃の行いが悪すぎるでせいです、絶対。
伯爵と妖精 取り換えられたプリンセス
谷瑞恵/高星麻子(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
エドガーの領地で取り換え子(チェンジリング)の事件が起きていると知ったリディアは、ニコを連れて単身問題解決に向かった。一方、エドガーの元には青騎士伯爵に騙されてイギリスに連れて行かれた親友を探しに来た昔なじみの海賊ロタがやってくる。エドガーはロタ一行とともにリディアを追って問題の領地に向かうが……。
今回もやっぱり最高!な伯爵と妖精でした。リディアを守るために本物の青騎士伯爵ではないことに悩み、力をつけようとするエドガーがちょっとはかっこよかったし、相も変わらずの口説きまくりというのもおもしろかったんですが……、終盤までは。それにしてもこのヘタレめっ!と思わずあきれてしまうエドガーに合掌です。
エドガーのアーミンに対する思いについては、私はリディアの誤解だと思うのですが果たしてどうなのでしょうか。ロンドンを一旦離れることを選んだリディアと一歩がなかなか踏み出せないエドガーはもちろん、信じたいんだけどすっごくあやしい彼の人の行動がとても気になります。続きがとても楽しみ。次の舞台はスコットランドかなー?