2004年1月の本の感想


運命は剣を差し出す1 バンダル・アード=ケナード
駒崎優/ひたき(イラスト)・中央公論社C-Novels Fantasia【bk1別窓版

とあることから追われる身となった医者のヴァルベイトは、戦場跡で怪我を負って捨て置かれた傭兵と出会う。シャリースと名乗る傭兵は、かの有名な傭兵隊バンダル・アード=ケナードの隊長であるという。ヴァルベイトはシャリースに護衛を依頼することにするが、シャリースも何者かに命を狙われているようで……。

ずーっと待っていた駒崎さんのノベルズ新作。予告通り「渋くてかっこいいおっさん」(とはいってもまだ三十過ぎ)が主人公!(ついでに医者は四十過ぎのおっさん)3冊予定の1冊目、ということで全体像などはまだ少し謎な部分もありますが、とにもかくにも楽しめた。笑いもとるけど、かっこいいところはかっこいいというシャリースの素敵なおっさんぶりにクラクラ……。そして白狼のおじょうちゃんにもメロメロ。ああいう忠犬系動物って好きだなぁ。
ただし、「えーっ」と思うところで幕切れなので、待てるのならちゃんと全部そろってから読んだ方がよいかも。すぐに次がでる、というわけでもないみたいなのですごく待ち遠しい。
Jun/25/2004 ↑TOP
 『手折られた青い百合 歓楽の都

バッカーノ! The Roling Bootlegs
成田良悟/エナミカツミ(イラスト)・電撃文庫【bk1別窓版

禁酒法時代のニューヨーク。裏世界の組織の一つ『カモッラ』では、新たに幹部を迎える儀式を目前にしていた。儀式のための買い出しにでたフィーロは、街中でちょっとした騒ぎを目撃しする。そして同じ頃、不死の秘酒を求める錬金術師は助手を伴ってNY入りを果たし、各地を微妙に騒がしている仮装強盗もNYにやってきていた。

ここまであらすじが書けないお話も久しぶりなような気がしますが、そんなこんなでおすすめいただいていた『バッカーノ!』をようやく読了。読み終えた感想は「おもしろかった!」の一言に尽きるかな。いろんな登場人物が、意図せずして関わっていって最後に一つにつながるところにはただただ感心。
正直言って、最初はすこし読みにくいかなぁというか、あんまりページが進まなかったんですよ(笑)。どんどん視点(というか、メインの人物)が変わっていくのに慣れなくて。でも、半ばあたりからスピードアップ、でもっていつの間にか読み終わっていたという。ハードなアクション、息もつかせぬ展開、ついでに憎めない馬鹿強盗カップル、そんな感じで大変楽しめました。
Jun/05/2004 ↑TOP
 

嘆きと癒しのカントゥス ゲルマーニア伝奇
榛名しおり/池上紗京(イラスト)・講談社ホワイトハートX文庫【bk1別窓版

『深き断層の谷のフランク』の族長オーシンがクィントゥスの部族に接近してきた。ララ・ルネとの争いに決着をつけ、なおかつローマにも手出しをさせないために共同戦線をはることになるというのだが……。

ユリウスの出生の秘密が暴露されたり、ペティロッソの出自が明らかになったり、一巻以来とんと出番のなかった<鷲の眼の男>が再登場したり(こいつの正体にはちょとびっくり)、いろいろと動きが多かった。そんな中、メロヴェは相も変わらず一人でぐるぐる、ちょっとくらい気づいてやれよ、クィンな感じでしたね。悪女代表、な女性が暗躍してみたり、メロヴェを巡って関係がもつれそうだしこの先も目が離せない。個人的にはクィンを応援していたりするのだけど……、どうなるんでしょうね?今回一番うれしかったのはオーシン(参照:『花降る千年王国』の登場でしょうか?彼にはもっと出張ってほしかったり。たぶん、出てくるでしょう。
Jun/04/2004 ↑TOP
 『半身なる宿命のアモル ゲルマーニア伝奇

時の竜と水の指環 (前後編)
樹川さとみ/桃栗みかん(イラスト)・集英社コバルト文庫【s-books(別窓版)

ノーマ・カーの森の薬師アイリは、死んだ兄に成り代わり性別を偽り暮らしていた。ある嵐の日、アイリの元をク・オルティスという名の騎士が訪ねてくる。その騎士の依頼に応え騎士の館でけが人の治療をしたアイリだが、森に帰るタイミングを逃し、なぜかク・オルティスとともに武芸武術大会が行われるという王都に行くことになってしまう。

初期の樹川さんの作品の中でもかなり好きな作品。猪突猛進型の鈍感騎士と、控えめでいつも一生懸命なけなげな女の子のラブストーリー。なんといいますか、樹川さんの作品の好きなところが凝縮されているというのでしょうか?傍目から見れば、どう見ても相思相愛なはずなのに本人達は全く気づいていないというもどかしさがたまらない。脇役達もおいしい性格をしていて。食えない性格の王様とか気の強い王妃様とか主人を敬愛しているわりには言いたい放題の従者とか。

再読して改めて好きなことが分かった、そんな本。で、発行年月日を見てちょっと愕然としてしまう。1994年、十年前ですか……(遠い目)そりゃどこのオンライン書店にも在庫ないわな。思えば遠くにきたもんだ。
Jan/03/2004 ↑TOP
 『楽園の魔女達 楽園の食卓(前編)

運命の輪が廻るとき
朝香祥/穂波ゆきね(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

孫堅を中心に袁術のもとで着実に力をつける孫軍。そんな孫軍に対し、袁術は襄陽の劉表を攻め落とすように命を下す。

あらすじが……、かけない。三国志知ってたらあらすじいらないと思うんですが、孫堅がはかなくなるあそこらへんの話。時期的には、コバルト三国志の『約束の時へ』の直後ですね。
朝香三国志は、コバルトで9冊ほど出ておりまして、その後オトナの事情というやつでコバルトでは出なくなってしまいました(ついでに絶版)。個人的に結構好きな三国志でして、普段はあまり日を浴びることのない呉がメインということでかなり楽しみにしていたんですよね。で、この度めでたくビーンズ文庫に移籍・新刊発行という運びになったということみたいです。
孫策の葛藤や、孫堅の元で絶頂を迎える孫軍が孫堅を失い一気に勢いをなくしていく様子などが書き込まれていて、孫策と一緒に寂寥感を味わってしまった。この後持ち直すまでをまた続きで書いてほしいなぁ、と思うし、他にもいろいろ読みたいエピソードがたくさんあるので……、地道に応援していきたいと思います。続きも是非ともビーンズ文庫で……。
Dec/31/2003 ↑TOP
 『天空の刻印(上)

鏡のお城のミミ さまよう恋のメヌエット
倉世春/水谷悠珠(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

この間の事件の釈明をするため、カルネー公爵の城に呼び出しを食らったエリック。そこでエリックは公爵の娘・孫達から猛烈なアタックを食うことになってしまう。一方のミミは、以前の盗賊騒ぎで知り合ったカルネー公爵の息子ジャン=バティストの手紙を曲解した公爵とその奥方からバティストの花嫁候補に認定されてしまう。

ミミ3巻目。ミミと幸せな平凡な日々を過ごしたいエリックに対し、そうは問屋が卸さない。エリックの持つ”血”を巡ってだんだん話は大きくなっていく。その上、ジャン=バティストとそのご一行という恋のライバルまでできてしまうし……。エリックってなんかすごく報われない奴だなぁと思ってしまった。次はどうやらマルグリッドが舞台らしい。この話随一のプリティーな少年フィディルとその婚約者ベアトリス(まるでヅカの男役)の登場が楽しみだ。
Dec/28/2003 ↑TOP
 『鏡のお城のミミ 幸せの村へようこそ!

眠れる天使の園 サンク・ヴェリテの恋人たち
橘香いくの/江ノ本瞳(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

この間の事件の釈明をするため、カルネー公爵の城に呼び出しを食らったエリック。そこでエリックは公爵の娘・孫達から猛烈なアタックを食うことになってしまう。一方のミミは、以前の盗賊騒ぎで知り合ったカルネー公爵の息子ジャン=バティストの手紙を曲解した公爵とその奥方からバティストの花嫁候補に認定されてしまう。

今回の話、一言で言うとシャロンが二人いたらどういう大変なことになるのかということを身をもって実感できるお話(笑)。
シャロン(偽)誘拐事件と、それを解決するために現地に乗り込んだシャロンが巻き込まれる地元の美人誘拐事件。この二つが全く関係ないようなところからきれいに繋がるところはさすが!と思わせるところがある。普通は結婚したらゴールですが、この二人は結婚後にものすごい事件に巻き込まれそう。コラフェリのテランス陛下がこの二人の孫(だったと思う)とのことで、これから起こる事件がそこら辺に関係していくんだろうな。
Dec/27/2003 ↑TOP
 『翼のない天馬 サンク・ヴェリテの恋人たち