2006年3月の本の感想



<骨牌使い>の鏡I

五代ゆう/宮城(イラスト)富士見ファンタジア文庫bk1amazon

母の後を継ぎ、<骨牌使い>の占い師として生計を立てていたアトリは、なじみの娼館<斥候館>の花の祭りに呼ばれていた。親友のモーウェンナに請われて骨牌占いをするアトリだが、妙な客に因縁をつけられてしまう。その場をなんとかしのいだアトリだが、娼館からの帰り道に母の形見の骨牌を失い、謎の青年に攫われてしまう。

各所で絶賛されていた骨太のファンタジー、文庫版が刊行されたので読んでみました。たしかに、これは絶賛されるのも分かります。めっちゃおもしろい!(毎度ながら自分の語彙の少なさに辟易とします)
この物語の世界を構築する仕組みといい、<骨牌使い>の存在といい、大変読み応えのある内容。次々にアトリに降りかかるあれやこれやの事件が読む手を止めさせません。あの人は味方なんだろうか敵なんだろうかとやきもきしながら読んでいました。アトリをはじめとする登場人物も魅力的。どうやら、この世界は女の人が非常に強いようです(笑)。3冊分刊らしいので、最終的にはたぶん3冊目に「おもしろかった」と叫んでいるでしょうがとりあえず1冊目の感想は「続き早くプリーズ!」に集約されるかと。次いつ?いつ?
Mar/26/2006 ↑TOP
 


空ノ鐘の響く惑星で 10

渡瀬草一郎/岩崎美奈子(イラスト)電撃文庫bk1amazon

タートムとの和平会談のため、ウルクらと共にジラーハに向かったフェリオはウルクの姉でもある神姉ノエルとの面会を許される。一方、ラトロアではイリス達来訪者一行がメビウスによる”死の精霊”での実験に立ち会い……。

毎回ながら、大変おもしろかったです。今回もなんだかいろいろありまして。物語は終盤に向けての布石を一通り終えたといったところかな。来訪者の世界とこちらの世界、シャジールの民なんかの謎が少ずつ明かされてきておりまして、ここら辺のカラクリもとっても気になるんですが……、やっぱラブですよねぇ。今回もやっぱり全編に渡りラブな感じでした。うん、好み。しかし、圧倒的少数派であろうリセリナ派の私にとってはちょっと残念な展開になってきたかなぁ、いや、でも王子はまだきちんと「口」にしていないのでまだ希望も?たしかにみんな言うようにリセリナには勝ち目がないんですけど、また二転三転するのかなとかすかな期待を……(一応ネタバレのため反転)という流れでこちらもハラハラドキドキでした。神姫は神姫で最強でした(カシナートのイメージが大崩だ)。
次巻以降はラトロアに主舞台が移る雰囲気。ラトロアの使者君もちょっと今後が楽しみな好みのタイプなので、次もとっても楽しみです。
Mar/18/2006 ↑TOP
 『空ノ鐘の響く惑星で 9


スカーレット・クロス 背信の月露

瑞山いつき/橘水樹・櫻林子(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

ウォール大森林の奥に向かうために一旦ウォール村に帰ることとなったギブ神父一行。そんな中、戦いのために真性のヴァンパイアに近い性質になってしまったツキシロは、ある決断をする。

クライマックス直前ということで、あなたのために私はここを去るのの〜といった王道展開でいい感じでした。今回は”派手”な戦闘がないだけにおとなしめな印象だったんですが。まず、末期症状に悩むギブに思わず笑いそうになりました。いや、でもあれって自業自得だから同情の余地もないんです。もう一つの見所といえば、ツキシロとパパ。なんだかんだで分かり合えてよかったねというか、嫉妬(?)するパパがおもしろかったというか。あー、あと初心に戻ったツキシロもかわいかった!そういえば、この子こんな感じのかわいい女の子だったな、と(最近ハードな展開でそこら辺の影があまり見えませんでしたから)。ギブやツキシロが選ぼうとしている現在提示されている選択肢ではどう考えてもハッピーエンドになりそうにないんですが、きっと何かウルトラCな解決策が待っているんだ!とハッピーエンド好きとして微妙な期待をしつつ、最終巻を待つことにします。
Mar/13/2006 ↑TOP
 『スカーレット・クロス 月波の導べ


生まれいずる者よ ―金の髪のフェンリル―

榎田尤利/北畠あけ乃(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

マーロン博士の残した遺言を求め、ユージン・キーツのお膝元であるシティ1に向かったフェンリルとタウバ。聖職者になりすまし、聖母教会に潜り込む二人だが、お目当ての場所にはなかなかたどり着けそうになく……。

フェンリルとタウバはもちろんのこと、どこからどう見ても悪役の鏡のような二人(ユージンとセシル)にもスポットが当たっていた最新刊、おもしろかったです〜。どんな生まれを持とうとも、その子が幸せな人生を歩んで行ければいいんだけどなぁと思ってしまうような展開でしたが、やっぱり、ユージンって悪役だ。その背景が明かされはしたものの、やっぱり同情は少し難しい。
それにしても、タウバはいい味出してますねぇ。思わず惚れそうになりましたよ(またか)。そして、今回は「音声」のみの登場となる”ファットA”の相も変わらずの超前向きさが素敵でした。次回からは時間軸が元に戻り、サラと再会した後の物語になるそう。遺言にあるシャーマンを探し、そしてユージンとの最終決戦かな?続きが楽しみで仕方がありません。うわー、早く読みたい。
作者さんのサイトを拝見する限り、終わりも近づいているそうなのですが……、おもしろい物語が終わりに刻一刻と近づいているというのは続きが早く読みたい反面、とってももったいない気がするというジレンマに悩まされる……。
Mar/05/2006 ↑TOP
 『沙漠の王 ―金の髪のフェンリル―


紅牙のルビーウルフ2 面影人魚

淡路帆希/椎名優(イラスト)富士見ファンタジア文庫bk1amazon

存在すら伝説である五つ目の神具「全知の書」を持ってトライアンに現れたキアラ。ミレリーナの招きに応じて「全知の書」の真偽を判断するためにトライアンに向かったルビーウルフとジェイドだが、名前以外のことをほとんど語ろうとしないキアラの態度に違和感を感じる。

ルビーウルフ第2巻はグラディウスの復興は(冬なので)一旦お休みというわけで、トライアンでの謎の神具を巡る騒動を描いた物語でした。うん、やっぱりいいわこのお話〜。安心して読める王道オーラとそれを裏切らない展開に大満足です。事件の一連の顛末は少し寂しいものもありましたが。
ルビーのざっくばらんな態度と、なんやかんやでそういうことを気にしない人たちの集まりで忘れそうになるんですが実はみんなすごい人ばっかりなんですよねぇ。いやはや、類は友を呼びまくりです。今回初登場のラーク王子もこれからもちょくちょく活躍してくれそうな予感。ルビーにとっては迷惑かもしれませんが。そして、ジェイドとフロストの水面下での”男の戦い”も楽しいですねぇ。ジェイドとルビーの微妙な距離感がかなりツボなんで、ルビーが今後どのように国を治めていくかということを含めて続きに期待大の作品です。
Mar/05/2006 ↑TOP
 『紅牙のルビーウルフ


さまよう愛の果て 失われた王国と神々の千一夜物語

谷瑞恵/山本鳥尾(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

嫁ぎ先に向かう途中で逃げ出したアイーシャは花嫁衣装のまま市場をさまよっていた。そこでアイーシャが出会ったのは肩に鸚鵡をのせたウード弾きの青年サンジェル。父の仇を討つために旅をするアイーシャは、鸚鵡の語る黄金の国の物語を語るサンジェルとともに行動することとなるが……。

谷さんの新作は、アラビア風な地域を舞台にした少女と青年、そして青年が語る南国風な黄金の国を舞台に繰り広げられるとある昔話の物語の二つの物語を軸に話が進んでいきます。どんな感想をかいてもすごいネタバレになりそうなんで下手に何もかけないという非常に感想を書くのに困る作品なんですが、タイトルにピンと来て手に取ったらそれは正解ですよ〜、というような作品(うわ、意味不明)。_アイーシャとは関係のなさそうな昔話が徐々に関係ありそうな雰囲気を醸しだし、そして最後はという展開がすばらしいです。でもって、途中途中でコレ絶対悲恋で終わるという予感を感じさせつつ、でももしかしたら、という期待を持たせてくれたけどやっぱり悲恋で終わってしまうという切ない展開だったんですが、それを差し引いてもいいお話でした……。
もう何を書いているかよくわからない感想なんですが、とりあえずお薦めです。「惹かれちゃいけないけど惹かれちゃう〜」という展開好みにはたまらない作品。
Mar/03/2006 ↑TOP