2006年4月の本の感想



ノルマルク戦記 1.滅びの星の皇子

赤城毅/小河原亮(イラスト)集英社スーパーダッシュ文庫bk1amazon

破蠍星の生まれのため、ノルマルク王国の第二王子のユリアスは閉生活を余儀なくされていた。サイオペルス暦719年、隣国パルティカスがノルマルクに攻め入り国王が崩御。混乱に乗じてノルマルク貴族に命を狙われたユリアスであったが、守り役のパッシェンダール伯爵の助けを得、母の実家であるトイトニア王国に逃れる。

ライトノベル的戦記スキーなので楽しめました。帯の「剣あり、魔法なし!」という部分が男らしくていいですね。舞台としてはフランク王国あたりのヨーロッパのイメージだと思うんですが。
熱い合戦シーンももちろんいいのですが、戦う運命となった幼なじみ同士や渋いおっさんや元気いっぱいのお姫様やお姫様のおてんば振りにとほほと思いながら付き従う双子やらユリウスの心の友の小動物など、私の好きツボをたくさん備えていて満足です。
お姫様強すぎ、とかユリウス若いのに強すぎとかいろいろ思わず突っ込みたい面もありましたが、たぶんここら辺は許容範囲です。連続刊行されているみたいなので続きがどんどん出ておりまして、楽しみです。しかし、最初の1ページを読む限りかなり辛い展開になりそうです。ユリウスは過酷な道を歩んでいくことになりそうですね。
Apr/29/2006 ↑TOP
 


彩国物語 藍より出でて青

雪乃紗衣/由羅カイリ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

会試で茶州で、藍家の”天才(奇才)”龍蓮が引き起こすあれやこれやの騒ぎに巻き込まれる「心の友」の認定を受けた秀麗と月影は……。

彩雲国物語の外伝は、雑誌の載っていた二編+書き下ろしの1.5編を含めた全3.5編。雑誌掲載分に関してはだいぶ加筆されていたような気が(しかも今後に繋がる重要な部分とか)。全体的に本編よりも軽いノリのドタバタが繰り広げられており、楽しかったです。しかし、秀麗と葉医師の会話など少々不穏なものもありましたが……。王様ズキーとしては書き下ろしの0.5の分にもせつないものを感じましたが、だんだん好みの方向性とずれていっているとはいえ本編の続きもそこはかとなく楽しみです。
Apr/21/2006 ↑TOP
 『彩雲国物語 光降る碧の大地


抗いし者たちの系譜 逆襲の魔王

三浦良/KIRIN(イラスト)富士見ファンタジア文庫bk1amazon

魔王を倒した勇者が新しい魔王となり、人間世界と魔物世界が統一されてから四年が経った。皇帝サラに復讐を誓う前魔王ラジャスは、都で行われる武術大会に出場し、復讐を果たす機会を狙うが……。

いきなりラスボスを倒して自分がラスボスに成り代わるというはじまりにこの先どうなるのかと引き込まれました。展開が予想もつかないと言いますか。そして、めちゃくちゃラブですよ、ラブ。そんじょそこらのラブな話よりよほどラブでした。
サラに復讐しようとする前魔王と、前魔王に恋しちゃったために「無様な姿は見せられない」と全力で戦うサラ。この二人の最後の真剣勝負がとても印象に残っています。それ以外にもサラとサラを害そうとする者たちの二重三重に張り巡らされる謀略の応酬はなかなか読み応えがあるのではないでしょうか。最初から最後まで楽しく読むことができましたが、サラのお気に入り侍女ナナ関係は本気でどうかと思ったりした上に明らかに浮いているような気が(計算ずくにしても、あれはちょっと)。
Apr/15/2006 ↑TOP
 


月色光珠 黒士は白花を捧ぐ

岡篠名桜/風都ノリ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

一家の再興を誓い、進士試験の為に上京する弟に付き添い長安にやってきた琳琅。ある夜、傷を負った謎の男を助けた琳琅はとあることから彼の仕事を手伝うことになる。あったこともないはずの男はなぜか琳琅を信頼しているようで……。

直球ストレート目にツボにくるお話でした。ぼけぼけ腹黒弟あたりは変化球気味でしたが。という意味では、手許で少し変化するストライクボールか……(書いていてだんだん意味が分からなくなってきた)
唐代(だったと思う)の長安を舞台にした元気すぎるお嬢さんと謎に満ちた青年の繰り広げるアクションラブ。ヒロインの前向き度と青年のミステリアス度がなかなかによろしいのではないかと思われます。きれいに完結しているといえばそうなのですが、思わせぶりな背景がありそうな割には活躍していない某用心棒等、まだまだいくらでも話は続けられそうなので、もし続きがあるのであれば楽しみです。何カ所か甘いと感じる部分もありますが新人さんにしてはずいぶんと安定した筆運びだなーなどと素人ながらに感心してみたりもしております。今後が楽しみな新人さんかな〜。
Apr/10/2006 ↑TOP
 


カーリー 黄金の尖塔の国とあひると小公女

高殿円/椋本夏夜(イラスト)ファミ通文庫bk1amazon

父親の命で英国領インドのパンダリーコット藩王国にある寄宿制の女学院に通うことになったシャーロットは、神秘的な少女・カーリーと運命的な出会いを果たす。しかし、永遠を誓った二人の絆の前に世界大戦という大きな壁が立ちはだかっていた。

高殿さんの新作は史実(第二次世界大戦くらい)をベースにした世界名作劇場でした。うーん、でも、名作劇場よりはかなりディープな展開になりそうなのですが……。縦巻きロールなライバルとか真夜中のお茶会という展開からポーランド侵攻に繋がっていくとは思いもよりませんでした。
で、端的に言うと非常に先の楽しみなおもしろい物語だと思います。正直に言うと、最初はシャーロットの性格がどうしても好きになれなかったんですが、中盤以降はそれどころじゃなくなっていたり。いろいろと「ええっ!」と思うあの人やこの人の正体や思惑に、驚きの連続でした。続きも楽しみです。
あの組織の単語見た瞬間、某映画の女たらしじゃなくてじゃなくて某マンガの美青年キラーを真っ先に思い浮かべてしまうのは一種の病気だなぁ(笑)
Apr/05/2006 ↑TOP
 


エクリトワールの蝶

生田美話/如月水(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

中級死神の少女ジゼは、100人の魂を冥界に送り届けるのを条件に蘇るという契約を冥界の王と交わしていた。しかし、その性格が災いし、蘇りどころか下級死神への降格の危機にさらされる。最後のチャンスとしてとある課題を与えられたジゼだが……。

とにかく微妙。

魂が蝶になるというあたりはおもしろいな、と思えるし、ストーリー自体はつまらなくもないんだけど(最後の方はそれなりに驚きの展開だった)、それ以上に読みにくくて読みにくくて。100年ほど時代が一気に進んでいたりするせいもありますが、いろいろな世界や時代がごっちゃになっていて、ごった煮感が強くてとりあえずマイナスポイント。主人公が眼鏡かけてたりバカ丁寧な口調だったり(ここは最後まで読むと納得もいきますが)、ドジッ娘とはいいませんがその系統の気配を漂わせていたりとそこらへんも受け付けなかったなぁ……。表紙と帯のアオリからするに逆ハーものかといえばそうでもないし(表紙と帯(のアオリと「お薦め」)で騙せます)。うーん、私には合わなかったです。

で、ゲームのシナリオライターとして活躍されてるとのことでググってみたところ(どんなゲームなのかと気になっただけ)、「生田美和」さんのような気がする……。
Apr/04/2006 ↑TOP
 


伯爵と妖精 涙の秘密を教えて

谷瑞恵/高星麻子(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

スコットランドで休暇を過ごしていたリディアは、過去の妖精伯爵に関する話を聞き、マナーン島へ真実を確かめに向かう。また、ロンドンでは画家のポールが不思議な少女と出会う。エドガーはその少女が関係するという妖精伯爵の先祖が残した遺産をめぐってユリシスと対決することになり……。

毎度のことながら大変楽しませて頂きました。エドガーとリディアの一歩進んで三歩下がるこの関係がいいですな。そして、素のレイブンのつっこみとか落ち込むニコとかトムキンスの一言とか大暴れするロタとか……(いろいろツボにはまったらしい)。さて、今回初めてエドガーを心からかっこいいと思ってしまいました。妖精に関する能力ではユリシスに敵うはずもないエドガーですが、「貴族に生まれた者の義務」に目覚めた彼はかっこいいですよ、うん。でも、それ以外はかなりヘタレてましたけどそれはそれでまた楽し、ということで。
いよいよプリンスが英国に乗り込んでくるということで、物語もだんだん盛り上がってきましたね。あの人の真意はいったいなんなんだー、とかケルピーとかいろいろと気になりまして、続きがとても楽しみです。
Apr/01/2006 ↑TOP
 『伯爵と妖精 取り換えられたプリンセス


大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝

茅田砂胡/沖麻実也(イラスト)C-Novels Fantasiabk1amazon

騎士団対抗の対抗試合で出会ったバルロとナシアス。身分も立場も違う二人は剣を通じて友情をはぐくんでいく。

デル戦の外伝、バルロとナシアスの出会いから前国王崩御の激動の時代を乗り越えるあたりまでがメインで描かれていました。あと、本編の後日談も少々。王様はいつもの通りでしたし、みんな幸せそうでよかったです。
タイトルからしてバルロが主役と思わせつつ、実際のところはナシアスが主役でした。ナシアスの方が5歳も年上だということをこの外伝で実感しましたよ。本編のバルロはあまりにもふてぶてしいですから(笑)。一見するとバルロが優位に立っているように思われますが、実際のところは圧倒的にナシアスの方が立場が上なようで、この微妙な力関係に思わず笑いをかみ殺しそうになりました。
デル戦はやっぱりおもしろいですね〜。また熱が再燃しそうになっています。
Mar/31/2006 ↑TOP
 『デルフィニア戦記