2003年6月の本の感想
薔薇の接吻 〜レマイユの吸血鬼〜
真堂樹/木々
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
国王のお膝元のフォレでは、貴婦人たちが不審な死を遂げるという「吸血鬼事件」で持ちきりだった。この事件を解決しようとする第二王子ジュラールは、かつて王に命じられて吸血鬼退治をしていたという家系のレマイユ家の存在を知る。そして、その一族の末裔レマイユ伯イブ・アントワーヌの居場所を見つけ出し……。
木々さんの絵が実は結構好きでして、気になっていたところで「おもしろい」という評判を聞きあわてて手に取った作品。コバルトでもかなりの冊数を出していらっしゃる作家さんなのですけど、実は初読み(いや、あまりにも冊数多いし……)。根性のひん曲がったイブと、王族らしい「大物っぷり」を発揮するジュラールのかみ合ってるんだかかみ合ってないんだかのコンビネーションがおもしろかった。こういう「コンビ」のお話って好きだな。手元に2冊目も用意しておりますので、張り切って次行ってみようと思います!
盗まれた蜜月(後編) 有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険
橘香いくの/四位広猫
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
砂漠の中でのたれ死にかけていたコラリーは、運良く助けられたはいいものの今度は人買いに売られてしまう。コラリーを探すフェリックスは、コラリーがいると信じて命がけの砂漠越えを敢行する。そして、<シュシナック>は敵の手に落ち生死不明で……。
シリーズの最終巻。フェリックスと<シュシナック>の決着がどうつけられるかが楽しみでして、「そう来るか!」といった気分。やっぱりコラリーは最強です(笑)。最後の最後までフェリックスの毒舌が光っていたなぁ。キレイに終わりすぎてなんだか物足りない気分なんだけど(笑)、大変おもしろかったです。ただ、テランス陛下が好きなので、……、彼の直接の出番がなかったことがかなり残念(テランス陛下についてのフェリックスの言葉には笑わせてもらったけど)
アウトニア王国再興録4 でたまか 驚天動地篇
鷹見一幸/Chiyo
(イラスト)・角川スニーカー文庫【
bk1・
別窓版】
アウトニアは十分の一の戦力という圧倒的不利な条件の中帝国軍と対峙していた。しかし、やはりそこはマイドの「でたまか」戦略によりなんとか切り抜けるしかなくて……。
「そんなんありか!?」と思うような方法で帝国軍を追い払うアウトニア軍。読んでいて少し爽快。しかしながら、「無能な悪役」はステレオタイプの癪に障るやつで、読んでいてムカムカ(作者さん側もそれを狙った描写なのでしょう)。この物語の「いい」キャラに位置する「オトコとオンナ」は全てそれっぽいところ(順当なところ)でおさまりそう、という法則、みたいなのもこの巻ではっきりとわかった……、ような気がする。あ、マリリン姉御は、えーと…(遠い目)。
カーマイン・レッド セトの神民(前後編)
霜島ケイ/古張乃莉
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
情報屋のジャスパーは辺境の惑星タピスで謎の暗殺者たちの襲撃に遭っていた。謎の都アム・ドゥアト(冥界)にその答えがあると言うことを知るジャスパーは、テロリストの少年エイジュとともに都を目指した。
最初は砂漠の惑星を舞台にしたただのアドベンチャーストーリーかなぁ、と思っていたのだけど、間違ってた(そりゃそうだ)。いつの間にか話はかなり壮大になっていき、一気に読み終わっていた。SFははっきり言って苦手で、この話のからくりの部分を一度読んだだけでは理解できなかったという自分が少し悲しかったんだけど……、おもしろかった。ジャスパーとエイジュの信頼関係形成過程に少しホロリ。あとは、途中で二人に合流するチェンが個人的にイチオシ、だ。
砂漠などを舞台とした、失われた謎の文明を巡る攻防系の話は、読んでいてわくわくするので結構好きなジャンル。今回はそれがどんぴしゃで良かったな。
黄金のアイオーニア 青き瞳の姫将軍
藍田真央/凱王安也子
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
自治都市の覇権争いが絶えないクラナ半島。有力都市ティレネのアイオーニアは、姫将軍として戦闘に勝利をもたらしていた。アイオーニアを陥れ、跡継ぎとしての地位を手にれようと暗躍する異母姉ドーリア、ただアイオーニアを慕う異母妹イオニア。アイオーニアは最後まで家族を信じ、愛し続けた
あらすじが書かれへん……。アイオーニアの「恋愛」に焦点を当てるか「家族愛」に焦点を当てるかでずいぶん違った物になるんだけど、私は「家族愛」のほうに焦点を当ててみることに。
最初は買うつもりはなかったのだけど、”姫将軍”などのキーワードに弱い上に「歴史ファンタジー好きにオススメ」とか書かれていたのでふらふらっと。途中少々読みにくいなぁ、と感じてしまった場面もあったんだけど、それは物語のいきおいで十分カバーされていたかな。所々ツッコミを入れてしまったのだけど、良い感じに”王道”で、3姉妹それぞれの違った生き方が良くいかされていておもしろかった。
魔女の結婚 星降る詩はめぐる
谷瑞恵/蓮見桃衣
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ヨセフ修道会の追跡の網の目をくぐり、エレインたちはマティアスの知り合いの貴族の元に身を寄せた。しかし、そこにはなぜか以前エレインに求婚してきた魔術師・ダイルがいて……。
いろいろと謎はとけたけど、同じくらいむむ?と思うことが増えてしまって五十歩百歩の気分。今回は伝説のドイルドなんかが出てきたりして、かなり核心部分に近づいたわけだけど……。過去と現在が交差して、読みながら軽く混乱してみたり忙しかったです(笑)。タイトルからアートの謎がわかるかなぁ、とか期待してみたんですが、反対に思いっきり謎が深まってしまいました(涙)。そして、エレインパパが素敵な感じ。あの親にしてこの娘ありだ……。
天にマのつく雪が舞う!
喬林知/松本テマリ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
カロリア代表として大シマロンで四年に一回行われるという「天下一武道会(略してテンカブ)」に出場することになったユーリ、ヴォルフになぜか村田。知・速の部門はなんとか勝ち抜いたものの最後の技の部分で思わぬ事態に陥って……。
一言感想:「次男〜!!」(←心持ち、フォントサイズは+2位で(笑))。
個人的には上の一行で済ましてしまってもいいくらいの最新刊。これで足りないと言うならもう一言:「ツェリ様、やっぱかっこいいっ」(←心持ち、フォントサイズはピンク色にしておいてください)。うーむ、本当にこの二言でも済ますことができますね。
さて、三男は妙に男前度を上げてきていて、次男派の私でもくらっときそうになるし。そして、いつもどおり本編とは関係のないところで目立つギュンター、ついにグウェンまで巻き込んで長男の男前度が一気に下落中(笑)。アニシナに教えを受けるグレタ、ユーリ、早く帰らないと養い子が大変なことになってしまいますよ……。今回も、留守番組のはちゃめちゃ度が一番心に残ってしまった。あとは、いつもどおりの子ネタの応酬。一番笑ったのはやはり、通常の三倍の速度で航行する「赤い流星号」でしょうかね……。
七姫物語
とある大陸のとある国、そこでは七つ都市がそれぞれ七人の”先王の隠し子”たる姫を擁立し、覇権を争っていた。そのなかで、七人目の姫に選ばれたのは9才の孤児カラスミ。彼女を擁立した軍師のトエと武人のテン、カラスミは彼ら二人と「三人で天下をとる」という約束をした。
エセ日本っぽいところが舞台の、すごく独特の雰囲気に包まれた、不思議な作品。独特な文章運びに、慣れるまで少し違和感を感じていたのだけど。なんやかんやでかなり感想が書きにくい作品で、嫌いかといわれれば”NO”と答え、続きを読むかと言われれば”微妙”と答える、といいますか。クライマックスが、わたし個人としてはイマヒトツ盛り上がりに欠けるというか、「いつの間にクライマックスやねん」という気分だったというかで。あの意味不明な大人(失礼)の元にいても、歪むことなくまっすぐな気質を持ち続けるカラスミと、彼女を影で守っていたヒカゲ君ののんびりとした会話が好き。
テーヌ・フォレーヌ物語 王都の将アレク
藤本ひとみ/清瀬のどか
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
アレクを守るために、テーヌ・フォレーヌの世界との決別を決心したアストライア。しかし、アレクが成人の儀式を迎えることになり、彼女の心中は穏やかなものではなくなった。
すれ違いグランドロマン(笑)。見事なくらいアストライアとアレクの思いがすれ違い、どこまですれ違うのかはらはらしながら読んでいた……。読んでるこっちはすれ違っている、ということを知っているので、二人の思いこみがもどかしかった。そして、女性の妄執が際だった話だったかな?しかし、話の展開はとてもおもしろいのだけど、セリフによる長時間独白はどうにも私には合わなくなってしまったみたいで……、すいません、たぶんあそこ山場のひとつだと思うんだけど、思いっきり読み飛ばしました……。
アタシの先生。
渡瀬桂子/高久尚子
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
大沢江梨はで担任の御崎太一に密かに想いを寄せる多感な女子高生。実は、御崎先生は陰陽師(本人は思いっきり否定)で江梨のお隣さんだというのは二人だけの秘密で……。
女子校教師とその教え子という(禁断の)組み合わせが心をくすぐる(笑)。太一先生が本当にかわいくて(失礼)、こんな先生が高校にいたら良かったのになぁ、とつらつらと考えてしまった……。現代の陰陽師なので、祓う対象もメールなど、現代風味。少し心にグサッとくる場面もあり、ちょっとホロリとしたいときにオススメかも。
ソード・ソウル 〜遙かな白い城の姫〜
青木祐子/尚月地
(イラスト)・集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
フィン公国の公姫レアミカは並み居る求婚者を全て振り、美しい白い城の見える塔ですごすという変わり者の姫。幼い頃に出会った少年と、そこでの不思議な体験が彼女の記憶に鮮やかに残っていた。そして、ある日城を訪れたグラッセ家のアモンは彼女の記憶の中の少年らしく……。
コバルトの新人さんのデビュー文庫。読み切りは同じ世界が舞台(登場人物もかぶってます)の『嘆きの丘』(2003年3月号)で読んでことがあって、そのときから少し気にかかっていたので。丁寧な描写で結構おもしろいんだけど、何というか、華がない?地味?とにかくイマヒトツ乗り切れなかった。あとは、レアミカがこれまたイマヒトツで……(あんまり好きになれないタイプのお姫様だからな。もう一線を越えたらダナティア(@楽園の魔女たち)くらい好きになれるんだけど、何かが足りない)。全体的に、キャラに魅力を感じない、というのが一番の欠点かな……(王子様(仮)も私の王子像(笑)からは微妙に外れているし)。次もでたら、とりあえず読んでみようかなぁ、というのが読後の素直な感想。