2003年1月の本の感想
少年陰陽師 異邦の影を探しだせ
結城光流/あさぎ桜
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
”あの”安倍晴明の孫・昌浩は元服とともに内裏に勤め始める。下っ端の下積みとして修行に明け暮れていたある日、内裏が炎上するという事件勃発。相棒の物の怪・もっくんと共に独自の調査に乗り出す昌浩であるが、背後には巨大な力があるようで…。。
実は、陰陽モノということで敬遠していた(陰陽モノは少し過食気味…)のだけど…、なんてもったいないことをしていたのだろう(笑)。これは、いい感じに少女小説で、がんばる主人公が健気でかわいくて、かっこいいぞ。しかも、小さな恋のメロディーを予感させる2人の出会い付き…。物の怪のもっくんと昌浩の掛け合いもほほえましいし、何より思わず応援したくなるような成長する主人公っていうのがいいな。既刊分、できる限り読んでしまおう。楽しみなシリーズがまたひとつ…。
岐伯春秋 その宿命は星に訊け
北条風奈/櫻ゆり
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
人と神とが同じ地に住む神話の時代、天帝神農氏を中心とし、人々は平和な時を過ごしていた。神農氏に弟子として仕える薬師の岐伯は、その腕を買われ神農氏の弟の治める地に向かうこととなる。そこで生涯の友と出会い、充実した生活を送っていた岐伯だが、運命の歯車は思いがけない方向に進んでいく。
いつでも一生懸命、鈍感男の岐伯とその友達の心温まるエピソードたちがよかった。平和な時代から戦乱の時代へ、そしてその戦乱が収められてからの、岐伯のどうしようもないやるせなさがよく伝わってきた。南と北、どちらも愛する故の板挟み状態の岐伯に思わず涙を催しそうになった。
最初、なんだかよく分からなかったのだけど、チャイニーズファンタジー(中国ものに西王母は必須だろう…)だ〜、と思い読み進めていき、かなり最後の方に元ネタが分かりました。あの有名な「封神演義」の前座のお話になるらしい(←気付くの遅すぎ)。えー、今まで何パターンかの西王母の娘たちを読んでまいりましたが…、実際の所、ここの娘たちはあまり好みじゃなかったよ(汗)。あ、でも翠華は好き。
プレシャス・プラチナ マモノでも平気!
漲月かりの/あんどうよしき&天野翔
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
白い髪と紅い瞳を持つ鬼っ子であるバツは、護衛役の一文字とともにあるものを探していた。ある日、忍び込んだ屋敷でバツは逃げそこね、川に落ちてしまう。川面を流れているバツを助けたのは、伝説の花魁・花王候補の茶々丸だった。
前作より少し笑い度が高いかな。なにぶん、表紙がアレでタイトルが少々コレなもんで読むのを少し躊躇していたんだけど、江戸時代の吉原を舞台としたボーイ・ミーツ・ガールものだった。アレかもしれないから読むのをためらっている人、その必要はありません(話のネタ的にそういうところはちょこちょこあるけど)。茶々丸がパワフルな前向きな強い女の子で、それに押されまくっているバツがおもしろかった。舞台が舞台だけに、女の人がみんな生き生きしていて、読んでいて爽快。<→でもって、暴れん坊将軍(の息子)ネタが…、最後の最後まで気付かなかったよ…。←>
ホーンテッドスクール 〜高原御祓事務所始末記〜
朝香祥/穂波ゆきね
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
曰く付きの土地に校舎を構える賀陽学院が高原御祓事務所にとある依頼を持ってきた。報酬が真悟を学園の特待生として迎えることと聞いて、嬉々として依頼に立ち向かう真悟であるが、透はどこか納得いかないものを感じ…。
怪奇現象ものといったらこれ、の学園もの中編二本。真悟の高校性生活がはじまる。いつも明るくて人なつっこい真悟が見せる一瞬の影の部分、というものが気になる…。不思議な暖かさに包まれているこのお話、透の一生懸命な優しさがいいなぁ。和むわ。
最後の最後はかなり気になる終わり方だが(あの、最後の1ページがなければ、これほどまでに続きが読みたいとは思わないだろう…、なくても続きは読みたいだろうけど)、どうも商業の方で続きはでていないようなので残念な限り。
楽園の魔女たち 七日間だけの恋人
樹川さとみ/むっちりむうにい
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
一見美少年の少女ファリスは、瓜二つの弟の奸計にはまりアジェンダ島のアルフォイ家を弔問することになった。そこで彼女は、当主フレイと婚約することになってしまう。
楽魔女の初期(三冊目)の名作。楽魔女の中では今でも一番好きな話。某所で名前を見て、急に読み直したくなったもので。何がいいって、楽魔女の中で一番ラブ。ラブロマンス(…、とはちょっと違うかも…)。いつもかっこいいファリスなんだけど、物語の性格上(笑)きちんと女の子をしているという貴重な本作。なによりも、フレイがかっこいい…。本当に。ファリスの鈍感さが最後の最後まで(そういや、今もたぶん現在進行形)で続いていて、フレイが報われる日が来るのを待っている人も多いはず。みんなで応援します?
セカンドステップ 〜高原御祓事務所始末記〜
朝香祥/穂波ゆきね
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
南雲家の除霊に成功した透と真悟であるが、力の使いすぎで真悟は入院してしまう。その病院は最近、原因不明の怪奇現象に悩まされていた。暇をもてあましていた真悟はその真相解明に乗り出し…。
タイトルどおりの2冊目。病院での除霊のお話と、透の同級生の女性の依頼での除霊のお話と、偶然銀行強盗に巻き込まれてしまった透がかっこいいお話の三本立て。この紹介からも分るように、私は三本目の銀行強盗ものが一番気に入ったようだ…。運悪く銀行強盗に巻き込まれるという話は、(コバルトだけでも)何本か読んできたけど、今回のこれはなかなかヒット。いや、真悟の猫かぶりはおもしろかったし、何より透さんがかっこいいんだ(笑)…。市原さんのある意味驚くべき能力も再確認。おもしろかった。
尾のない蠍 遠征王と流浪の公子
高殿円/麻々原絵里衣
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
歴史だけが取り柄の弱小国ボッカサリアの少年王の戴冠式に出席したオリエは、その場で彼に結婚を申し込まれてしまう。そんなオリエはボッカサリアでかつての夫、ホークランドの将軍であるミルザに再会する。
前作から2年後の遠征王シリーズのラストに向けた巻。どきどきはらはらの展開。最初はオリエとナリス、ミルザにばかり注目してしまったけど、再読してみると実はボッカサリアの攻防のあたりは結構燃える所だった。ナリスがどうしてあそこまでオリエを愛し続けるのか、ミルザが失ったものや今から得ようとしているもの、ゲルトルードの思い、濃縮されて濃いお話だった。4月に出る最終巻、果たしてオリエはどんな決断をするんだろうか?<→ミルザの奥さん、最後すごいことなりそうだし(ドラゴンの角でそこら辺の作者さんの容赦なさは確認済み)。ナリスが捧げたものが何なのか気になるし。エヴァリオットは活躍の場があるのか(今回、忘れ去られています)…、気になるし。さっさと最後が読みたい←>
ただ、ひとつ心残りがあるとすれば…、コック軍団がイマイチ不発だったこと(笑)。あのシリアスさならこれくらいでもいっぱいいっぱいなんだろうけどなぁ(汗)。いっそのこと、ニコールアニキとコック軍団だけの物語を(←誰も読みたくない)。<
いつかマのつく夕暮れに!
喬林知/松本テマリ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
親友の村田健とともに、魔族に敵対するシマロンに捕まってしまった魔王の渋谷有利。2人はシマロン本国に輸送されることになるが、シマロン内部でも争いの種は絶えないようで…。
前回、有利は捕まってしまうわ、ギュンターは氷漬けになるわ、次男は行方知れずになるわ大変なことになっていた「マ」シリーズの最新刊。お手軽異世界ファンタジーだったはずなのに、パンドラの箱(しかも複数)まで現れ出してシリアスモードに突入。今回は三男がかっこよかったな…。さて、三男よりも私の心を掴んで離さないのは紅い悪魔ことマッドマジカリストのアニシナさん。妙に出番が多くて、しかもはちゃめちゃでかっこよくて、すごく楽しかった。毒女アニシナ…、すごくピッタリ(笑)。有利の心の内もなかなか見所があったと思うけど、それよりも村田君の謎が気になる。本当に何者なんでしょうかねぇ。
明日香幻想 葛葉の章 / 朝露の章
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
大海人王子が明日香の宮に出仕するようになって半年。品治は側仕えの任を解かれ、父親の補佐役として湯沐の地にいた。ある日、父親の使いで大海人の壬生の地を尋ねた品治は、草薙の剣が何者かに盗まれたことを知る。葛城の王子と大海人の王子と共に神器探しを始める品治だが、大海人はなぜか品治を自分から遠ざけようとし…。
草薙の剣盗難事件の前後編。これ読んでまずはじめに思ったのは、「大海人のバカ〜」(←エコー付きでお願いします)。主要登場人物の皆さんに連発されてたけど、読みながら一緒に同意すること数限りなし。葛城の大海人に対する不器用な思いやりや、ブチ切れ品治など、見所はたくさん。
東方ウィッチクラフト −人の望みの喜びを−
竹岡葉月/飯田晴子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
原因不明の眠りについてしまった柾季に引きずられるように、一子も眠りについてしまう。一方、宇卵は柾季を傷つけた犯人見つけ出そうと、ひかると共に霊視をこころみる。
最終巻。前がアクマな終わり方だっただけに、最初から怒濤な展開…、かな、と思っていたらいきなりある意味怒濤なワンダーランド。いったい、あそこはどこなんだ!!(注:物語中できちんと解明されている)柾季と一子がそれぞれ過去と決別をし、新たな人生を歩んでいこうとする姿に少し感動した。さらりと流してしまったのだけど、”コバルト”的に非常に重要なシーンも含まれている。そこの所は、是非ともじっくり読んでほしい…。というか、もう一回読んだ(アホや…)。すっきり納得のいくエンディングで、最後までやっぱりハイテンションなコメディーということも忘れず。とにかく、きれいにまとまっていて、お手軽に読める良作だと思う。
フェイク・スイーパー 〜高原御祓事務所始末記〜
朝香祥/穂波ゆきね
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
大学生の高原透が所長を務める御祓事務所が閉鎖のピンチに陥っていた。除霊能力がないのに、事務所を続けていくことに悩む彼の前に、異母弟だと名乗る矢野真悟が現れる。真悟は透と違い、天性の除霊能力を有していたのだが…。
掲示板にておすすめされた作品。ひとりでぐるぐるぐるぐると悩みまくる透さんが素敵だ(笑)。すちゃらかぱーっぽい性格だけど、芯はしっかりしている真悟とのコンビネーションがいいなぁ。御祓事務所の存亡を舞台としたちょっとした家族愛の話、?2人ともお互いのことを大事にしているんだなぁ、ってことが伝わってきて、とてもよい話。兄弟愛ってやっぱりいいいわ(注:ヨコシマな意味合いは含んでいないもの限定)。