2003年4月の本の感想
王女アストライア テーヌ・フォレーヌ物語
藤本ひとみ/清瀬のどか
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-175511-5【
bk1・
別窓版】
一生愛することと結ばれることはない」という呪いをかけられた上に第三世界である人間界にとばされてしまった。そこでアストライアはアレクに助けられ、彼を守護することを決意する。
藤本ひとみ、といえばむかーし昔に友達に何冊か借りてすっかりはまりきった覚えがあるのだけど……、久しぶりでした。少し癖のある(ようにわたしには思われる)文章にすこし戸惑いつつも(特に、長々としたセリフ部分)無事読了。やっぱり、グランドロマンっぽくておもしろい。アストライアがかっこよくて強くて、健気なわたし好みの女の子というところがポイント高し。同性異性を問わずもてまくるアレク、わたしにゃイマイチ良さが分かりませんが、この際、かっこいいので何でもいいです(笑)
でたまか アウトニア王国復興録3 天下大乱篇
鷹見一幸/chiyoko
(イラスト)・角川スニーカー文庫・ISBN4-04-425706-X【
bk1・
別窓版】
マガザン帝国とアウトニアの戦争が始まった。相変わらずビンボーなすっかりマイド色に染まったアウトニアは、あの手この手のせこい手でなんとか持ちこたえていた。
本気で最終巻と思っていたので、全く最終巻らしくないことに驚きつつも「ま、でたまかだしあり得るかな?」と思って読んでいたらあり得なかった(笑)。いつもどおりすばらしい場面で終わってくれているところが憎い!今回のツボはエデッサの三交代国会でしょうかね。バナナひとつであそこまで白熱した議論ができるという国会ってすばらしいじゃないですか。
魔女の結婚 熱き血の宝石(ジェンマ)
谷瑞恵/蓮見桃衣
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600232-9【
bk1・
別窓版】
ヨセフ修道会に追われているエレインたちは、ランケという男に助けられる。マティアスに仕事を依頼するランケだが、マティアスたちは隙を見てランケの屋敷から逃げ出した。しかし、そのときにマティアスが命に関わる”傷”を負ってしまい……。
二ヶ月近くも感想を書くのをすっかり忘れていました。何回も読み直したのに、何でだろうなぁ(……、読み直しすぎて満足してしまったからかも)。エレイン、マティアス、そしてステファンの三角関係が新しい局面を迎えた模様。離れたからこそ、必要としていたということがわかり、恋していたとわかるという何ともすばらしい展開でございました。ああ、こういうお話大好き(笑)。エレインたちのことは一応はっきりしたので、もやもや感は消えたのだけど、アートの正体がやはり謎なまま。本当に、彼は一体何者なんでしょうねぇ。
ルーク&レイリア 金の瞳の女神 / アルテナの少女
葉山透/睦月れい
(イラスト)・富士見ミステリー文庫【
bk1・
別窓版】
古代遺跡や伝説の解明を生業とする凄腕ハンターだったルークは、引退して大教会の修復メンバーの一員として地味な毎日を送っていた。そんな彼の元に現れたのは絶世の美女レイリア。ルークに復帰を促す彼女は、教会にある宝物を頂戴することにルークを巻き込もうとする。
二冊あったからなんとなーく二冊確保して、暇に任せて読もうと思っていたらいつの間にか読了してしまったという二冊。ミステリー文庫にふさわしく、結構ミステリーしています。謎が徐々に解きほぐされている過程に、びっくりするわけでもないけれど、「おぉ」と感心してしまった。個人的には、一冊目の謎解きの方が好きだな(=ゲストキャラの法王がどうにも気に入ってしまった・笑。でも、一冊目の裏表紙あとがきには明らかな間違いが……。アレって殺人事件じゃなくして殺人未遂じゃないかな?←重箱の隅)。レイリアのちゃっかりとしたたくましい性格におもわず惚れ込んでしまいそう(笑)。
盗まれた蜜月(前編) 有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険
橘香いくの/四位広猫
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600219-1【
bk1・
別窓版】
ようやくフェリックスとの結婚にこぎ着けたコラリー。しかし、コラリーは結婚式前夜に怪盗<シュシナック>にアルカイスに連れ去られてしまう。フェリックスはコラリーを追ってボナバンと共にアルカイスに潜入。そして、アルカイスでは反ブローデル勢力内部での抗争が勃発して……。
コラフェリ、遂にクライマックス。初っ端からコラリーは誘拐されるわ、<シュシナック>は妙にかっこいいわで盛り上がりまくり(笑)。後編ではついにフェリックスと<シュシナック>の最終対決が見られるのかな?とにかく、後編が待ち遠しい幕切れ。それにしても、フェリックスはダイナマイトを何に使うんだろう……。
洪水前夜 あふるるみずのよせぬまに
雁野航/川添真理子
(イラスト)・新書館ウィングス文庫・ISBN4-403-54064-3【
bk1・
別窓版】
永遠の命を持つ天使の子・勇士アダイアトゥム(アダ)はバビロニアのウルが大洪水がやってくることを予期していた。アダの親友の息子であるトバルカインは、家族を殺されたことで、アダを執拗に追い続ける。
あらすじ、かけないじゃないですか(ヘタに書くとネタバレするから)……。古代バビロニア(メソポタミア地方)を舞台とするという、非常に珍しい(ように思われる)新人さんのデビュー文庫。裏表紙のあらすじ紹介に惹かれて手に取ってみたのだけど、よかった。永遠の命をもつために持つ絶望や苦しみ、天使の血を半分だけしか引かないゆえに味わう孤独なんかが切ないくらいに伝わってきた。グロイ描写もありますが、そこら辺は軽く流すことでしのげますし、全体的にはわたし好み(?)の「ろまんてぃっくらぶすとーりー」。これからも要チェックな新人さんの登場です。
ローゼンクロイツ 緋色の枢機卿
志麻友紀/さいとうちほ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-445108-7【
bk1・
別窓版】
ファーレンで魔女裁判にかかっていた老婆が、ハノーヴァー夫人とその娘セシルが魔女だと証言した。その証言の真偽を追求すべく、アキテーヌに枢機卿のフェルナンドがやってくる。フェルナンドはセシルの秘密を握っているとオスカーを脅迫し……。
今回は一話完結型。前回と違いオスカーの活躍が光りましたね。黒の宰相、ちょっと本領発揮といったところかな。しかしながら、個人的にはセシルの母親・マリーの登場が多かったのがうれしかった(このシリーズで一番好きな登場人物だから・笑)。話のからくりは、ヘタをすると読み始めてすぐに分かってしまうのだけど、それを無視してもおもしろい。だって、この本に求めているのはサスペンス性じゃなくてベタ甘だから……。そういう意味では、今回も十分安心して読むことのできる内容でした。(以下、少々失礼)で、やっぱりセシルがオンナノコでないことに一抹の不満が……。オンナノコだったら、もっと楽しいのになぁ。あとは、既存の有名人物や地名をそのまま(or多少の変形を加えて)の名前で使用している点に少し違和感。せっかくの架空世界なんだから、もっと独創性あった方が個性が出ていいと思うんだけどなぁ。
運命よ、その血杯を仰げ 遠征王と隻腕の銀騎士
高殿円/麻々原絵里衣
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-445007-2【
bk1・
別窓版】
オリエが行方をくらまし、パルメニアではゲルトルードとナリスがオリエ奪回に向けて動いていた。一方、ホークランドでは皇太子の訃報がもたらされ……。
前巻ですごい”ヒキ”をしていた遠征王シリーズの最終巻。全てがあるべき姿におさまるべくしておさまった、すごくいいお話だと思った。私が気になっていたところはだいたいが決着がついていたし、いろいろな恋模様にも一段落ついたよう。実は、この巻で密かに期待しいたのが、ミルザの新旧両妻対決(オリエ対フランシア)だったのだけど、フランシアが思ったよりもかっこよくて、見直してしまった。女の意地、というか、強さを見せつけられた。
読み終わってすごく満足。しかし、かなり詰め込んだという印象を受けてしまう。願わくば、あと一巻分くらい余計にスペースがあれば良かったんだけど……。と、色々ありますが、ナリス好きとしては、今回は全体的にナリスがかっこよかったのですごくうれしかった。
ワイルド・カード 追憶の異邦人
佐藤ちあき/伊沢嘉仁
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600248-5【
bk1・
別窓版】
ジンとキーフの前にかつての兄弟チェコフが現れる。そのことに不快感をあらわにしつつも、チェコフの思惑に乗る形で二人は同盟祝祭に出席し、そこで二人は人質乗っ取り事件に巻き込まれる。そして、テロリストのひとりの目的は、ジンを殺すことだけだった。
ひとまず、思いの丈を叫ばしてください。「ウナ、あなたはわたしの心のオアシスだ!!」
気を取り直して感想。ジンの過去と、その過去から命を狙うアメリア。何というか、アメリアの内心がただひたすら切なかった。それでもって、新たに現れた六本指の兄弟、六本指ブラザーズにはまともな神経をしたやつはいないんか、というくらい変なやつ揃いだ……。あまりにも内容が暗くて、ウナのかわいさが少しかすんでしまったんだけど、やっぱり四歳児は最強。今回もかわいかったなぁ。新キャラのサーシャも今後の登場に期待。