2005年6月の本の感想
運命は剣を差し出す3 バンダル・アード=ケナード
駒崎優/ひたき(イラスト)C-Novels Fantasia【bk1・amazon】
ようやく傭兵部隊の本隊と合流することができた隊長のジア・シャリースと雇い主のヴァルベイド。ヴァルベイドだけでなくシャリースも賞金首として狙われるという状況で、なんとかエレインズに向かおうとする一行だが……。
おもしろかったー!とりあえずエルディルちゃん萌えという感じでひとつよろしくお願いします。
1巻・2巻のラストからどう解決していくんだと思えば、結構姑息な手を使うシャリースが素敵。少数精鋭の秘密はここにあったらしい(笑)。今回は前回から続々と集結してきた傭兵隊の面々がそれぞれの得意分野を生かして活躍していくところがおもしろかった!個性派揃いでおもしろい傭兵隊だ……。他の脇役達もいい感じな人がたくさんいて、いい味出してます。ヴァルベイドの方は意外というよりもなるほどねってな感想なんですが、シャリースの方は「やられたっ!」の一言に尽きました。ヴァルベイドと一緒に口をあんぐり開けたい気分です。タイトルの意味が明かされたときは少々ぞくっと(武者震いみたいなの)してしまいました
というわけで、かなりお気に入りのこのシリーズ(駒崎作品の中で一番好きかな)、続編がとっても楽しみです。女性陣の潤いは皆無なのですが(潤い分はエルディルちゃんが一手に担ってますし、個人的にはそれで十分だ)おっさんたちがかっこいいのでおすすめ!
霧の日にはラノンが視える 3
縞田理理/ねぎしきょうこ(イラスト)新書館ウィングス文庫【bk1・amazon】
同盟の年次総会に突如現れて盟主ランダルへの不満をあおる魔術師フィアカラはラノンへの道を開けると妖精達を煽り、同盟の乗っ取りを謀った。一方ラムジーの故郷のクリップフォードでは妖精騒ぎが起こっていた。【ミソサザイの歌】
おもしろいー。おもしろいです。
2巻でいかにも悪役のフィアカラさんが今後どんな悪役っぷりを発揮してくれるのかと思えば、うむ、見事な悪役っぷり。服装や言動がこれまたツボなほど悪役でちょっとおもしろいですよ。見事にフィアカラの思惑通りに進んでいって(妖精は単純だなー、でもそこが憎めなくてかわいい)絶体絶命のジャックたち。仲間がそろってさあ反撃というところで次に続くのでどんなラストを迎えるのか楽しみです。
ジャックとカディルがロンドンにやってきたばかりの日々を描いた【この街にて】は思わずほろりとしてしまう物語でした。……、この話をよんでまたレノックスにはまってしまいそうになりました……。
クロス〜月影の譜面〜
毛利志生子/増田恵(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
姉妹同然に育ってきた従姉妹の真弥が突然蒸発して一年。飛鳥の元には真弥から吸血鬼であるイギリスのハーディ侯爵との結婚式への招待状が届く。なんとか家から抜け出して真弥に真相を尋ねたい飛鳥は香港に住むという吸血鬼退治の達人であるレイの元を訪ねる。
うーん、うーん、なんといえばいいのか。えーと、本当に「微妙」という言葉がしっくりくるかと。つまらない訳じゃないんです。どちらかといわなくてもおもしろい話でした。しかし、いろいろと消化不良な気が……。シリーズものの一冊目ならこれでもいいかと思うのですが、どうやらいろいろ調べた限り一冊読みきりものらしいので消化不良。
真弥サイドから話を読んでみたいなー、とか(真弥にめろめろなハーディ伯爵とのラブが読みたい)、飛鳥とシンが絡むようであんまり絡んでなかったのでもっと二人の物語を読んでみたいな、とか(結構ツボですよ、この二人の関係。飛鳥の『フワル』とシンの『ダムピール』、なんだか"I can't stop"ってなかんじがとっても好み)。
The Beans vol.5 その1
角川ビーンズ文庫編集部【bk1・amazon】
マ王奥。 喬林知/松本テマリ
(イラスト)
グレタが出演する学芸会に三男とともに一緒に参加することになったユーリは鬼門のとある出し物をすることに……
美しき家族愛とか、ツェリ様の残したやっかいな遺産とかの話。部屋の隅で兄弟会議をする次男と三男に笑いました。
しかし、今回の元ネタようわからんかったからおもしろさ半分か……。やっぱり時事ネタは危険と隣り合わせだなー
少年陰陽師 百鬼夜行の蠢く場所は 結城光流/あさぎ桜
(イラスト)
敏次とともに、藤原行成に届けられた呪詛の始末をしに行くことになった昌浩は……
昌浩のおにいちゃんが陰でちょっとがんばりながらもやっぱり最後のしわ寄せは昌浩にくる話。もっくんの敏次に対するからみ方は昌浩をとられた嫉妬だと思います。
マスケティア・ルージュ 三十一回目の決闘 志麻友紀/さいとうちほ
(イラスト)
三十回の決闘を負けなしでこなしているリヴィエールの三十一回目の決闘やいかに。
さまざまな女の人と浮き名を流している割には……、のリヴィエールでした。悪役クロードがかわいそうになる幕切れでしたね。
正しいパルメニア史のススメ 高殿円/椋本夏夜
(イラスト)
王位を継ぎたくないがために、過去の歴史からあれやこれやの傾向と対策を練ろうとする三つ子の王子様の秘密会議。
アルとマウりんのところの三つ子ちゃんが独特な視点(主に長男と三男)でパルメニアの歴代王を大解剖していきます。オリエならやりそうだなー、とかフランの鉄腕が……、とか、ミルドレッド……、とかパルメニアファンからすればいろいろ楽しい短編でした
(信者補正が入ってます)。
The Beans vol.5 その2
角川ビーンズ文庫編集部【bk1・amazon】
彩雲国物語 初恋成就大奔走! 雪乃紗衣/由羅カイリ
(イラスト)
茶州の秋祭りに合わせてあれやこれやの恋模様。
彩雲国最強の人といえば英姫おばあちゃんですね……。いやはや全く。いろんな人の恋愛が進んだり、後退したりでした。しかし、ただの短編と思って侮ってはなりません。今度の展開に向けて重要な伏線が、
って、こんな雑誌の短編でそんな大事なもんちらつかせていいんかいと思わなくもなかったり。
スカーレット・クロス 月彩の約束 瑞山いつき/橘水樹・櫻林子
(イラスト)
ギブの父母の出会いのお話。
おもしろかったです。あの母親(ユリア)にしてこの子(ギブ神父)ありだなーと思わず納得してしまうお話でした。お母さんなにげに最強でかわいい。二人の物語、もっと読みたいと思いました。
ザ・スリーピング・ワールド 龍の海 喜多みどり/凱王安也子
(イラスト)
国交を樹立するためにシオロにアルマリノの使者がやってくる。使者の中にはシオロの王女クレシャナに縁の深いウルベルフもいた。
『
龍の王女』のラストから直につながる後日談。ルーファとウルベルフの腹のさぐり合いが結構おもしろいです。結局、二人ともクレシャナが大好きで、ルーファがウルベルフに絡んでいるだけって気もしなくない。”龍シリーズ”とありますが、シリーズ化するのかな……?結構好きなので楽しみかも。
アダルシャンの花嫁 てのひらの記憶 雨川恵/桃季さえ
(イラスト)
弟(アレク)の勘違いに方向違いの兄(ユーゼリクス)の思いやり。
幼い頃の二人の心温まる物語。兄ちゃんは弟思いだなー。かなり不器用ですが。
ユスティニアが今回もめちゃくちゃかわいかったー。
新人さんのおためし三本も読んでみた。
シェオル・レジーナ 村田栞/左近堂絵里(イラスト)
セクシー路線っ?しかしヒロインの尼僧さんは型破りっぽいですね。勢いがありそうな雰囲気です。
花に降る千の翼 月本ナシオ/増田恵(イラスト)
ヒロインは元気でけなげ系だと見た。元気な王女様とその護衛役の少年がいい感じだ。
個人的に一番楽しみやもしれん。
オペラ・エテルニタ 世界は永遠を歌う 栗本ちひろ/THORES柴本(イラスト)
思ったより結構軽かったような……。それにしても主人公、体が弱い(笑)。いろいろと世界に謎がありそうな。しかし、一歩間違えれば私の苦手な方向に行きそうな予感が……。ここは一つ暗殺者の少女とやらにがんばって頂かないと。
蛇と水と梔子の花
足塚鰯/田久ようこ(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
妖猫一家鳥越家六姉妹の三女・三江に縁談が持ち込まれた。三江が大好きな六女・六姫はこの縁談に大反対。縁談を破談に追いやろうと鳥越家にやってきた見合い相手に嫌がらせを開始する。【蛇と水と梔子の花】
表題作・三女の見合いと六女の話に加えて、書き下ろしの長女の見合い話(【白猫は翼の下で素直になる】)の二話構成の妖猫姉妹の見合い物語です。妖とはいってもほのぼのーとした少女小説万歳なお話でして、読んでてほわほわと幸せになれる雰囲気の話だと思います。
長女物語の方がお気に入り。「見合い相手との出会いは最悪で、第一印象最悪だったのに……」という王道展開がこれまたよろしいですなー。失礼ながらラスト近くの鳥がかわいかったです。
このような雰囲気のお話は大好きなので、次回作が楽しみ。
マスケティア・ルージュ 白の王妃
志麻友紀/さいとうちほ(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
王妃の依頼でとある秘密文書を回収することになったジュリアとユーグたち四銃士一行。宿敵であるクロードもアルフォンソ司祭の依頼で同じものを取りに向かっているらしく、道中鉢合わせしてしまう。
元気な女の子はいいなー、いやしかしむかうとこ敵なしすぎてちょっとおもしろくないぞ(笑)という展開の第二巻です。ジュリアの出生の秘密(しかし、読者には一巻目からバレバレ)が今後どういう関わっているのかが楽しみです。王妃様はかっこいいですねー、王様が多少へたれでも国は安泰そうです。オルテス戦役とそれぞれの登場人物の因縁がどなっているのかもちょっと気になってみたり。
文章は多少読みにくいんですが(要所要所でむむっと思ってしまうし、流れはつぎはぎっぽい……?)、勢いで読ませてしまうタイプかなー。
霧の日にはラノンが視える 2
縞田理理/ねぎしきょうこ(イラスト)新書館ウィングス文庫【bk1・amazon】
「在外ラノン人同盟」の準会員としてラムジーは同盟の経営する花屋で働くこととなった。働きだして数日もたたないうちに、母体会社(葬式屋)で遺体が盗まれるという怪事件が起こり、ラムジーはレノックスとともに遺体探しをすることになる。【妖精たちの午後】
やっぱりいいですねー。おもしろいです。いつもとは違う意味でむふむふと笑いながら読んでいました(←ただの怪しい人)。
この巻でレノックス株が急上昇。もとから面倒見のいいアニキだなー、と思っていたんですが、いや、もうなんだかいいですよ、彼。あとは1巻で勝手にエールを送っていたアグネスがもうかわいくて……。2話目の『ネッシーと≪風の魔女≫』とサブタイトルになるくらい活躍していてうれしくてたまりませんでした。風の魔女さんもなんだかかっこよくて好きだな。女の子がかわいくて活躍する話は大好きです。
嫌な感じの敵役も登場し、なにやら大事件に発展しそうな予兆を見せております。次も楽しみです。
しかし、この話はとてもロンドンに行きたくなるので大変体に悪い作りになっていますね(笑)。と、イギリス好きならそれだけで読んで損はないシリーズかと。
あー、ロンドンに行きたい。
永遠はわが王のために ミゼリコルドの聖杖
高殿円/椋本夏夜(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
反体制レジスタンスのリーダーとして国王を演じるキースと対峙したアルフォンス。そこで目にしたのはもっとも信頼するマウリシオが自分を認識せず、キースを王として敬う姿だった。我を忘れて力を解放するアルフォンスに対してマウリシオは……。一方、現国王が偽物であるという情報を手に入れたベロアはサファロニア軍をローランドに向かわせる計画を実行しようとする。
デビュー作『マグダミリア』の改稿版後編で完結編(後日談編『
エヴァリオットの剣 我が王に告ぐ』もありますが)。
やっぱりこの話大好きだ。成長ものとしても、恋愛もの(年の差主従ラブですよっ!)としても楽しむことができる物語だと思います。もうこれ以上にないくらいラブくて読んでてはずかしいのがうれしかったです。もう、マウリシオがアルフォンスしかみえてなくて……。
アルとマウリシオは言うに及ばず、ジャスターとコンスタンシアの切ない物語も光っていたかな。前読んだときよりもこの二人の関係の切なさにぐっとくるものがありました。
切ないと言えばおまけの短編は別の意味で切なかったです。エミリオが哀れで哀れで……。いろんな人のその後がかいま見られる短編で、とってもうれしいおまけですね。そしてついでにオリガロットたち初代の物語が大変読みたくなるような加筆部分が恨めしいです(賛同者募集中←半ば本気)。
伯爵と妖精 恋人は幽霊(ゴースト)
谷瑞恵/高星麻子(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
プリンスの側近中の側近、ユリシスが巡らせた罠だと知りつつも、怪しげな降霊会に参加したエドガー。首尾よ≪幽霊の婚約者≫候補に選ばれたエドガーだったが、その幽霊が乗り移った相手は……。
やっぱりおもしろいー。おなかいっぱいです。
今回はついにプリンスとの対決の幕開けとのことで、いつも以上に緊張感のある展開だったのと同時に、状況が状況だけに(幽霊に体を乗っ取られてはいるものの、意識はあるリディア)いつも以上にエドガーの口説き文句が冴え渡っていましたね。
いつもなら「3歩進んで2.8歩下がる」といった状態のエドガーとリディアですが、今回はきちんと1歩以上前進している模様です。リディアはあんまり認めたくないみたいですが(笑)。
ユリシスとの因縁はまだまだ続きそうなので、この対決も楽しみです。エドガーとリディアの関係も気になります。ニコはニコでかわいい&おもしろいし、レイブンとエドガーのコントもレイブンが本気なだけに毎回おもしろい。続きが楽しみだ!
歌姫(ロジェル)禁じられた歌
桃井あん/麻生真由(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
「神様の子」として歌を通して奇跡を起こす力を持つ<歌姫>。
新人の<冬の歌姫>ユリアは着任早々<高位の歌姫>スイと組み、人が凍るという事件を解決するために現地に向かう。
一言で言うと「マリみてをファンタジー世界に移して過去の自分と乗り越える」話のような気がしました。いや、だってスイさんがどうしても聖様にみえてしょうがなくて……。
おもしろくないことはないけど、何かもう少し足りないなーと感じてしまうのも事実。重たい割にはさらっとした展開&文章でしたからね。事件自体は「どうなるのかな」とちょっと楽しみだった部分はありますが、せっかくの「歌」のシーンがあまり印象的に感じられなかったのがもったいなかったかも。