2005年5月の本の感想



玉響―たまゆら― 二

時海結以/増田恵(イラスト)富士見ミステリー文庫【bk1amazon

ミコモの郷にやってきた旅人がマユラたちに語った物語によってマユラはイメタテの過去を知る。それはマユラとイメタテを亡き者にしようとするヤマトの陰謀の発端で……。

後半がラブかったですね、とりあえず。生身で会えないという制約+男の方が昔にこだわりを持っているというダブルパンチによりかなりもどかしい状況になっておりますが、それもラブを盛り上げる要素として楽しめるのではないかと。
さて、内容としてはいろいろとややこしいことが。ヒナクモさんが今後どう動くかということとか、当面の強敵っぽい人とか。今後の動向が非常に気になる展開となっておりました。しかし、いろんな術とか道具とかが便利過ぎて少々微妙……。
以下、独り言。業多姫の時から感じていた「説明臭さ」が少々気になってしまいました。一気に読み進めるのがつらいんですよね……。おもしろいとえばおもしろいんですが、長時間読み進めていくの辛い。いろいろととツボなことは間違いないんだけど、おもしろいんだけど、次も読めるかな……。
May/30/2005 ↑TOP
 『玉響―たまゆら―


銃姫5 Nothing or All return

高殿円/エナミカツミ(イラスト)MF文庫J【bk1amazon

「蜜蜂の館」からティモシーとともに戦場の真ん中に飛ばされたセドリックは右も左もわからない状況で生き延びるための手段を模索した。一方、アンはプルートから”プルート”の語る真実を知り、自ら彼ととも敵地に赴くことを決意する。

おんなのひとってこわい。

とりあえず読後の感想はこれで。容赦のない展開にそこまでやるかと思いつつもずんずん読み進めておりました。いつも通りちょこっと心休まる場面はあったのですが(レースが作る友達の輪とか……)。
エルの正体については人間ではないとは思ってたんですがまさかなー、想像以上。しかしセドリックに執着する理由がよくわからないのでそこら辺がどうなっているのか純粋に気になります。次はエルが主役らしいのでそのあたり含めて諸々楽しみにしています。
前回ただのやな奴だったティモシーがかっこよかったような気がします。おかしいです。執事とセットでかっこよさ倍増。あー、うららかな日差しの中で午後のお茶がしたくなってきた。
May/27/2005 ↑TOP
 『銃姫3 Two and is One


霧の日にはラノンが視える 1

縞田理理/ねぎしきょうこ(イラスト)新書館ウィングス文庫【bk1amazon

「7番目の子供には呪いがかかっている」―7番目の子供であるラムジーはその呪いを解くために、同じ7番目の子供であった叔父の残した手がかりをもとにスコットランドの田舎からロンドンにやってきた。慣れないロンドンで街の不良に絡まれていたところを通りすがりの青年―ジャック―に助けらたラムジーはそのままジャックの世話になることになる。「ラノン」からやってきたというジャックはなにやら込み入った事情を抱え込んでいるようで……。

これはおもしろいっ!メインに女の子がいないっぽいので今まで忌避していたんですが、何でそんなもったいないことしてたんだろう。なんというか、地道におもしろいんです。現代ロンドンを舞台に「ラノン」からやってきた人たちが織りなす物語の雰囲気も好きですし、ラムジーの一生懸命さが素敵に光っています。なんやかんやでいい人のレノックスさんもいい感じだー。
そして、アグネス。少女小説分は2話目に登場するアグネスで十分補給できます。アグネス好きだー、がんばれアグネス。アグネスのがんばりにこれからも期待していきたいところです……、って、次からもアグネス出てきますよね?(希望)
既刊分全四巻とのことで、楽しみです。
May/24/2005 ↑TOP
 


彩雲国物語 朱に交われば紅

雪乃紗衣/由羅カイリ(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1amazon

秀麗が風邪でダウン。あの人やこの人のお見舞い合戦が開始される。【お見舞い戦線異状あり】

あー、もうバカばっかり(注:ほめ言葉)。雑誌掲載文の二話に書き下ろしが1.5話分の短編集。1冊目の軽さを感じることのできる内容になっていたと思います。
で、感想。えーと、がんばれ弟(黎深)ですね。もうネタとしかいいようがない愛の空回りぶりがおもしろいです。カミングアウトするのは(できたとしても)最終巻でしょうね。下手したらできないかも。そして黄尚書もいつの間にか絶妙なポジションを確保してるところもおもしろいです。
でもって、今回の陰の主役っぽいお母さんについては、なんというか、茶じじいみたいによみがえるのは少し勘弁です(死んでないかもしれませんが)と思う次第であったりします。うーん、うまくいえないんだけど、何でもありっぽい人だから。これ以上秀麗サイドが強力になると敵がいなくなっちゃいます。
May/20/2005 ↑TOP
 『彩雲国物語 漆黒の月の宴


帝都・闇烏の事件簿 3

真瀬もと/夏乃あけみ(イラスト)新書館ウィングス文庫【bk1amazon

怪盗・闇烏の正体が兄とも慕う藤木だと知った高久はこの事実にどう向き合うかで悩んでいた。一方藤木は、母親殺しの犯人の最後の手がかりを手に入れるために闇烏として予告状を出した。

あー、おもしろかったー!1・2巻で散りばめられた謎が見事に一つに結びついて一つの真実にたどり着いたというこの爽快感、そして何より全部が全部丸く収まった「ハッピーエンド」に大満足です。前巻で衝撃の事実を知った高久の立ち直りが意外に早くて、それに反比例するように落ち込む藤木が少々以外でしたが……、なんというか、愛(家族愛のほう)は偉大だなーと。
いつもプリティーな桜子ちゃんは今回もかわいく大活躍で満足ですし、謎の桜子母・桐子さんも颯爽とした女傑という感じで好印象。ただの「あこがれのお姉さん」で終わると思っていたゆかりさんもかっこよかったですしねー。この物語は女の人がそろいもそろって好印象の人ばかりでよい感じです。そして、謎に満ちた頼久兄。想像以上に家族思いで弟思いで(ただし空回り気味)、結構好きなタイプです。いいな、兄の弟との空回りの日々。
というわけで、おすすめの作品です。
May/19/2005 ↑TOP
 『帝都・闇烏の事件簿 2


ベルガリアード物語1 予言の守護者

デイヴィッド・エディングス/宇佐川晶子(訳)ハヤカワ文庫【bk1amazon

ガリオン少年は平和な農場で素朴に育っていた。彼の楽しみはたまにふらっと現れる語り部ミスター・ウルフの話を聞くこと。そんなある日、ガリオンは育ての親であるポルおばさん、ミスター・ウルフ、そして農場の鍛冶屋のダーニクとともに旅立つこととなる。

読みながら妙に指輪物語を思い出してしまったんですが、まあ、そんな感じにオーソドックスな王道ファンタジーでした。どからどうみてもあー、あの血筋ねと思う少年と、彼を守り育ててきた人たち、それになぜか巻き込まれてしまった人に途中で加わる個性的な仲間とどれもこれもおもしろい人ばかりでした。思わずくすっと笑ってしまいそうな会話がいいですね。
おもしろいんです。どちらかといわなくてもおもしろいんです。しかし、どこか、なぜかむむっと思ってしまう点がありまして。登場人物のちょっとしたモノの考え方とか、言い回しとか、そういう面が微妙に自分とは合わないな、と感じてしまうことがちらほらと。まー、違う国の人が書いた物語の上に翻訳物ですからねー、この点は相性としかいいようがないかもしれません。あ、あとかメインでかわいい女の子がでてないところも問題ですね!続きを読みたいような(いいところで終わっているし、次に期待の女の子もいるらしいです)、ちょっとためらってしまうような(高い)、そんな複雑な心境……。
May/15/2005 ↑TOP
 


王の星を戴冠せよ バルビザンデの宝冠

高殿円/椋本夏夜(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1amazon

パルメニア国王アルフォンスは王である毎日に嫌気が差していた。冷えた食事に、侍従であるマウリシオの毎日のお説教、そして飾り物である自分。時々王宮から抜け出し、自分そっくりの旅芸人キースと入れ替わることでストレスを発散させていたアルフォンス。しかし、ある日キースはアルフォンスを裏切り命を狙う。通りすがりの新聞記者に助けられたアルフォンスは図らずともパルメニアの貴族制度に反対するレジスタンス活動に身を投じることとなり……。

高殿さんのデビュー文庫『マグダミリア』の復刊。大幅に加筆修正された上にちょっとした短編まで付いているので信者にとっては一粒で二度以上おいしい内容となっておりました。キースがアルフォンスに似ている理由がそうくるか、といったところでしたね。
読んでみて思ったことは、やっぱりマグダはいいなー、ということ。前後編なのでスピードにあふれる展開。前のバージョンはバージョンで好きなんですが、こっちはこっちで文章が格段に読みやすくなっているし、何より遠征王やそのときシリーズを読んでいたら思わずにやりとできる描写の数々がうれしいです。マウリシオのネズミ嫌いが格段にパワーアップしているのは気のせいではあるまい。このシリーズの(一応)ヒーローポジションにいるのに哀れなやつ。
さーて、後編のラブに思う存分期待し、空き時間に旧バージョンとの読み比べでもしてみましょうか(笑)。
May/02/2005 ↑TOP
 『遠征王と秘密の花園


エネアドの3つの枝 それでもあなたに恋をする

樹川さとみ/木々(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1amazon

その昔、憧れの王子様に「ブスでデブ」と言われてたことをバネに美女に成長したミシア。暴言を吐いた張本人・アドルファに仕返しをするために宮廷に乗り込んだミシアだが、アドルファは戦争を体験して昔とは似ても似つかない「いい人」に変身していた。

なんというか、もう最高。大変楽しませていただきました。じれったい恋のすすみ具合が秀逸です。本人は善意からの発言なのにそれと気づかず墓穴を掘りまくっているアドルファと、「いや、あんたそれ恋やから」と思わずつっこんでしまいそうになるミシアのやりとりがおもしろかったです。
周りのキャラも魅力的。三部作とのことで、次に向けての布石っぽい場面が興味をそそられるところでもあります。今のところ一番気になるのはアドルファがどういう状況でセルフを拾ったかということなんですが(笑)。
今度の主人公はララ(ミシアの親友)かな?次も楽しみです。
May/02/2005 ↑TOP
 『楽園の魔女たち 楽園の食卓(後編)


運命は銀弓のように

めぐみ和季/かわく(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1amazon

神の生まれ変わりであると国民にあがめられている聖転者のステラだが、諸処の事情から「死んだふり」をしなくてはいけなくなってしまった。「生き返った」あとは普通の女の子として暮らせることを胸に墳墓で迎えを待っていたが、ステラの前に現れたのは盗賊のウォルハートとトートの二人組だった。

元気な女の子っていいですなーと思えるようなヒロインがよかったです。いろいろと悩みはありつつもあくまでも前向きに自分の未来を切り開いていこうとする姿が好印象。ラブ方面もいい感じの男女ラブでしたし、いろいろと思わせぶりな主要メンツの謎が「やっぱりなー」と思いつつも楽しむことができたと思います。普通に読めば、純粋におもしろいと思える作品。
しかし、斜めから読むと後もうちょっとなのになー、と思える部分もいくつか。ステラ側はともかく、ウォルハート側の心理変遷はもうちょっと説明がほしかったかも。洗濯に並々ならぬ執念をもやすウォルハートはちょっと楽しかったんですが(笑)。
May/02/2005 ↑TOP
 『そして王国が誕まれる


終戦のローレライ

福井晴敏・講談社文庫【bk1amazon

終戦を目前にした第二次世界大戦末期、降伏したドイツから秘密裏に運ばれてきた潜水艦【UF4】。【ローレライシステム】という常識を覆す秘密を持つこの潜水艦は【伊507】と名付けられ、秘密裏に出航した。

映画【ローレライ(FLASHサイト)の原作。粗筋を書くことを放棄しました。無理ですがな……。

たっぷりと文庫本4冊(その中の3冊はかなり分厚い)という分厚い本書、十分に堪能させて頂きました。熱い水中戦に熱い乗組員達。何を考えているのか本気でよく分からん浅倉氏の思惑に、少しずつ明かされていく秘密。なんというか、本当に熱い物語でした。パウラちゃんはかわいい上にかっこいいし、もちろん主人公の折笠もかっこいいんですが、やっぱり周りの大人たちが本当にかっこよかったですね。艦長、掌砲長、時岡さん。みんないいなー。その中で個人的にフリッツ少尉は別格な訳なんですが。どうして映画にはフリッツ少尉が出てこないんですか(いや、出てきたら時間内におさまらんやろう)。4巻の中盤以降は涙なしには読むことが出来ませんよ!
映画では描ききれなかったあんな人やこんな人の背景、ローレライシステムの詳細やその他諸々をきちんと押さえることが出来ましたし、なにより読んでよかったと思えるような充実感。あー、いいもの読んだ。
Apr/末/2005 ↑TOP