2004年5月の本の感想
空ノ鐘の響く惑星で2
渡瀬草一郎/岩崎美奈子
(イラスト)電撃文庫【
bk1・
別窓版】
王と皇太子が一度に殺されてしまうという現場に居合わせてしまい、あらぬ疑いを晴らすためにフェリオはいったん王宮に戻ることとなる。一方、王を手にかけた「来訪者」の一団はリセリナをおってこの世界にやってきたらしく……。
密かにウルクとリセリナのラブバトルを期待していたのですが……、リセリナは序盤でリタイアで当てがはずれました(笑)。今の時点ではどう考えてもウルクがリードですね。でも、きっとフェリオはなーんにも気づいていないんでしょうが(笑)。
来訪者関連はまだまだ謎に包まれたままですが、宮中での陰謀劇が急展開で進んでいくので、別にアレはまだ謎でもいいか、という感じでストレスはたまりませんでした。登場人物も出そろってきたようで、渋い方々が増えてきてこれまたうれしい限りです。あとは現時点でのラスボスっぽい人。歪んでいるということは一巻でも分かっていましたが、予想を超える歪み具合にちょっとびっくり。ああいうのが敵だといろいろとやっかいですからね、それにどう主人公サイドが対応していくか、というところも楽しみです。しかし、それにしてもラストのみんなで○○(一応配慮)シーンはかっこよいなぁ。ああいう燃える展開は本当に大好きです。
スクラップド・プリンセス3 異端者達に捧ぐ鎮魂歌
榊一郎/安雲雪伸
(イラスト)富士見ファンタジア文庫【
bk1・
別窓版】
立ち寄った街でパシフィカと意気投合したおっさん(ベルケンス)は、パシフィカたちを追うマウゼル教異教検査官だった。ベルケンスの職務は近辺に潜んでいるという「廃棄王女」の一団の真偽を確かめること。そんな中、パシフィカたちは廃棄王女のご一行だということを隠して船に同乗させてもらうことになった。
ネタがネタだけに(宗教関係)、ちょっと時期的にいろいろと考えてしまう内容であったのも確かな『捨てプリ』第3巻。しかし、まあなんですか。派手な戦闘シーンは読んでいてすかっとするので好きですね。特に「ほわーん」という雰囲気を漂わせながら殺人的な魔法を駆使するラクウェルが。個人的に、ベルケンスさんは今後も何らかの形で関わってくるような気がしなくもないのですが……、ああいうおっさんは好きなので期待しています(笑)。
空ノ鐘の響く惑星で1
渡瀬草一郎/岩崎美奈子
(イラスト)電撃文庫【
bk1・
別窓版】
アルセイフ王国の第四王子フェリオは、王位継承権からもっとも遠いところにいる気楽な王子としてフォルナム神殿での閑職についていた。ある日、フェリオは空中に浮いている不思議な柱である「御柱(ピラー)」の中から不思議な少女・リセリナが現れるのを目撃する。この少女の来訪が、国を大きく変える大事件に発展した。
各所の感想文サイトさんで絶賛されているのでずっと気になっていたんですが、ようやく手をつけてみることに。ぱっと見、SFぽかったので避けていたんですが(SFはちょい苦手)……、おもしろかったっ!今のところ、SF:ファンタジー=1:9くらいな感じですかね(笑)。
なんというか、主人公がすごくいいのですよ。ここまで好青年な王道主人公を読むのは久しぶりでうれしくて……。もう大好きですよ。登場人物もしぶいおっさんからかっこいいお姉さん、根性の若干ひん曲がった人まで各種取りそろえられていますし、何より王位継承権や神殿関係、そして対外問題などさりげなく政治的にどろどろしてそうなところ(1巻現在)も見逃してはいけません。そしてここまで詰まっている上に主人公を巡るラブバトルも……なにやらありそうなところ(1巻現在)も必見です。
アルスラーン戦記やデルフィニア戦記が好きな人であれば、かなりの高確率で楽しめると思います。ということで、オススメです。オススメされていたすべてのサイトのオーナー様に感謝。
ザ・ラスティ・ワールド 龍の王女
喜多みどり/凱王安也子
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
シオロ王国の王女クレシャナは龍騎士団を束ね先陣を切って戦いを指揮する戦士でもあった。彼女の左目は『予言の書』という未来を見ることができる瞳であり、それを狙って婚約者であるガリオンが彼女を裏切った。その際、異世界に放り出されてしまったクレシャナは、奴隷として売り飛ばされてしまう。
おもしろかったです。デビュー作に比べすごく読みやすくなっていたし、何より愛憎の渦巻き加減と具合が前より私好みだったので(笑)。基本的にはシリアスなんですが、おおざっぱなクレシャナ(女性としては規格外)と、世間一般的な女性とクレシャナを混同してしまうウルベルフ(諸処の事情でクレシャナを買い取った不幸な軍人)のやりとりが微妙にツボ。そして何より、ルーファ(クレシャナの弟。クレシャナにくっついて異世界までやってきたが……)に心癒される……。
愛憎渦巻いている割には暗く沈み込んでしまうことがないのは、ひとえにクレシャナの強さのおかげかと。やっぱり、いろいろあるけど未来を切り開こうとする女性はかっこええですなぁ。あ、あとウルベルフの執事さんみたいな人も和むから好き……。
少年陰陽師 焔の刃を研ぎ澄ませ
結城光流/あさぎ桜
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
黄泉との扉を開く鍵として、紅蓮は屍鬼に体をのっとられてしまった。事態は一気に悪化し、昌浩は選択を迫られる。
もう、狙ったように王道な展開に涙、涙(心の中で)ですよ。風音に涙、六合に涙、昌浩の決意に涙、そして最後にも寂寥感。しかしながら、昌浩が最終的に選んだ選択は間違いではないんだけど……、どこか納得いかないという気がするのも確かなんですよね。
十二神将がどんどん増えていって(とはいっても、十二人で打ち止めなんですが)、それぞれにそれぞれの物語があるというところでまだまだいろいろ楽しめそうかな、とは思うのですが、本気で読み込んでいないので誰がどれかちょっと混乱しているのも事実(笑)。私はかっこいい姐さんが好きなんで、今後は匂陣さんも応援していこうと思います(笑)。
そのとき鋼は砕かれた
高殿円/小田切ほたる
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
ゼフリートの籠手を継承したフランは、絶対無敵団を率いてエシュロンにやってきた。人間とは違う種族が住むこの国は男女が完全平等、しかし特別な時を除いて男女完全別居という珍しい国だった。
「そのとき」シリーズ(勝手に命名)第2弾。今回もいい具合に絶対無敵団が増殖。戦力(武力も、ある意味においての破壊力も)がつぎつぎと強化されていく絶対無敵団、さて一体どこまで拡大していくのか……、気になります。とまあ、絶対無敵団の話はここら辺でおいておいて、いつのもごとく愛憎渦巻く展開に、これこれ、こういうのが読みたかったんだよと心の中で頷きながら読み進めていました。エシュロンという国が本当に特殊で、フランにとっては最初はいい面しか見えないけど裏を返してみれば……、という流れがなかなか。全員が全員、一筋縄でいかないような登場人物ばかりなので、そこら辺の関係も見所がたくさん。
それにしても、ラストのあのシーン気になりますね。つ、続きを早く読みたい……。
息子はマのつく自由業?
喬林知/松本テマリ
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
有利の母・美子と父・勝馬との結婚のいきさつを描いた表題作他、強盗事件に巻き込まれた赤ん坊の有利の話(『眞魔国でマた会いましょう。』)、有利の兄である勝利と有利の幼き頃の逃亡話を描いたお話(『弟。』)の三作。
私、密かに美子さんのファンなのですが、そんな美子さんの素敵さがいっぱい詰まった(笑)短編集。あり得ない話だけど、美子さんとツェリ様の夢のコラボレーションとかあったらめちゃくちゃおもしろそうなんですが……。勝利兄ちゃんのお話以外は雑誌に掲載されていたものを収録したものなのでコメントは省くとして
( 『息子マ』、『眞魔国』に一言あり)、その新作について。今まで謎のベールに包まれていた兄の実態が浮き彫りになっていますが、まさかそっち方面の人だったとはね〜。理想の女性、誰だか一発で分かる自分も寂しいんですが(笑)。短編だからといって侮る事なかれ、またまたびっくりの新事実が明かされていたりするので気を引き締めて読んでいかねばいけません。
にしても、ガンダムネタが多いな……、結構分かるからむふふふと笑いながら読めるので楽しいんですが、分からなかったらノリについて行けないかも……。
鏡のお城のミミ 姫将軍と金の王子
倉世春/水谷悠珠
(イラスト)集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ベアトリスの妹アニェスの結婚式に出席するためにマルグリットを訪れたミミとエリック。しかし、二人はそこでベアトリスが行方不明になっていることを知る。ベアトリスの二人の妹の陰謀により、容姿がそっくりなエリックがベアトリスとして振る舞うことになったが……。
このシリーズを読むと男の子って大変だな、としみじみと思ってしまいます。特にミミみたいな天然が相手ではね……(しかし、実際ここまで思わせぶりな態度をとっておきながらひらりと交わしていく様は、現実におったらわざとかと突っ込みたくなるけどな〜)。今回読んでいて、ミミのはぐらかしは「ミミ的王子様と”おつきあいする”ための予防線」から発生したものだと分かりましたが、さてはてエリック君はこれを崩すことができるのでしょうか。
それにしても、ベアトリスとフェデルってナイスカップルですね。もう数年したら、フェデル君はさぞかしいい男になることでしょう。先が楽しみです(笑)。
スクラップド・プリンセス2 赦されざる者たちの騒動歌
榊一郎/安雲雪伸
(イラスト)富士見ファンタジア文庫【
bk1・
別窓版】
明日はどうなるか分からない旅の日々を暮らす三兄妹は、ある辺境の宿場町に滞在していた。しかしそこで刺客たちにおそわれ、世話になっていた宿屋を大破させてしまう。その修理費を稼ぐため、町のあちらこちらで小銭を稼ぐことになる3人だが……。
ノリと勢いで読んでしまった第二巻。雑誌に掲載されていたものをまとめたものだと知って納得。確かに各章ごとに特徴がはっきりしていて、だれないおもしろさというかそんなものがあったような気がします(とえらそうですいません)。敵か味方かよく分からないキャラたちに、主人公の苦悩。でもって、政治的な方面でもだいぶどろどろとしてそうなところがありますが、予想のつかない展開になりそうだと思いました。
スクラップド・プリンセス1 捨て猫王女の前奏曲
榊一郎/安雲雪伸
(イラスト)富士見ファンタジア文庫【
bk1・
別窓版】
シャノン、ラクウェル、パシフィカはごくありふれた中のよい兄妹だったのに……、パシフィカは災厄をもたらすとされた”廃棄王女”だった。父の死により、表面化した自分のパシフィカの出自、そして彼女を狙う暗殺者たち。彼女を守ろうとするシャノンとラクウェルは……。
個人的新規開拓事業第一弾、とりあえずベタな少年向けを漁ってみようということで、なんとなしに手に入ってしまった”捨てプリ”を読んでみました。富士見ファンタジアは久しぶりだったのですが、やっぱり富士見ですね〜(と意味不明な発言をしておく)。ライトタッチなファンタジー、戦いありの兄弟愛ありのギャグありので楽しめました。いまいちパシフィカの性格をつかめなかったのですが、おいおいつかんでいければいいなぁということで……、何冊か確保して参りましたので、ぼちぼち読んでいこうと思います。
緑のアルダ 旅立ちの丘
榎木洋子/唯月一
(イラスト)集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
アルダ・ココの占いのカードとアナンシアの守龍探索宣言、この二つが偶然重なり、コーサ国は上を下への大騒ぎとなる。そんな中、アルダ・ココは一時避難したデムナ夫人の荘園で、謹慎を命じられたアナンシアの身に危険が迫っていることを知る。
アナンシアがんばれーと無責任にエールを送りながら読んでいた6冊目。わがまま放題(ちょっと違うかな?)の王女様が、王女たる自覚を持ち始めるという流れが結構好きなので、いい感じに王女様らしくなっていくアナンシアに好感度アップ(それ以前に元から好きやけどね)。疲れ切ったカートラム卿とそれを冷静に観察する執事がなんとなく笑いを誘ったのがよかった……。あとはアンシャル公爵、思ったよりノリのよさげなお人で、イメージが一新されてこれもおもしろかったです。
次からはいよいよ旅の始まり、きな臭すぎる終わり方といい本当に大丈夫かな?
楽園の魔女たち 楽園の食卓(中編)
樹川さとみ/むっちりむうにい
(イラスト)集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
ダンナを助けるためにダナティアの元に直訴しにいったマリアは返り討ちに会い、ガーガとともにファリスらと再会する。ファリスたちは戦争の原因を追及すべく、ヤンじいさんの”まんぼう”に乗ってノヴァに向かうことにする。
しょ、少佐がっ!(って、前の感想と同じじゃないですか)
前編でファリスと少佐があれだけ活躍していたので次からはそんなことはないだろうと思っていたんですが、中編のメインはファリスではなかろうか、と思うくらいファリスはかっこいいし、少佐は遂に本気だし……。うわー、幸せすぎる(笑)。
前に「前中後になればいいなぁ」とかいう身勝手なお願いをしていましたが、まさしくそうなっているのでこっちでもにやり。こんなところでも伏線を張るかっ!と突っ込みたくなるような不可思議な現象も起こっていたりするので、最終巻が本当に楽しみです。四人娘たちが仲良く全員集合できるようなラストになればいいなぁ。
めざせマのつく海の果て!
喬林知/松本テマリ
(イラスト)角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
シマロンとの悶着もとりあえず一段落だが、地球に戻った有利は不安の種を抱えて日々の生活を送っていた。そんなある日、ムラケンの学校のプールからまたもや召還された有利は、今度は謎の王国・聖砂国との問題に直面していることを告げられる。
今回はギュンターがかっこよすぎました。かっこいいはずなのに、陛下への愛が暴走した結果ギャグ担当というポジションだったのに……、ギュの字が有能な王佐であることを思い出しました(笑)。いつもかっこいい次男と急にかっこよくなったから余計にかっこいいギュンターの思わぬ対決にははらはらドキドキでした。
新キャラの王様があからさまに怪しすぎてちょっとおもしろい。元ネタは、あの一時代を築いた理解不能な最終回のロボットアニメですよね……、十中八九。アニシナさんと長男もいつも通りの素敵なおもしろさだし、三男は三男でだんだんかっこよくなってきているし、グレタはキュートだし、いろいろと楽しみな今後。物語も新展開、今度はなにやらすべてが謎に包まれている聖砂国が舞台ということで、またもや”異文化コミュニケーション”で笑えることを密かに期待しています。
FLESH & BLOOD 5
松岡なつき/雪舟薫
(イラスト)徳間書店キャラ文庫【
bk1・
別窓版】
毒殺犯の疑いをかけられたカイトの無実を証明するために、ジェフリーとナイジェルは奔走する。一方、牢獄に送られたカイトは、ウォルシンガムの手先に拷問を受けることに……
5冊目。できるのであれば、4・5とセットで手元に置いてから読みましょう、な内容です。ねちねち〜としている拷問が何とも臨場感にあふれて手に汗握れます。要所要所にちらばっている「牢獄恐ろしい小ネタ集」もその臨場感に拍車をかけてくれます……。カイト救出にすべてをかけるジェフリーとナイジェルのコンビはすばらしいですね〜。海でも陸でもかっこいい人はかっこいいのですよ(笑)。最後はどうもっていくのかとはらはらドキドキでしたが、そうくるとは(とかいいつつ、それほど知識があるわけでもなし)。
今でているのは後一冊、次も張り切っていきましょう。
FLESH & BLOOD 4
松岡なつき/雪舟薫
(イラスト)徳間書店キャラ文庫【
bk1・
別窓版】
航海を終え、プリマスに帰港したグローリア号。陸の喜びもつかの間、カイトは女王の召還を受けジェフリーとナイジェルとともにロンドンに行くことになる。
シリーズ4作目。派手な海戦から一転、今度は陰湿な宮中陰謀劇に舞台が変更されました。常人には理解出来ないひねくれまくったエリザベス女王の心をカイトがどうつかむか、という場面ではハラハラ出来ておもしろかったです。
何はともあれ、機転と根性でトラブルを乗り越えていくカイトはやはりかわいいです。まあ、その、何ですか。カイト争奪戦も傍目から見ていたら楽しいんですが、今回はジェフリーさん一歩リードといったところでしょうかね。個人的には硬派なナイジェルさんの方がオススメなのですが(これはただの個人的趣味)。カイト君とジェフリーさんの思いも通じ合ったということで……(げふげふ)、このくらいならまだ大丈夫だ。これが苦手だからといって読まないのは少しもったいないくらいおもしろいので、続きも張り切ってがんばっていこうと思います。