2005年8月の本の感想
FLESH & BLOOD 8
松岡なつき/雪舟薫(イラスト)徳間書店キャラ文庫【bk1・amazon】
ビセンテに連れ去られたカイトを追ってジェフリーはグローリア号を出航させた。一方、不本意ながらスペイン船に乗ることになったカイトは船員から異端の目を向けられていた。
前巻(すいません、感想書いてません)でナイジェルを助けるためにビセンテと行動を共にすることになったカイト受難の話でした(カイトはだいたいどの巻でもえらい目に遭ってますけど)。カイトと友情をはぐくめそうなレオ君(ビセンテの従者)が個人的にツボ。彼には今後とも頑張ってもらいたいものです。
次巻は追いついたジェフリーがビセンテと対決でしょうかね。楽しみですー。
なお、この作品は世界史とかイギリス史(エリザベス女王の時代とか)がお好きならかなりお勧めなんですけど、がっつんBLですので(まー、その手の描写は少ないとは思いますし、なんならきわどいところはすっ飛ばしても問題はないかなー)苦手な方はお気をつけください。
暗夜変 ピストル夜想曲
青目京子/たかなぎ優名(イラスト)講談社X文庫WH【bk1・amazon】
なまくび横町と呼ばれる闇社会で”闇掌”として生きる壇上映は、自分を捨てた婚約者に復讐したいという依頼を受ける。依頼主の醍醐寺日向子は映の腹違いの妹と映を慕ってくるが……。
WHの新人さんの話を読んでみようと読んでみました。
大正時代のなんとなーく怪しい時代を舞台に、なまくび横町や闇掌などといういかにもな職業が怪しさを彩っていまして……、なんとなくおもしろかったです。絶賛はできないんですけど、まー、おもしろいかな、という感じで。文章とか若干まだ読みにくい点もありますが、新人さんなのでまだまだこれからがあるだろうし。
全体的には「痛い」と感じてしまう物語だったんですが(悪い意味ではなく)、その痛さもまたよし、というところかな。押しかけ女房のごとくどんどん映に踏み込んでいく日向子と、日向子にだんだん心を開いていく映がよかったです。
個人的にはシンと映のラブモードが読んでみたいような気がするんですが(というか、この二人は恋愛に発展するんっすか?)今後に期待でしょうかね。
ブラック・ベルベット 緑を継ぐ者と海へ帰る少女
須賀しのぶ/梶原にき(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
ファウラーで新しい生活を始めた三人娘。人質に取られていたファナも無事解放され再会を喜んだ三人だったが、ファナの病状は悪化していた。
タイトル(と表紙イラスト)からしてめちゃくちゃ不吉な展開のような気がしていたんですが、もうそれそのまんまで(心の)涙で前が見えません。しばらくディートニアからは離れて話が進んでいくのかと思えば、思いっきり乗り込んでいるしで結構予想外の展開なのですが、それにしてもあっさりと予想外すぎて凹。
いろいろと謎、というかシステムも明かされ新キャラも登場してきて次も楽しみ。でもやっぱり切ない……。
グラーレンの逆臣
雨川恵/桃季さえ(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
グラーレンの問題を解決するために、戦地に向かうことになったアレクシード。兄王のために職務に励むアレクだが、都ではアレクに翻意があるという噂が流れていた。
アダルシャンシリーズの3冊目。タイトルがタイトルだけにかの人がああするだろうと予想はしていましたが、実際やられるとなると……、うーん、寂しいなぁ。さて、今回もユスティニア姫がかわいく、かっこよかったです。ユーゼリクスとの対決シーンなんて、王様がヘタレていただけにかっこよさがきわだっていました。王様の弟への信頼があれくらいで揺らぐというのは、情けなさすぎ。
物語はアレクの出生の秘密までからんできてなんとも波乱に満ちた展開になりそう。思いっきり「どうなるの?」というところで終わってしまっているので、続きが楽しみです。
彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計
雪乃紗衣/由羅カイリ(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
なんとか茶州の問題に一段落がつき、秀麗は王都に新年の挨拶をしに行くこととなった。茶州復興のための新事業を起こすため、王都で奔走する秀麗。一方、水面下では秀麗の結婚を巡って攻防が繰り広げられつつあった。
おもしろいんだけどなー、この前の豆雑誌読んでいないと「?」となってしまうような場面は多いわ(影月と新婚カップルズ)、超常現象がいよいよ出張ってきたわでちょっとずつ期待とは違う方向に進んでいっているのが少し寂しいです。でも、まー、深く考えずに読んでしまうと楽しいので、それなりに楽しめたりするわけで。王様好きだから今回ちょっとがんばっている王様がよかったし。秀麗の結婚問題にどう決着をつけるのかは純粋に楽しみですので、これからも彼女(と王様)のがんばりに期待。でも、これ以上秀麗ラブ要員が増えるのは勘弁(とできれば超常現象も抑えめで)という方向でいってくれるとうれしいんだけどなぁ。
聖者の異端書
内田響子/岩崎美奈子(イラスト)C-Novels Fantasia【bk1・amazon】
ファルゴの封建領主の娘のわたしはアイルトンの王子パルジファルと結婚することとなった。しかし、結婚式の真っ最中に目の前で、わたしの夫となる男が消えるという事件に遭ってしまう。わたしはパルジファルが行方不明になった理由を求めて、幼なじみの見習い坊主のイーサンとともに旅立つことを決心した。
なんと言い表したらいいのか難しい物語ですね。でも、これだけはいえます。おもしろい、と。
とにもかくにも「わたし」に尽きる物語です。女性は名を持たない時代に生きることを受け止め、その時代にはずれない生き方を模索しつつもどこか規格はずれの「わたし」が味わい深くて大好きです。「わたし」の一人称で進んでいく物語なので、随所随所にある「わたし」の突っ込み(?)が本当におもしろくて……。「わたし」最高。ちょっとしかなかったんだけど、パルジファルと「わたし」のかみ合ってない会話も大好きだ。「わたし」以外の人物もどこか魅力的。個人的にはイーサンが好きだなぁ。
ファンタジーとしてもとってもおもしろく、読み終わってなんとなく「いー話だったな」とほっとするような結末。万人受けする話ではないと思うんですが、あえておすすめしたいくらいおすすめです。
翔佯の花嫁 片月放浪
森崎朝香/由羅カイリ(イラスト)講談社X文庫WH【bk1・amazon】
閃王・巴翔鳳のもとに嫁ぐこととなった瓔の公主・香月。母親の命を奪った閃王への復讐を果たすためだけに嫁いだ香月だが、あえなく暗殺は失敗。しかし、翔鳳はそのことについて特段咎めることはなかった。翔鳳の真意を読めないまま、香月は正妃として閃にとどまり、復讐の機会を待つが……
『
雄飛の花嫁』のお二人の孫の代の話。おもしろかったんだけど、
問答無用で切なすぎます。一作目のノリを期待していたら確実に撃沈します凹。
確かに「復讐から芽生える愛」を地でいっておりますが、もう、なんというか主人公の二人の性格からいって(とくに王様の方)芽生える愛もなかなか芽生えません。そのじれったさがいいといえばいいんですが、こう、もうちょっと二人を幸せにしてやってくれ(切実)、と。
かの人が出奔した理由とか明かされてないような気がするので、できればそれを知りたいなーとか思いながらやっぱり次作に期待してしまうくらいにはお気に入りの物語ではあります。でも、次もどうやら切ない系?とにもかくにも、なんやかんやで結構おすすめなのです。
花に降る千の翼
月本ナシオ/増田恵(イラスト)角川ビーンズ文庫【bk1・amazon】
南の島々からなる国・タリマレイの第一王女イルアラは代々王が持つはずの精霊と通じる能力を持たないことに悩みながらも、とある事情で彼女を守ることになった鳥の神の息子エンハスとともに日々奮闘していた。そんなある日、海を挟んだ隣の大国バラーバルがタリマレイ(とイルアラにとって最愛の妹の第二王女)を狙っているという噂をしったイルアラ。その噂の真偽を確かめるべく、バラーバルに乗り込むことにしたイルアラは……
ビーンズ新人さん第2弾。今度は健気で元気な王女様と、彼女の護衛でいろいろ訳あり少年のお話でした。普通におもしろいし、ストーリー展開とかは結構好きなんですが、うーーーん、なんといったらいいのか。薄いというか、厚みのない物語だったなぁという印象です。”笑い”の要素が私にはまったくツボにこなかったし、時折ぽこっと現れる現代語が嫌だった……。恋愛要素もね〜、とってつけたように感じてしまいました。別に最後一気に急がなくても、どうせシリーズ化するんだろうし、もっとじっくり攻めていけばよかったのにと思ってしまったり。といろいろ文句を書いてますが、続きが出たらきっと買うのでしょう。
風の王国 月神の爪
毛利志生子/増田恵(イラスト)集英社コバルト文庫【bk1・amazon】
ソンツェン・ガムポと対面した翠蘭。大きな問題もなく対面を無事乗り着ることができたが、ソンツェン・ガムポの代わりに ツァン・プーに向かうリジムに同行することとなり……。
吐蕃に嫁いだ唐の公主の物語を描いた『風の王国』の最新刊。ここしばらくは寄り道っぽい話が続いていたんですが、一気に物語は盛り上がってきました。おもしろかったです。
それにしも、辛い話でした。翠蘭に降りかかる出来事が辛くて辛くて。セデレク(リジムの幼なじみでかなり問題のある人物)のやることなすこと全てが気にくわなかったですよ……。で、ソンツェン・ガムポは思ったよりもダークさがなかったのが意外。あっさりと終わってしまった翠蘭との初対面。もっと何か起きると思ってたんだけどな。これまでのさんざんの描写でもっとえげつない人だと思ってたんですが。でも、今回の一連の彼の対応を考えると、今後さくっといろんなことをしそうな気はしますが。
だんだんアレなタイムリミットも近づいているとのことで、うーん、これからいったいどうなることやら。ハッピーエンドが好きなんだけど、アレですから無理かなぁと思いつつ続きが楽しみです。
ゆらゆらと揺れる海の彼方5
近藤信義/えびね(イラスト)電撃文庫【bk1・amazon】
バストーニュで内乱が起こった。ロベール九世とともに白鳥派からなんとか逃げ出すことができたラシード一行は、孔雀派勢力を頼りにモンディディエに向かう。一方、ラシードが行方不明と知ったジュラは、ラシードを救うためにアールカヴに戦いを挑む。
登場人物が一通り出揃ってこれからクライマックス、らしいのですが、人が多すぎて誰が誰やら。下手したら所属する陣営すら間違います。読み込んでないし。簡単な登場人物一覧がほしいです(切実)。
で、その新キャラの中にまたオンナノコですよ!今度は新米騎士ときたもんだ。記憶喪失の少女、頼れる参謀に恥ずかしがり屋の王女様、病弱な王妃様に我が道をいくサイエンティスト(しかも頼れる姐御だ)、ついでに負けん気の強い女性騎士と各種取りそろえているこの豪華さ。あっぱれです(目の付け所が違う)。という感じで、多少読みどころを間違っているような気がしますが、今回もあつい展開でしたので次が楽しみ。感動のご対面に期待です。