2006年11月の本の感想



翼は碧空を翔けて 1

三浦真奈美/椋本夏夜(イラスト)C-Novels Fantasiabk1amazon

小国ロートリンゲンの王女アンジェラは、皆に愛される16歳のお転婆姫だが、最近は気の乗らない縁談や大好きな兄が戦争に行ってしまうかもしれないと何かと心穏やかではない日が続いていた。そんなある日、城の庭に機器のトラブルを起こした飛行船が不時着する。初めて見る飛行船に興味津々のアンジェラであったが、飛行船のオーナーであり船長だというセシルは今までアンジェラが出会ったこともないような不遜な態度を取る男だった。

天真爛漫で元気な王女様が主人公、第一次世界大戦直前のヨーロッパっぽい世界が舞台(あくまで「ぽい」です)、そして王女が出会うのは性格にやや難有りの青年実業家、飛行船はロマンだー、ということでもう全てにおいて私のツボを刺激しまくる三浦さんの新作。久方ぶりの新作と言うだけでテンションがあがるのにここまで大好きな要素が詰まりまくっていてもうどうしてくれようという感じで(テンション高すぎ)。
とにかく、王女様の行動力と兄を思う健気さが素敵です。一歩間違えればただの「わがまま王女」なんですがその点も彼女なりの考えがあってのことで。物語はまだ始まったばかりとはいえ、どうやら大きな戦争になりそうな雰囲気で、この先どう「世紀のラブロマンス」(byあとがき)になるのか今から非常に楽しみです。全三巻ですでに三冊目の半ば以上書き上がっているらしいのでそう待たされずに最後まで読めそうです。とにかく早く続きが読みたいです。
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 『赤い砂のリグリア アグラファ7


神曲奏界ポリフォニカ インフィニティ・ホワイト

高殿円/きなこひろ(イラスト)GA文庫bk1amazon

新進気鋭の青年作曲家・ミナギ=クロードが精霊島学院に転入生としてやってきた。彼の曲になぜか聞き覚えのあるスノウ。しかし、ミナギの話題になると不機嫌になるブランカはスノウがミナギに関わることをなぜか嫌がり……。

ポリ白2冊目。ポリフェニカシリーズはこれしか読んでいませんが、一応十分楽しめるのではないかと……、たぶんあれやこれやのシーンにいろいろとサービスはあるとは思うのですが。
謎の新キャラを迎えての「ええこれって実は前編?」というシリーズ2冊目でした。スノウの出生の秘密というやつは1冊目から推測されるものズバリそれ、のようですが、ブランカが彼女をこちらに連れてきた理由が気になるところ。今のところ腹黒キャラにしか見えないミナギ君が今後どう動くかに要注目ですねー(一番腹黒はもしかしなくてもお嬢様だという点は譲れません)。梅干しやら漬け物屋やらももまんになぜか若干の違和感を感じましたが、でも、話のカラクリ考えるとまあこれもありかなーと思ってしまう程度に続きも楽しみです。というか、これについては早く解決編を……。
NOV/21/2006 ↑TOP
 『神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト


オペラ・エリーゾ 暗き楽園の設計者

栗原ちひろ/THORES柴本(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

人類殲滅を目論む秘密結社『黒いゆりかご』と対立したカナギ達は、苦境に立たされつつも状況を打開する手段を模索していた。一方、詩人を追うバシュラールは闇魔法教会本部に向けて出発した。

闇魔法協会本部での騒動収集編、前半の山場は越えた模様ですね。『黒いゆりかご』の団長ウゴルとカナギ&ミリアンの対決も読み応えがありました。そしてなんといっても一部明かされた「世界の謎」のお陰で語に深みが出たとでも言いましょうか。そして今回びっくりした点がひとつ。この物語はラブ分が割と希薄だなーと感じていたのですがいきなり各所でいわゆる「ラブ寄せ」発生ですよ(違)。ちょっと唐突と言えばそうなのですが、違和感感じませんし、なによりこういう展開大好きなので大歓迎。
なにやらかなりいい味を出している新キャラと共に次回は帝都に舞台を移す模様。帝都は帝都でかなり不穏な空気が流れておりますが……。登場人物それぞれの関係にも変化が見られ、続きも楽しみです。
NOV/19/2006 ↑TOP
 『オペラ・フィオーレ 花よ荒野に咲け


風の王国 臥虎の森

毛利志生子/増田メグミ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

エウデ・ロガの城で無事リジムや朱瓔たちと合流することができた翠蘭はコンポ王女リュカも加わり安らぎの一時を過ごす。薬草を採るためにエウデ・ロガの城にやってきたリュカとともに森に入ることになった朱瓔とサンボータ、そしてエウデ・ロガの領主イーガン。しかし朱瓔とサンボータは森の中で一行とはぐれ、イーガンと対立している森の民に保護される。

前回とうってかわって表紙に偽りなし、の風の王国、主役の二人に隠れてなかなかにいい雰囲気を醸し出していたお二人さんにとある決着が見られ、待ち望んでいた(?)なんともよい結末でした。そしてラセルと犬たちがいいなー。犬。思わぬ再登場のジズンもここまでいい奴になってるとは思いも寄りませんでした。いつまで女装が通用するのかも気になってしまいます。
今回の悪役さんは、一筋縄に悪役ということはできないという大変難しい問題でした。内には味方でも外から見たら悪役といいますか……。もっと分かり易く悪役だったら素直に憎いやつめと思えるんですが、そうも思えませんからね。今回の事件についてはほろ苦い決着がつけられつつ、そして一行はツァシューに向かうのでした。
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 『風の王国 目容の毒


ダナーク魔法村はしあわせ日和〜都から来た警察署長〜

響野夏菜/裕龍ながれ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

首都警察特務捜査官だったイズーは栄転(本人に言わせれば左遷)して署長としてダナーク村に赴任することになる。最後の秘境といわれるほど田舎にあるダナーク村は、実は魔女の村。ありとあらゆることにカルチャーショックを受けるイズーであったが……

前作とはうってかわって大部分はほのぼのとしたコメディの新作は、都会からきた警察署長が村のおてんば娘ビ(魔女)に振り回されるお話でした。最初はいろいろあって若干陰々滅々としていたイズーがビーにだんだんとほぐされていく過程が非常に楽しかったです。魔女村のひとつひとつにびっくりするイズーがわりとツボです。
全編ライトタッチで行くのかと思えばそうでもなく、イズーの過去に絡む事件で若干シリアスな面もありつつで絶妙なバランスだなーと感じました。続きも楽しみ。
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 『ガイユの書 薔薇の灰は雪に


宝印の騎士

西城由良/窪スミコ(イラスト)ウィングス文庫bk1amazon

宝珠を宿し操ることのできるあかしである宝印は限られたものしか得られない印であった。貴族の庶子であることを利用し、宝印を得るために宝印学校に通うスラム出身のノイルは、最終の卒業試験で落第し追試を受けることになる。追試では同じく落第した下流貴族のウィリップと共にノイルの手に隠された宝珠の種類を調べるというもの。何とかして宝珠の種類を探ろうとするノイルであったが、宝珠を見たはずのウィリップが全く口をきかず……

ウィングス文庫の新人さんは男の子の友情っていいな(三人の中で友情が成立していると思っているのは一人でしょうが)、と思うようなファンタジーでした。「何でもいいからのし上がろうとする少年=ノイル」と「とにかくいい子、いつの間にか周囲も自分のペースに巻き込む=ウィリップ」、そして「ノイルの存在すら許せないノイルの従兄の大貴族の子息でいつの間にか事件に巻き込まれている=ティフィール」の絶妙な三人組の頑張る姿がとにかく好感度大。ウィリップのお陰でだいぶと『まるく』なってしまっていく二人がこれまたなんとなくよくて。女の子分は今のところ皆無なので出てきてほしいなーと思いつつ、でもこの三人+それを見守る大人達でも十分面白いからまあいいかと思ってしまうわけですが……。次回以降の「宝印」のための修行等、先行きが楽しみです。
いわゆる良質な少女小説、の雰囲気を持つ作品といいましょうか、こういう作品に出会えるからウィングス文庫は侮れません。
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シェーンベルムの騎士

雨川恵/桃季さえ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

カジャに命を救われ、辺境の森で体を癒していたアレクであったが、カストリアがアダルシャンとの戦火を再び開こうとしているという情報を聞き、ユティをアダルシャンに取り戻すためにカストレーデに潜入する。一方、ユティもセオと歳近い兄皇子の力を借り、アダルシャンに戻るための計画を練る。

アダルシャンシリーズのクライマックス突入編。やっぱり今回も姫様が健気でかわいくて……。今回のアレクは地味な特技を披露しつつ、姫様奪還に向けて地道に活動しておりこちらもなかなかよかったです。しかしアレクは本当にいい子だなぁ。兄王がらみのイジイジがなければ本当に純粋にかっこいい(←違)。カストリア皇帝もルシウスに全てを任せてほったらかしている、というよりむしろ一番の狸かもしれないな、と感じる点がチラホラ。彼の真意がどこにあるのかは分かりませんが、今後の展開をがらっと変える鍵は皇帝と、そしてアダルシャン国王にあるような気がします。
カストリアで、そしてアダルシャンでこれまたどうなるんですかという幕引きでしたので続きも楽しみです。
NOV/11/2006 ↑TOP
 『カストレーデの皇子


エニシダの五月 黄金の拍車

駒崎優/岩崎美奈子(イラスト)講談社X文庫ホワイトハートbk1amazon

国王のシェフィールド滞在により、最大にピンチに立たされるリチャード。最初の対面は何事もなくやり過ごすことができたが、国を揺るがす大事件に巻き込まれることとなり……

足獅子から通算して16冊目のシリーズ最終巻。割と淡々と最終巻を迎えた巻はありますが、とにかく今度は一歩間違えれば即刻命はないという状況なのでかなりの緊迫感がありました。最終巻らしく、いろいろな人の再登場&活躍で思わずにやりとしてしまいそうになったり。実はかなりお気に入りだったホープ嬢の再登場がなかったのは心残りですが(笑)。 リチャードとギルらしいなんとも小市民的(←とりあえず隠し)な幸せを満喫させていただきます、という所はさすがです
決して派手ではないものの、生活に密着したイギリス中世の騎士達の物語が終わるのは非常に寂しいのですが、しかし後に控えているらしい短編集に期待です。
NOV/10/2006 ↑TOP
 『花嫁の立つ場所 黄金の拍車
「麦とぶどうの恵より」は感想を書いた記憶まであるのに、
アップするの忘れたかで消失……


繙け、闇照らす智の書 幻獣降臨譚

本宮ことは/池上紗京(イラスト)講談社X文庫ホワイトハートbk1amazon

聖獣を使役する技を身につけるため、アランダム騎士団に身を寄せることになったアリアは古の文献を読むためにオレリーの指導を受けることとなる。一方、王立騎士団に戻ったライルは聖獣の巫女が現れたという情報を手にした王の下問を受けていた。

幻獣降臨譚の3冊目。勢力の構図や力関係が徐々に浮かんでき、更に面白くなってきました。巻数を重ねる毎に確実に面白く&読みやすくなっているなーと感じました。
さて、期待していた”女子校的ノリ”は一部実現したのではないでしょうか?女性の新キャラも登場し、なかなかよい感じになって参りました。優しいお姉さんから少々ひねた少女、そしてなんともまあ豪快なあの御方とバラエティ豊かで大変たのしいです。男性陣の新キャラは元からの人数も多くて把握し切れてません。すいません、主要キャラなのに区別がついていない人がいますごめんなさい。
アリアのがんばりる姿を見て態度が軟化したシュナン、なかなかよい展開です。彼の背後関係もキーポイントになりそうです。アリア争奪戦はどうなるのかなーというところも含めて、続きも楽しみ。
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 『吠えよ、我が半身たる獣 幻獣降臨譚


約束の柱、落日の女王

いわなぎ一葉/AKIRA(イラスト)富士見ファンタジア文庫bk1amazon

家臣に軽んじられ、孤立するシュラトス王国女王クリムエラの前にカルロと名乗る青年が現れる。宮廷内での地位を確保し、次々と改革を打ち出しシュトラウスの立て直しを図るカルロはやがてクリムエラの絶対的な信頼を得る。一生クリムエラに仕えると誓うカルロだったが、彼自身は2000年の未来から来た人物であった。

ラブでした。時を越えたラブというやつですな。少年向けというよりむしろ絶対誰がなんといおうと少女小説的ラブ。絶対レーベル間違ってます。
カルロの(船酔い以外の)万能振りはそりゃちょっとすごすぎでしょうとか、クリムの(初期の)わがまま振りはどうも好きになれなかったよとか(初期以外はかわいいからいいんですが)、政治の暗躍面がちょっと軽いような気がして、とかいろいろと物足りない面も多いのですが、時を越えたラブのあたりは非常においしいのでそれでオールオッケー(軽いな……)。
そして個人的にはたしかに好みの展開で面白いと思ったのですが、なんだか読むのに大変時間がかかりました。こんなに寝落ちしまくった本は久しぶりです。しかし、ここまできれいに終わった物語をどう続けたらあと2冊も出せるのかという点が非常に疑問です。続きも手元にあるのでぼちぼち読んでいこうと思います。
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