2002年7月の本の感想
マリア様がみてる パラソルをさして
今野緒雪/ひびき玲音
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
祥子とのすれ違いから、どん底に陥ってしまう祐巳。前・白薔薇様の聖とその友人に助けられ、少しずつ元気を取り戻すものの、やはり気分はどこか晴れない。
前回、凶悪な終わり方をしたマリみて、解決編。いろんな意味でラブラブ街道まっしぐらの赤薔薇姉妹なので、行くとこまで行ってやってください、という気分です。瞳子ちゃんにしても、今回ので少し株が上昇かな…。祐巳の妹になるんだろうか…。それと、久しぶりに<王子>柏木さんが王子体質を披露してくれていておもしろかった。蓉子様もお美しくなられて再登場で、いろいろとおいしいお話でした。
めざめる夜と三つの夢の迷宮
松井千尋/広瀬櫂
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
辺境を治める王子が盗賊に襲われた。王子の命は助かり、その王子の護衛としてひとり生き残った男は、「三つの杯亭」という宿にやってくる<辺境王の帰還>。ほか2編。
3つのファンタジーな中編が収録されています。実は、さりげないところで3つのお話がつながっていた。それも不思議な雰囲気に包まれていて、登場人物たちの心情がよく伝わっていてよかった。2個目の女の子と魔女の友情物語の、女の子のはつらつさと優しさと、友情が形成されていく過程が秀逸。3つ目の話は、これまた感動もの。1つめのもよかった。おすすめ。文体に少し癖があるものの、読み進めていくうちに慣れると大して気にならなくなるかと。
ミューズに抱かれて
中井由希恵/潮見知佳
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
篠原笙(ショウ)は高校卒業後、指揮者になるために単身フランスに向かい、厳しい選抜試験を経て音楽学校の指揮コースに入学する。そこで友達となったのは、若くしてその才能を周りにとどろかしているフランシスだった。
デビュー作にも手を出すことに。男ばかりの表紙で、それでもってあらすじでBLかな、と思っていたけどそんなことはない、青年と少年の友情もの。音楽のこととかが本当に詳しく書いてあって、実はそっち方面が好きなので、いわゆる「うんちく」部分を楽しめた。登場人物としては、ショウがさわやか天然好青年であまりにも素敵すぎる。フランシスは、ヴァイオリンの天才で、大企業の御曹司で、でもって経済学にも精通している少年という、少女マンガでも今時あり得ないベタな設定が心を打った。
神々の憂鬱 暁の天使たち2
茅田砂胡/鈴木理華
(イラスト)・中央公論新社C-NOVELS・【
bk1・
別窓版】
リィに連れられて異世界からやってきたシェラ。リィの家族とともにテーマパークに行くことになるが、自分のいた世界との違いに認識を新たにする。そして、シェラが聞いた太陽のリィと闇のルウの関係は…。
最初の部分のお話は、一巻の途中くらいの時間の話かな?
ネズミーランド(仮)もどきの遊園地を楽しむシェラの驚きやとまどいが新鮮だ(…、あんまりとまどってないか…)。後半部、デルフィニアからやってきた四人組の何とも言えないのほほん会話がいいですね。<→
「目指せ、一般市民」←>とか。やっぱり、ここら辺の会話のテンポの良さは絶妙。最後の最後の一文、ついにあのお方の復活になるのか?それが楽しみ
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この本を読む場合は、『デルフィニア戦記』(全18巻)と『スカーレットウィザード』(全5巻)、ついでに『スカーレットウィザード外伝』を読んでいないと、だめなような気がします。特に、外伝。全部読まなきゃ読めない(話を掴みにくい)新シリーズっちゅうのも、新規読者を開拓する、という意味ではどうかと思いますが…。読むのなら、そこら辺をかたづけてからどうぞ。
シャドー・イーグル4
片山奈保子/亀井高秀
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
前回の出来事を引きずり章や省吾を避け続ける真澄。ある日、彼女は偶然人気アイドル里弥と出会い、スキャンダルに巻き込まれてしまう。
一年ぶりの続き。前の内容を忘れてしまっていたので、何で真澄はこんなに後ろ向きなんだろう、と思いながら読み進めていくハメに…。今巻は、大物の敵と戦うというものではないけど、真澄の”記憶”を取り戻すのがメインで。なかなかヘビーですわ。純情な狼神がよいです。ああいう設定好きだ。さて、なぜか真澄一極集中で四角関係が発生しておりますが…、この先どうなることでしょう?
明日香幻想 空蝉の章
朝香祥/張間瀚多
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
品治が大海人に仕えて二年になった。大海人の使いで明日香にに向かった品治は、ひょんなことから蘇我入鹿に気に入られる。そこから品治は宮廷内の陰謀に巻き込まれることになり…。
相変わらずまわりをやきもきさせる大海人と、一生懸命な品治。渦巻く宮廷陰謀劇。燃える展開です。弓月と真稚にも見せ場があって。ふたりとも好きだ。最後の方は品治の身に降りかかることが辛くて、読んでいて切なかったのですが…、主従愛(邪な意味じゃないです…)が泣けます。
レリック・オブ・ドラゴン 誓約の紋様
真瀬もと/雪舟薫
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
医学生のロルフはある日、アンセルムと名乗る男に「契約履行」のために迎えに来たと言われる。一方、ロルフの主人のエドガーは連続猟奇殺人事件を追っていた。全てはロルフとエドガーの故郷に残る女吸血鬼レディ・オブ・ダークネスとドラゴンの騎士の伝説に関係のあるようで…。
第一次世界大戦後くらいのイギリスが舞台のミステリアスなプチホラー。基本は暗い物語。でも、ロルフの一生懸命ぶりと、愛玩ドラゴンのおかげでずいぶん救われているような…。兄弟愛とか、時間を超えた愛憎劇とかが読み応えがあったかな。愛玩ドラゴンのタフタフがかわいすぎです。実際の彼(?)は不格好みたいなんですが、、そのすねる様子とかアンセルムになつく様子とか。<→最後、大化けしてロルフを救ったりするんかなぁ、とか思ってもみたんですが…、あそこまで本筋と関係のないおちゃめなペットはいいですねぇ。最後まであくまでも脇役で。←>
我、召還す −鳥籠の姫−
渡瀬桂子/百太瓏
(イラスト)・集英社コバルト本庫・【
bk1・
別窓版】
<歪み>が生じ、そこから妖魔がわき出す世界。施術師を目指す少年セスは、大陸一の施術師ランベルトに弟子入りするためにタレムにやってきた。そこでセスは、妖魔を連れた使役師の不思議な少女シアンに出会う。
Boy meets girl っぽいので読んでみることに。オーソドックスなファンタジーの世で繰り広げられる成長ものっぽい話のようだ。現実の細かいことに頓着しないシアンのぼけっぷりがすがすがしい。話中で明かされる、彼女が物事に頓着しない理由、なにやら深い事情がありそうなシアンの素性、その他諸々ひっくるめて好き。なにやら色々事情を知ってそうな謎の使役師ワイズとか、今後の動向が気になる…。
「歪んでいるからこそ、この世界は美しい」というフレーズが何カ所か出てくるのだけど、この一言がこの物語全てを表していると思う。そして、なかなか名言だと思う。
総括すると、次もでてほしいくらい気に入ってしまったけど…、イラストが微妙…。なんというか、バランスが悪いというか(ムニャムニャ…)
明日香幻想 玉響の章
朝香祥/張間瀚多
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
豪族の息子・多臣品治は大王の末息子・大海人の側仕えを命じられる。大海人は体が弱く、地方で静養中の身。そんな大海人に会ってそうそう「帰れ」といわれた品治は、持ち前の根性で側仕えの座を獲得し…。
大海人のひん曲がった性格が何とも言えず。そんな主人に振り回されながら、まっすぐな性格の品治が大海人の心を開いていく様は、まるで動物を手なずけていく飼育係のよう…。
前に読んだ『
夏嵐』とはひと味違った角度から描かれる大海人。話が進んでいくと、あんな大海人になるんだろうか?ちょっと想像つかないぞ。
約束の時へ
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
孫策と周瑜が従軍してから三年。孫堅はふたりに使者の任を与える。ふたりは向かった先で、董卓軍が孫堅軍に攻め入るという情報を手に入れて…。
今回もかっこいいお兄さん(祖茂・愈河・曹洪)がたくさん出ていてよかったっす。孫策も周瑜も、りりしい青年になって…。祖茂とふたりの約束、そして約束の地へ。ラストシーンではちょっと胸が詰まった。
コバルトの朝香さん三国志は、どうもここで終わりのよう。どこかで続きがでないものだろうか…。
天使ズ。
野梨原花南/藤田貴美
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
クローゼットの中からいきなり現れたふたり組。いじめられっ子の高校生・奈々はふたりに組むよう誘われ、もう一つの世界霧王町での戦いにかり出されることとなる。
うーん、あんまり好みじゃないかな。天使のひとりの口の悪さにはちょっとムカッと来て、ストーリーもそんなに好きじゃないしな…。奈々の前向きなんだか後ろ向きなんだか、わけの分からない吹っ切れ具合とか、決心したあとの行動とか、本当に”ぶさいく”であり続けた挿絵とかは潔くていいんだけど。
黄金の拍車
駒崎優/岩崎美奈子
(イラスト)・講談社ホワイトハート・【
bk1・
別窓版】
騎士に叙任され、リチャードはストックスブリッジの城主となた。しかし、白骨死体は見つかるし、怪しげなこそ泥は現れるしでリチャードの新生活は前途多難であった…。
前シリーズのつづきの新シリーズ、リチャードとギルバートが帰ってきた。うれしいなぁ。しかし、希望にあふれる新生活が、なんだか悲惨なリチャード。領主様って大変だ…。住む場所が離れて、あんまりふたりがあんまりつるめないんじゃないだろうか、という心配もよそに、ギルもトビーもずっと一緒だったけど…。ジョナサンも相変わらず生臭坊主で、ナタリーたちは相変わらずいい女たちで。次はどんな事件が起こるのか、騎士になったら結婚話も出てくるわな、そこら辺はどうなのか。楽しみ。
薔薇の泥棒と宝石の王女
はすなみ透也/忍青龍
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
「宝石の王女を手に入れる者は、世界を制する」−その言葉以外の全ての記憶を失ってしまったアレックス。彼を身元引受人として迎えに来たのは、若くして天才の名をほしいままにしていたジーンクレアだった。
最後まで一息に読んでしまった。結構楽しめたけど、物語の核となる謎の部分が、アレックスの回想で謎解きされていくのはちょっと不満。しかし、全体的には好きな部類だ。さりげにエロおやじなアレックスとか、男の子っぽいジーンとか。目指せ源氏物語(あとがき参照)というのも、最後まで読めば納得。オカマコンピューターもおもしろかった。かなりラブラブ物語で。王女と泥棒、というなんとなくロマンにあふれるネタが、きれいにまとまっていたように思う。今後に期待の新人さんです。
暁を抱く聖女
吉田縁/秋月亮
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・【
bk1・
別窓版】
ドン・レミ村の男まさりな女の子ジャンヌ。アングロに村が襲われたとき、助けてくれた王子様を悪魔から助けるために、彼女は村を旅立った。王子様を捜し出す旅のとちゅうで、いつの間にか聖女に祭り上げられていたジャンヌは…。
聖女でも何でもない、ただの憧れの王子様を捜し旅を続けジャンヌ・ダルク、というところが新鮮。口調は荒いし、あんまり賢そうじゃないし。でも、自分のやりたいことに向かってただ一直線、というところは良かった。映画のジャンヌダルク(リュック・ベンソン監督作品)よりは、こっちのジャンヌの方が身近で好きなんだけど、人によっては拒絶反応が出る作品かもしれない。ジャンヌの言葉遣いが、思いっきり現代っ子なので、そこら辺が嫌な人はあまり読まない方がいいかも(私もその点はちょっと嫌だったから)。とにかく、<→最後は王子様とともにハッピーエンドなジャンヌ・ダルク←>もいいんじゃないかと。
魔女の結婚 月蝕に時は満ちて
谷瑞恵/蓮見桃衣
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
聖槍の破片をその身に受けたことで眠り続けたままのステファンを目覚めさせるため、エレインとマティアスは『賢者』に会いに出かける。賢者がいるという街で、毎度のことながらエレインはマティアスの行動に不信感を募らせて…。
すごく楽しめた。バードが、マティアスが、ステファン、ステファンがっ!!それに比べてだんだん影の薄くなるミシェル…。マティアスとある男の因縁の対決、血と狂気と正気の狭間みたいな物が描かれていたかと…。”月蝕”という特別なときに交わる時間軸が織りなす物語にずずんと引っ張り込まれた。マティアスの背負うものとか、鬼畜系さんの行動とかで今回はちょっとダークでした。そして、ちょっとは進歩があったか?、エレインとマティアス。次も楽しみ。
花残月
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
孫策と周瑜は野盗に襲われている少女を助ける。その野盗は、最近周囲を荒らし回る者たちだった。ふたりと、友人の計約10人はその野盗を退治することを決意する。
孫策の初恋決着編かな。蓮の前でがちがちになる孫策がかわいかった。”丹桂のかんざし”のエピソードにちょっと感動してしまう。身内が巻き込まれたことによって、少し暴走気味の周瑜が、いつもの落ち着き払った彼とは違って新鮮。
華の名前
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
新たに孫堅の配下に入ることとなった部族・楚。孫堅に祝いの品を届ける周瑜とともに、孫策は孫堅のもとに向かっていた。そんなふたりの乗っていた船は、楚の長の娘・芙蓉が率いる”江族”に襲われて…。
孫策の恋物語、だそうですが…。彼にかかれば色っぽい話も殺伐としたものになってしまう…。芙蓉がきりっとしたりりしい女性なのに、恋する乙女モードにはいると、とたんに自信がなくなってしまうというギャップがほほえましい。14才(男)と17才(女)の恋物語…、ちと無理があるかなぁ(苦笑)。長さの割に登場人物が多くて、だれやねんこいつ、と思いながら読んでしまうこともしばし。でも、今回はかわいい女の子もいたので結構満足。
青嵐の夢
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
孫策10才。孫策は引っ越し先で同じく10才の周瑜と最悪な出会いをする。ふたりの初めての出会いを描いた一冊。
子供時代と言うことで、皆さんとてもかわいいです。そのなかでも、ミニ孫権のかわいさは群を抜いております。本音はふたりの子供時代より、嫁取り物語の方が読みたかったりして。でも、かわいいから許す。孫策が「楽」に四苦八苦する姿に哀愁を感じた…。
旋風の生まれる処 (上下)
朝香祥/桑原祐子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
14才の孫策と周瑜は、ある日盗賊に襲われていた人たちを助ける。それがきっかけで、孫策は念願かなって父親・孫堅の軍に従軍することとなる。孫堅に請われて周瑜も一緒に従軍するが、孫策はそのことについてなにか”もやもや”としたものを感じて…。
孫策&周瑜の初陣物語。父上が剛胆な方で、どこか孫策と似ていてさすがだ、と思った。上下を通して孫策と周瑜、ふたりの”もやもや”との葛藤が描かれていて、読み応えがあった。本伝(?)の中では一番好きかも…。吹っ切れた後の互いのセリフについては、赤面するほどまっすぐで、つい、、若いっていいなぁ、と。
そして、ミニ孫’sがめちゃくちゃかわいかった!とくに、珠姫(後に劉備に嫁ぐ孫策の妹)。もっと出番があればうれしかったんだけど。