2003年2月の本の感想
王都炎上・王子二人 アルスラーン戦記1・2
田中芳樹/丹野忍
(イラスト)・光文社カッパノベルズ文庫・ISBN4-334-07506-1【
bk1・
別窓版】
大陸公路の守護国として、強大な力を有していたパルス王国。国王アンドラゴラス三世の元、不敗を誇るパルス軍が対峙したのは宗教国家ルシタニア。しかし、パルスは戦に負け、参戦していた若き王太子アルスラーンはたったひとりの味方・ダリューンとともに戦場から脱出することが精一杯であった。
あー、買っちゃった。持ってるのに買っちゃった。あまりにも有名な話なのであらすじ書かなくてもいいかなぁ、と思ったけど一応(しかも、なぜか妙に書きにくかった)。架空歴史ファンタジーとしては、もう大御所で、読んでいないのならまず読んでほしい一作(完結していたら、もっとおすすめするんだけど(涙))。しかしながら、初めて読んだときとはまた違った新鮮な気分で読むことができた。ネタを知っているだけに、色々違った角度で楽しめるというか。やっぱり名作はいつ読んでも名作だなぁ。
ちなみに、巻末に乗っていた刊行予定を抜粋
落日悲歌・汗血航路(2003/5)、征馬孤影・風塵乱舞(2003/8)、
王都奪回・仮面兵団(2003/11)、旌旗流転・妖雲群行(2004/2)、
魔軍襲来(2004)←のいつだ、いつ?(笑)
マリア様が見てる 子羊たちの休暇
今野緒雪/ひびき玲音
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600210-8【
bk1・
別窓版】
試験が終わればあとは楽しい夏休みのみ!の祐巳は心の底から夏休みを待ち望んでいた。なぜなら、お姉様の祥子が祐巳を別荘に誘ってくれたからだ。しかし、二人っきりの夏休みのはずが、祥子を慕うお嬢様たちによって潰されそうで…。
前巻にて、2人の未来はバラ色になった赤薔薇姉妹の夏休み。祐巳と母親のボケっぷりが妙におもしろかった。お嬢様たちの挑戦にも、「祐巳」らしさで立ち向かっていく姿はある意味感動もの、かな?メインはもちろん2人の夏休みなんだけど、それを虎視眈々とのぞき見しよとする新聞部のエースと写真部のホープには笑った。柏木さんといい、祐麒君といい、この本に出てくる男性陣は脇役のくせにいいやつばかりだな、うらやましい。
シャンレインの石 / ルファーヌ家の秘密 レヴィローズの指輪
高遠砂夜/起家一子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
レヴィローズの主として自分の至らなさに悩むジャスティーン。そんな彼女に追い打ちをかけるように、レヴィローズの世代交代を示す”シャンレインの石”が生まれてしまう事件勃発したり、魔力を封じ込められてしまったりで…。
『レヴィローズ』まとめ読んでみよう期間なので、手元にある分まとめ読んでみました。何のかんの言ってダリィの行動を理解しているジャスティーンが、ジャスティーンと出会うことで変わったシャトー、一途にレンドリアを追いかけるダリィなど、女の子たちが健気でいいですな。シャトーの謎の家族の謎は明かしてほしかった…。
さて、まとめて読んだら浮き彫りになってしまうこと。きつい言い方になるけど<→ジャスティーンが思い悩んでいることって、あんまり変化ないやん…。いつも同じようなところでぐるぐるしてて…、一歩進んでもまた一歩下がったらしょうがないよ。あとは、魔法使いサイドの心情などまーったく理解できなくて、読むのがやっぱり辛かった。ダリィの行動にしても、実力者というにしてはやや考えなし?といった何となくちぐはぐな印象が強く残ってしまった。←>
純情少年物語 全三巻(アシュネの章・エルドラの章・最終章
高遠砂夜/JUDAL
(イラスト)・集英社コバルト文庫・【
bk1・
別窓版】
オディエント家の嫡子として何不自由のない生活を送っていたアシュネ。しかしある日、彼は衝撃的な事実を知る。自分は取り替えられた子で、本当は貧しい市民だというのだ。本当の嫡子のエルドラはオディエント家に迎えられた一方で、アシュネは実の家族の元で暮らすことになるが…。
掲示板にておすすめされた一品。世界名作○場好きにはたまらない一品ですねぇ。はい、たまりませんでした。3冊一気読みしてしまったから…。途中、アシュネの身の上に起こることが切なすぎて、小公女○ーラを見ているときの寂寥感を思い出したりして。自分の境遇にも負けずがんばる少年、自分の存在意義を確立しようとする少年、自分の気持ちに素直に誠実に生きようとする少女、そんな彼らが生き生きとしていた物語だった。ラストは、世界名作○場なので、バッドエンドは…、という人ももちろん大丈夫。それに至る過程が辛いけど…。
天気晴朗なれど波高し。2
須賀しのぶ/船戸明里
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600217-5・【
bk1・
別窓版】
士官になったランゾット・ギアスに、ある意味で真の試練がやってきた。次の南洋航海の際に、新米は海神のために何か”芸”をしなくてはいけないというのだ。ギアス家は代々グンダホア・ジンガを披露せねばならないのだが…。
汗と涙の海軍コメディー第二弾。本気で笑い死にしてしまいそうだ…。ギアス家に代々かせられてきた使命・グンダホア・ジンガ。そして、それを踊り狂うギアス家の長男と次男…。私の中でジール(長男)のイメージが一新されてしまった。しかしながら、ランゾットがトルヴァンとともに見せた踊りも、これまた。今回の笑いはとても言葉で表すことができない(笑)。さて、内容としては、『
流血女神伝』の方にもちょこっと関係あるかも?というお嬢さんが出てきたりで、これまたなかなか楽しめた。ネイさまもかっこよかった。だから満足。
幽霊屋敷と風の宝玉 レヴィローズの指輪
高遠砂夜/起家一子
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600057-1・【
bk1・
別窓版】
ジャスティーンは叔母に頼まれて、行方不明になった風の宝玉を探すことになる。彼女と供に捜索隊に参加したのはダリィにスノゥ、そしてレンドリア。一筋縄でいくようなメンバーでないのはたしかで。
久しぶりに読んだレヴィローズ。コンスタンスに、お気楽にちょい読みするのにはいい感じだったと思う。一話完結だしね。お話は、風の宝玉を探すジャスティーンとその仲間というだけなんだけど…、ジャスティーンの宝玉の主人となった決意や、風の宝玉の寂しい過去などが中心かな。ただ、(読んでいる私の)感性のせいか、ちょとついて行きにくい部分(ダリィとスノゥのケンカと)がやっぱりあって、あまりのめり込むことはできなかったなぁ…。叔母さんもレンドリアもイマイチ理解できん。
ブラインド・エスケープ
樹川さとみ/藤田香
(イラスト)・富士見ミステリー文庫・ISBN4-8291-6190-6・【
bk1・
別窓版】
高校生の青野由貴は、学校帰りに不審な金髪少年・高嶋要に”誘拐”されてしまう。要は由貴を守って逃げ切らねばいけないらしく…。「タイムリミットは48時間」、2人の高校生の危険な逃避行がはじまる。。
こ、これは…、ヒーロー(高嶋要)がかっこよすぎるのでは…(笑)。ネタとしては『
夏休みは命がけ!』のような、命がけの冒険(いや、だいぶ違うか。でも、何となく同じようなイメージかなって)。ただ、夏休み〜と違うところは主人公がとにかく何でもできちゃうこと。ほかには、しいていえば何となく『
Arms』に通じるものがあるかな。さて、結構壮大なスケールで起きる誘拐逃避行物語、最後の最後まで目が離せなかった。特に、成り行き上2人の協力者となるやせれば美形のあの人。なんだかああいう飄々としている人好き…。極限状態で由貴と要の絆が深まっていく場面とか、あっと驚く真実とか、由貴がだんだんと吹っ切れていく過程など読み応えは◎。富士見のミステリー文庫は初挑戦だったんだけど、初めてでいい物読めた。満足。
天気晴朗なれど波高し。
須賀しのぶ/船戸明里
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600197-7・【
bk1・
別窓版】
ガゼッタ公国の名門・ギアス家の三男ランゾットは小説家になることを夢見ていた。しかし、海軍に入ることを拒むことができずに、ジェリント号で初航海を迎えることになる。そんな彼が乗船前日の乱闘騒ぎで出会ったのは、ジェリント号で同僚となる見習士官のひとりで…。
流血女神伝の番外編ですが、あまりにも本編との温度差にびっくりすること請け合い。ノリとしては『
天翔けるバカ(bk1)』が一番近いですかね。テーマとかは重たいんだけど、ランゾットの脳内小説作りとかにひとりでウケる…。それはさておき、やっぱりおもしろかった。うだうだいうのはこの際やめて、とにかくおもしろいとだけいっておこう。何しろ、『愛と笑いと冒険の青春海軍コメディー』らしいですから。さ、次もちゃきちゃき読んでいこう。
魔女の結婚 終わらない恋の輪舞
谷瑞恵/蓮見桃衣
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600223-X・【
bk1・
別窓版】
1500年の長き眠りから目覚めた、恐ろしく結婚願望が強い巫女姫エレイン。エレイン起こしてしまった上に彼女の師匠となり、彼女に振り回され続ける歩く不機嫌男の魔術師マティアス。そんな2人の旅の日常を描いた短編集。
前回、ますます微妙な関係になったエレインとマティアスの珍道中。3作品中、前ふたつは旅を始めた直後くらいのお話らしく、エレインの暴走っぷりがまだまだかわいらしい(笑)。そして3作品目は…、お待ちかね(えせ)らぶらぶモードが半全開。いつもの調子をとれないエレインや、どこかおもしろがっているマティアスがおもしろかった。何のかんの言ってたけど、本当はきっと、マティアスはうれしかったに違いない(希望的観測。そんな単純な性格の御仁じゃないからねぇ)。エレインのことをぼろくそに言いつつも、彼女の行動を読んだ上で策を講じるマティアスと、その思惑にすっぽりはまるエレインがよかった…。
邂逅のハレス海 アグラファ4
三浦真奈美/那知上陽子
(イラスト)・C-Novels Fantasia・ISBN4-12-500787-X・【
bk1・
別窓版】
リグリア討伐軍の司令官に任命されたミオ。ミオが最初に着手したことは、アティス海軍の脆弱さを克服するために100隻の軍船を新造させることだった。そして、各地の造船場を視察していたミオが見つけたのは、あの男で…。
前から期待していたミオvsアインがついに実現。今回も今回でなかなか燃える展開で、手に汗握って読んでいた。特に半ば、休戦協定(?)が結ばれたあたりなんかは、物語そっちのけでその場の雰囲気を楽しんでしまった…。海戦のシーンは、本当に作者さんが楽しんで書いているなって感じる楽しさだった。ミオにつきそうレシェフの不思議さに磨きがかかり、彼の正体が気になるところ。新キャラ、副官ベウが味のあるキャラで、彼の一挙手一同が結構おもしろかった。さあ、次も楽しみだ。