2003年3月の本の感想
でたまか アウトニア王国再興録 (英雄待望編・天地鳴動編)
鷹見一幸/Chiyoko
(イラスト)・角川スニーカー文庫【
bk1・
別窓版】
帝国に対する背信を問われ、不毛の地へ強制移住させられたアウトニアの国民たち。神聖ローデス連合との全面戦争に突入する帝国。アウトニア国民や、最前線に立つ兵士たちが求めたのは、皇太子殺害の濡れ衣を着せられ逃亡中のマイドだった。。
でたまか後半3冊のうち前の2冊を読了。なかなかマイドが出てこないんだけど、このじらし方が上手いなぁ、と思ってしまった。そして、再登場シーンはそうくるか、といったところ。特に、アウトニアに生身での再登場は、なんかある意味すごかった。今回ほぼメインに来ておりますメイ王女の兄チャーマー王子の妹思いのその姿にくらっときました(笑)。2冊を読んだ限り、やっぱりいろいろなところにコネタがちりばめていまして、たいがい分かってしまう自分が少しなさけなかった……
二人の眠り姫 暁の天使たち4
茅田砂胡/鈴木梨華
(イラスト)・中央公論新社C-NOVELS・ISBN4-12-500799-3【
bk1・
別窓版】
事情を説明してくれそうな人物の死体の前に急に蘇ったキング。そして、敵か味方か分からない二人のとんでもない青年たちと対峙することになり…。
もう、あらすじいらない(笑)。とりあえずキングが蘇ってしまいまして、一気に物語がおもしろくなった。3巻くらいまでは「これだ!」というものを感じることがなかったんだけど……、スピーディーな展開に思わず笑いをかみ殺したくなる会話。さすが。二人の眠り姫のうち、片一方は怒髪天を衝く勢いで復活いたしまして、もうひとりの眠り姫+ダンナをしばきにいく旅に出てました(←かなりネタバレ)ので、次は冒頭から大変楽しみ。で、ここまで盛り上がりつつもやはり読み終わってから気になる点が何個か出てくるのが少し悲しい。一番気になるのは、この物語の最終目的が不明なこと。デル戦では国を守る、スカウィでは会社を守る(?)という明確な目的があったけど、ここまで読んだ限りではやっぱり不明だ。もしかして、「目指せ!一般市民。それを邪魔するやつは許さない」とかだったら、どうしよう……
フラクタル・チャイルド ここは天秤の国
竹岡葉月/オノデラ佐知
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600227-2【
bk1・
別窓版】
正体不明のネットワークで結ばれる都市ライブラで”代行屋”(何でも屋)オフィス・サイズを営むカイに同居人のサキとジュラ。今度の依頼は、美人ダンサーの謎の殺人事件の真相を暴くこと。
『東方ウィッチクラフト』の竹岡さんのぴかぴかの新作。世界観が独特で、興味深い。謎の”精霊”や、それを使役する精霊使い、そしてライブラという都市。さすがだなぁ、と思うような出来映えだった。「ミステリー(謎解き?)+アクション」といった所は押さえているし、登場人物も生き生きとしていてテンポもよく楽しみながら読むことができた。ただ、東方〜のように思いっきり私のツボにジャストミートというわけでもなかったので少し残念かな。もしかしたら、イラストのせいかな……?今のところあんまり好きなタイプの絵でもないから。
双神の宿る国 シメール・マスター
たかもり諫也/浅見侑
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-447202-5【
bk1・
別窓版】
<人喰いの森>が崩壊し、その森に住んでいた<人喰い姫>キリエとキリエを守護していた<底なしの淵>の天使リオンらと共に旅を続ける幻獣使いのラズ。3人は道中出会った竜使いの姉妹と友に邪法使いの手がかりを追ってシトリィに入る。
完結編。たしかにキレイにさっぱり終わっているのだけれども…、展開早っ!新キャラはわんさか出てくるし、謎はどんどん増えていってどんどん消化されていくしで、すごい濃度だった。好きなお話だったので、もう少しじっくりと(2冊くらい?)でまとめてくれていてもうれしかったかも。特に、竜使いの姉妹の妹の方とラズの今後とか、双子の天使たちのその後とか、気になる点は多々あります…。謎は(たぶん)全部とけたのでもやもやっした気分ではありませんが、少し消化不足かな。
傭兵ピエール
傭兵部隊・アンジューの一角獣の隊長(シェフ)のピエールは、ある日神のお告げを聞いたというジャンヌ・ダルクに出会う。ピエールが彼女と再会しとき、ジャンヌはフランス軍の救世主ラ・ピュセルとして最前線に立っていた。
ジャンヌ・ダルクのお話はあまりにも有名なので、あらすじいらないかなぁ…、と思ったけど、一応。読み始めたきっかけは、なんといっても某歌劇なんですけど。
ピエールがかっこいい。でも、実際の所、読んでいてかっこいいんだか悪いんだかよく分からなくなってくる。根本はマザコンというか、女性にとんと弱いから…。ピエールの人柄を慕い集まってくる傭兵たちや、ジャンヌを純粋(…、いや、ちょっとは邪…)に愛する姿勢がやっぱりかっこいいかな。久しぶりに”漢”(とかいてオトコと読んでください)の出てくる話を読んだ。ジャンヌはジャンヌで、すごく天然で、でも芯が強くて凛としていてかっこいい。神とピエールとの間で揺れ動く乙女心がよい感じだった。今まで数種類のジャンヌ・ダルクを読んだり見たりしてきたけど、一番好きなタイプかな。人間模様以外にも、戦闘シーンなどもかなり燃えることができますし、上下2冊とかなりボリュームもあり、読み応えも抜群。
でたまか アウトニア王国奮戦記 (問答無用編・奮闘努力編・純情可憐編)
鷹見一幸/Chiyoko
(イラスト)・角川スニーカー文庫【
bk1・
別窓版】
カネなしコネなし色気なし、頭脳だけが武器の帝国の貧乏貴族マイド・ガッシュは期待に胸躍らして辞令を待っていた。しかし、配属先は辺境の辺境の辺境、アウトニアの軍事顧問。アウトニアのおおらかさにすっかりなじんだマイドだったが、予想もしない緊急事態に見舞われて…。
コメディタッチのスペースオペラ、でたまか。なんとなくおもしろそうだなぁ、と思って手にとったんだけど大当たり。すごくおもしろかった。「でたまか」とは「でたとこまかせ」の略で、このタイトルが物語の全てを語っているといっても過言ではないはず(笑)。「いい人」や「いい性格」をした楽しい登場人物に、随所にちりばめられたコネタたち。「トルメキア証券を舞台とした炎の七日間」とか「ぽちっとな」(ボヤッキー?)とか、マイドとメイ王女ののほほんラブモードとか、微妙に私のツボをついてきて…。しかも、コミカルに描かれつつも実はすごくシリアスだったりして…。一応「奮戦記」編はこの3巻で幕を閉じているのだけれども、なんともすごい引きでさっさと続きの「再興録」も読まないと。なお、読むときは3冊手元に置いてから読むことをオススメ。銀英伝のような宇宙戦争とは対極をなすような戦争。それでも、やっぱり戦争にはかわりない。はたして、あのアウトニアは一体どうなってしまうのだろうか?
ダルリアッド 謳われぬ歌
駒崎優/小田切ほたる
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-446503-7【
bk1・
別窓版】
闘神ルーグによって絶望の中永遠の時を生きるトゥーレは、自分の一族の末裔の王と出会う。その一族は、全く違った神を信仰する一族による侵略に悩まされていた。
3巻目で最終巻。物語は終始重たい雰囲気で、永遠の”終わり”というものを否応なく感じさせられた。それでもって、エンディングはとにかく切ない。途中でああなることは何となく理解できたのだけど、いざそれが実行されるとなると…。でも、ある意味トゥーレもルーグもあれで幸せだったのだろうな。この物語は基本的には同性同士のアレなんですが、苦手でも読めます。全面にばばばん!と押し出されているわけではないので。
スパイラルカノン エターナル ナイト
朝香祥/成瀬かおり
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-04-445904-5【
bk1・
別窓版】
自分に妖を取り込み、妖を狩る悠惟。ある事件から悠惟に協力するようになった”妖寄せ”の体質を持つ一帆は、悠惟の上司にその能力を買われスカウトを受けた。拒否する一帆は悠惟の姉と面会する機会を得て…。
あらすじが書けない。個人的にはらはらドキドキだった。だって、流血、スプラッタ…。たぶんその筋の本と比べたら全く大したことはないんだろうけど、そういうのを普段読まない人間で、しかも少し苦手なので。同じサイキックものでも『
御祓屋』とは全く違った雰囲気。あえていうなら、あっちが陽ならこっちは陰。悠惟の姉がある意味怖かった…。
汝、闇に放たれた者たちよ
片山奈保子/小田切ほたる
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600234-5【
bk1・
別窓版】
割れてしまった<誓いの石>を新調するために、アルザスと共にセイランティウス国へ向かったシャナたち。セイランティウスでは日ごと悪夢にうなされるという怪事件が起きていた。そんな国で、シャナは伝説の剣を手に取ってしまう上に、イーグとカイザードは神の化身としてもてはやされ…。
汝シリーズ、旅情編(笑)。今回はお隣の国(たぶん)に旅立っております。でもって、そこでもなにやら闇神とたたかうハメに陥るシャナとイーグ。今回の副題はもてる男は辛いよ、といったところかなぁ。いままでこのシリーズでは出てくることのなかった乙女モード全開の妹姫に追いかけられるイーグが哀れだった。さて、もうひとりのお姫様、男装の麗人の姉姫の方のラブストーリーはベタながらも(あえていうなら、ベタすぎて)よかった…。アルザス陛下が微妙にダークな感じになってきて、もっとダークになってくれた方が物語にハリがでておもしろいなぁ、と思う今日この頃。
サン・フロリアヌスの騎士 水上の迷宮
中井由希恵/江ノ本瞳
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600234-5【
bk1・
別窓版】
トリスタンフォーネの自治領から逃げることに成功したヴィオナとクラウディオたち。一行はヴェネチアにたどり着き、サムエレの親類に保護される。そして、ヴィオナとクラウディオの別れが日に日に近づいていき…。
第3巻目。今回の副題は悩める若人ということで。ヴィオナとクラウディオの関係の他に、ヴィオナの侍女・リーナにも出会いが…?そして、今回も最後がすこいことになって。ヴィオナの決意にリーナのけじめ。果たして今後どのような展開を見せるのだろうか?このお話は女の子がかわいくて強いから大好き。
レヴァンデインの誓約 魔剣士と炎の乙女
はすなみ透也/忍青龍
(イラスト)・角川ビーンズ文庫・ISBN4-08-600214-0【
bk1・
別窓版】
「世界の破滅を招くもの」と予言され、金の瞳をもつ女性は生きていけない国。金の瞳を持つユイルはその生い立ちゆえに蔑まれながら生きていた。ある日、ユイルが出会った魔剣士アーネスト。彼との出会いによりユイルの人生は大きな転機を迎える。
デビュー作がかなり気に入ってしまった作者さんの第2弾。今度はうってかわってライトファンタジー。最初は表紙とあらすじとオビから少し敬遠してしまったのだけど、そんな心配は杞憂で最後まで楽しめた。世界も設定もきちんとファンタジーだし、ユイルの雑草魂には好感が持てるしで、これまた私のツボに入ってしまった模様(笑)。
砂漠の花
金蓮花/珠黎皐夕
(イラスト)・集英社コバルト文庫・ISBN4-08-600214-0【
bk1・
別窓版】
カルナサリ王国の新しい若き女王カリュンフェイは即位するときにふたつの相異なる神託を授かった。それは、カリュンにふたつの未来を示すということだった。ある日、カリュンは城の庭で偶然とある青年に出会う。その青年と出会うことで、カリュンは…。
幻想的な雰囲気が独特な金さんの新作&三部作の第一巻。”姫将軍”として育てられた王女様、というのが胸を打つ設定(笑)。そして、なかなかかっこいい。最初から波乱づくしの一冊で、カリュンを巡る二人の男性の苦悩が描かれている。私は、どちらかというと従兄殿の方が好みなんだが…、そうは行かないのだろうな。カリュンの切ない初恋、というものが果たしてどのような結末を迎えるのか、これは今後大いに期待したいシリーズ。