2004年3月の本の感想
女神の花嫁 後編 流血女神伝外伝
須賀しのぶ/船戸明里
(イラスト)集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
傭兵達の留守を狙って襲撃された村を守るため、ラクリゼは身ごもっていた子の命と引き替えに女神の力を手に入れる。無事、サルべーンとも再会することができたが、以前と違い二人は微妙にすれ違っていく。そして数年後、傭兵団は最後の仕事としてギウタの救援に向かうことになり、ラクリゼもサルベーンとともにギウタで戦うことを決心する。
読んだ後に思わず泣きそうになってしまうような、そんな「女神の花嫁」完結編。この世界の女神の力の大きさや、その運命なんかのからくりがとけていったんですが……、これ読んだら全部読みなおさなあかんような気がしてきた。唯一和んだのはチビカリエかな。あれはかわいいですよ。全体的に重い雰囲気の中、彼女だけが光り輝いて見えたような印象を受けました。
この物語は人が容赦なく死んでいくというところにリアリティを感じるのですが、物語の中の一人一人の生死というものがこれほど意味を持つ物語というのもいろいろ考えさせられますね。そこらへん、ゆっくり考えながらまた次の話が出るまでに復習できればいいなぁ。
双霊刀あやかし奇譚 2
甲斐透/左近堂絵里
(イラスト)新書館ウィングス文庫【
bk1・
別窓版】
早苗が見つけた脇差しには成仏できない二つの魂、兵衛介と吉光が宿っていた。今までは何とかうまくやっていたものの、祟り柳を斬ったことからその妖気を吸収し、力をつけた吉光が暴走をはじめる。兵衛介は吉光に押され、刀を支配しきれなくなってきたため、早苗の身の安全を考え脇差しを虎太郎に預けるように早苗に申し出る。
兵衛介と虎太郎だったら、私は虎太郎派だなぁ(注:後書き参照)とか思う双霊刀の完結編。ここまで好青年な青年、久しぶりに読んだような気がします。心の清涼剤ですね〜。
早苗の恋の相手(=兵衛介)が刀に宿る幽霊だけにハッピーエンドはありえん、寂しいと思いながら読んでいましたが、その「寂しさ」がきれいにまとまった終わりでした(個人的には十分ハッピーエンドやし……)。
うまく言えませんが、女の子向け小説の王道を地でいき、その上最後は「よかった!」と思えるようなすがすがしさを感じました。大正時代のレトロな雰囲気がまたよし。すごく安心して読める作家さんなので、次の新作にも期待しています。
伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党
谷瑞恵/高星麻子
(イラスト)集英社コバルト文庫【
bk1・
別窓版】
父親に会うためにロンドンに向かう途中、リディアは誘拐されてしまう。『妖精博士』としてのリディアの知識を求める誘拐犯から彼女を助けたのは、同じくとらわれの身となっていたエドガーと名乗る伯爵(自称)だった。エドガーの依頼に応え、彼の家に代々伝わる宝剣の手掛かりを探すこととなったリディアだが、どこまでも怪しすぎるエドガーにリディアは振り回されっぱなしで……。
新作は妖精博士(フェアリー・ドクター)の女の子の話でした。コバルト本誌で二回ほど短編が掲載されていましたが、それの長編版。伯爵エドガーの見事なタラシぶりとそれにうろたえるリディアにくらっと(笑)。谷さんのもうひとつのシリーズのヒーロー(?)に比べて喋りまくり、甘い言葉吐きまくりのエドガーが面白すぎる……。リディア父との掛け合いなんてもう最高。傾向としては『夜想』のフランツと何か通じるものがあります。谷さんらしく、一筋縄ではいかないストーリー展開、ちょっとロマンス、そして女の子が強い!最初見たときはこのタイトルでいいんかい、と思ったけど、読んでみると納得。たしかにこのタイトルがぴったりはまりますね。続きも是非とも読んでみたいと思います。続きでろ〜。
彩雲国物語 黄金の約束
雪乃紗衣/由羅カイリ
(イラスト)・角川ビーンズ文庫【
bk1・
別窓版】
後宮バイトで手にしたお金も使い果たしてしまった秀麗は、絳攸の誘いに応じて男の子のフリをし、人手不足の役所で使いっぱしりのバイトをはじめる。そんな秀麗の配属先は、人使いが大変荒いことで有名な”変人”が上司で……。
デビュー作が評判よかったのかなんなのか、とにかく続きがでました。個人的には結構好きなお話だったのでかなり楽しみだったり。さて、内容は新規の登場人物増えつつ、またもや裏でじじいが暗躍しつつでやっぱりちょっとごちゃごちゃしてますね(笑)。前巻にまして加速した王様の犬っぷり。今度は秀麗センサーまでつきました。しかし秀麗はそっち方面への意識はすっぽりと抜け落ちてしまっているので、まだまだかみ合わない会話が続きそうです(このかみあわなさが楽しいんだけど……)。しかし、あれや。女の子が秀麗一人というのも一抹の寂しさが……。どうせなら思いっきりライバル(なわりには実は親友)とかいう女の子を是非。実はもう一人合格していたっ!とかいうノリで。