夢見る人魚と契約のキス / 天正紗夜
仕立て屋になるためにアイルランドからロンドンを目指すメロウは、道中親切にしてくれたウィルの好意で、彼のロンドンの帽子店で仕立て屋をはじめることになる。メロウの最初の客は吸血鬼のヴィオラ。彼女から写真に写ることのできるドレスを作って欲しいという依頼を受けたメロウは、相棒のカエルのビジューと共に難問に挑むが、同時期に吸血鬼絡みと思われる通り魔事件も勃発していた。
硬派よりの私好みのお話だった!
第6回小学館ライトノベル大賞ルルル文庫部門優秀賞受賞作品の改題・改稿作。人魚のお針子メロウと謎の帽子屋の青年ウィル、そしてメロウの幼馴染の魔法使いアランが繰り広げる、妖精たちが存在するけど徐々に消えゆくような時代の19世紀のロンドンを舞台にした人魚姫がモチーフとした物語(アイルランドの飢饉の後の話のようなので、19世紀中頃でしょうねぇ、と。あと、車が出始めたところとか……ヴィクトリアン・ローズ・テーラーと同じくらいか!)。わりに硬派、といいますか優等生のような雰囲気の物語で、頑張るメロウがかわいらしくて良かったです。こういう「安心して読める行儀の良いお話」というのが結構好きなので、個人的にはポイント高し。
恋をしちゃうと(最後は)消えちゃうかもしれないので、周囲が恋を遠ざけているメロウと、ウィルのなんとなくの付かず離れずの距離感がよいものでした。お、いつのまにあんたメロウに惹かれてるんだ!というところはあったんですが、ウィルのメロウへの想いがよろしいですなぁ、少女小説。ウィルとメロウがニヤニヤになるほど、アランさんが切ないんですがね……敵に塩を送る幼馴染、泣かせる。あとは見守りポジションのカエルが!これはよいカエル。お父さんポジションのカエルが面白かったです。
派手さはないけど堅実なお話は好物ですので、また次回作も楽しみです。