鳥は星形の庭に降りる / 西東行

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行西東行

オパリオンの貴族の娘プルーデンスは年に似合わず論理的に物事を捕らえ、黄金律の美しさについて熱弁するような一風変わった少女。亡くなった祖母の遺品を納めるため、家族で祖母の故郷であるアラニビカ島に向かったプルーデンスは、祖母が残した「鳥の塔」の謎を巡る事件に巻き込まれる。祖母の意思を受け継ぎ塔の謎を解こうとするプルーデンスの相棒は、とてもうさんくさい蒼い衣の詩人ただひとり。他の大人とは違い、プルーデンスを子ども扱いしない詩人にうさんくささを感じながらも信頼のようなものを感じるプルーデンスは……


WHの新人さんは、一歩間違えればかわいげのないお嬢さんまっしぐらだけど要所要所でとてもかわいかったプルーデンスと、うさんくさすぎる謎の詩人の織りなす、神話の時代の名残がちょっと残った世界で繰り広げられるミステリー(っぽい)なお話でした。

まずはメインの二人のやりとりがとても面白かったです。その聡明さ故に周囲から孤立し、孤独を感じるプルーデンスの心にぽっと入り込んだ詩人。舌先三寸のお手軽詩人かと思えば、紡ぎ出す言葉は時に真理を突いていたりと「うさんくさい詩人」の醍醐味がいっぱい詰まっていました。詩人と一緒に行動し、塔の迷宮の謎を解いていく過程で年相応の感情を出し成長していくプルーデンスの姿が良かったなぁ。黄金律や数の美しさについて熱弁するという一風変わったお嬢さんでしたが、その変わり具合もかわいかったです。

派手さはないものの、物語にぐっと引き込まれました。詩人の口や語られる伝説から垣間見られる世界の成り立ちも物語の何ともいえない雰囲気の盛り上げに一役買い、とても気持ちよく読めました。
最後の詩人にはちょっっっっっ!と突っ込みたくなりましたがまあ雰囲気はつぶしてないし、うさんくさい詩人だしまあいいかということで。

鳥は星形の庭に降りる
西東行/睦月ムンク
講談社X文庫WH(2009.03)
ISBN:978-4-06-286587-6
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