ルチア クラシカルロマン / 華宮らら

本の感想, 作者名 は行華宮らら

政治抗争からのがれての滞在先からティエランカの国王一家が本国に帰還する途中、軍国主義を主張するミラーノ一派によるクーデターが勃発する。国王と王子が捕らえられる中、王女クエルヴァは怪我を負いつつもなんとか脱出することに成功し、たどり着いた浜辺の村から家族と国をミラーノの手から救うために行動を開始するのだが……


ルルル賞受賞作品の新人さんデビュー作。あらすじ読んだ限りは何か熱血タイプの王女様ががんばる話かと思いこんでいたのですが、王女様はとても物静かで熱血からはほど遠いような気がしました。全体的に、テンション低めで地味に面白いタイプだと思います。下記のような結構特徴的な雰囲気を持つお話かなぁと思います。

①ヒロインが理系
というわけで、理系なヒロインです。初っぱなからヒロインは船の構造に興味津々で他の話を聞いていません。そして基本とても「いい子」なので暴走することなくなぜか安心して読めてしまうという……。じんわりとくるんですがなんか派手さが足りないわっ!(とかいいながら噛めば噛むほど味が出てくるようなタイプは結構好き)

②時代背景が理解しやすい(ような気がする)
雰囲気としては第一次世界大戦前後とかそこら辺。なんとなくあんな感じかなぁと思いながら読んでいたら物語に入っていきやすかったです。ぬるい世界史ズキーなので特に違和感も感じず。
しかし、人の名前は最後まで中々覚えられなかったです。

③色めいた話がとんとない
主要登場人物で女性はヒロイン一人だけで(えー、心は女の人はイラスト付きでいらっしゃいましたが)、医者、少年、従兄、他国の協力者、謎の軍人、と各種取りそろえられている割には色めいた展開にはならず。というか、フラグのような物はたってるんですよね。しかし、種はまいたがそのあと全く手入れしないで放置!というこの潔さがいい。
最初の地味さからそれほど色恋沙汰を目当てに読んでいたわけでないのでこれも有りかなぁとは思いますが、「王女様、クーデター、協力者!なんかあるかも」と思いながら読んだ場合は非常に肩すかしだと思います。ヒロインが家族と国を救うために奮闘するところはとても面白かったのですが。

私は好きですが、苦手な人には苦手かも、というような硬派なローテンションな展開が結構ツボでした。ラスト近くは結構派手ですけど、しかしやはりヒロインが基本的におとなしい子だからなぁ。物語全体の雰囲気は好きな部類に入りますので、要チェックな新人さんです。

ルチア クラシカルロマン
華宮らら/石据カチル
小学館ルルル文庫(2008.12)
ISBN:978-4-09-452090-3
bk1/amazon