りんご畑の樹の下で / 香山暁子

本の感想, 作者名 か行香山暁子

婚約者から逃げ出すために駆け落ちをしたが駆け落ちにも失敗して田舎街にたどり着いたイギリス名家のシャロンは、使用人として謎の青年の家に強引に居座る。昭和初期の東北の農村でお嬢様学校の生徒に対抗し、立派な「お茶会」を開くと宣言してしまった千恵はお茶会の準備に奔走する。そして、現代では、彼氏がいるのになかなかうまくコミュニケーションがとれない結子は謎のりんごの精にとりつかれてしまい、りんごの精のとある「復讐」につきあわされてしまうのだが……。


今年の夏頃に(読むのがとても遅れましたスイマセン)教えていただいた作品。とても面白かった!1996年発行とのことなので12年前の作品ですね。

りんご(の木)にまつわるイギリスと日本で繰り広げられるオムニバスストーリーで、それぞれがちょーっとだけつながっていてちょっとだけにやっとしてしまいます(ストーリー展開上は関係ないのですが)。どれもこれも主人公の女の子が元気でかわいく、いろんな騒動を巻き起こしたり騒動に巻き込まれたりします。どれもこれもがテンション高めにどたばたーっと物語が展開していくのですが最後の方はほろりとくる結末で、このギャップがよいですね。

1話目のシャロンの物語から妙にテンションの高いへんてこ(注:主にシャロンが)な話だなぁと思っていたんですが、そのシャロンの奇想天外さにすっかりだまされてちょっとほろり。最後はなんかすごくロマンティックで裏切られた!(もちろんいい意味で)と思いました。
千恵の物語は千恵と謎の千恵の友人・操が繰り広げるちょっとほろ苦い女子学生の友情モノ。女子学生がわいわいと何かを作り上げていく様子とかすごく楽しそうなんですが、千恵と操の絆にほろりときます。その後の操の物語もちょっと読んでみたいなぁと思ったりも。
そして最終話の結子の物語は、へんてこ度が一番高くてなんじゃこりゃーと思いながらも最後にはほろりとくるいい話だったのでやられました。りんごの精のやることが強烈すぎて神尾くんが霞みすぎてました!

imgりんご畑の樹の下で
香山暁子/耒世可恋
集英社コバルト文庫(1996.09)
ISBN:4-08-614235-X
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