封印のエスメラルダ 赤薔薇の女王 / 山本瑤

本の感想, 作者名 や~わ行・他山本瑤

新皇帝の即位式のために帝都に向かったクラウディアとアドリアン。クラウディアを取りもどしたい皇妃エルフリーデはクラウディアに自分の元にくることを求めるが、エルフリーデの激情を垣間見たクラウディアは、アドリアンの元に残ることを選択する。そして、クラウディアになおも執着を見せるレオンハルトは、クラウディアを手に入れるために彼女にある条件を突きつける。

残念ながら最終巻、でした。きれいにまとまってはいたのだけど。

表紙から察するにほっこり系の西洋宮廷系物語かと思えば、実はかなり愛憎渦巻きどろどろしている封印のエスメラルダ。シリーズ5巻目にしていよいよエルフリーデがクラウディアに本性見せたよ!というところで最終巻という、なんですと!というお話でした。後書きに打ち切り通告だったおありますがなんともったいない!でも駆け足すぎるとはいえなんとかきれいにエンドマークが打たれているところはすばらしいです。……リアルタイムに読めてない私が言うのも何ですが、もったいないなぁと思わずにはいられません。

クラウディアにはもっと暗躍してもらって成り上がってほしかったとか、アドリアンにはもっとじっくり国盗りしてもらいたかった、とか、離れていても絆がーというところがもっとほしかったとか、クラウディアとエルフリーデの最終決戦ももっとじっくりしてほしかったとか、あの脇役たちにもっと出番を、とか残念だなぁと思う場面がいっぱいあるんですが、でも、あのラストで帳消しになるくらいきれいな終わり方で、ちょっと満足、かな。

しかし、返す返すも残念だ。ただのらぶらぶーな話ではなく、やるかやられるかの緊張感とか恋人ではない盟友という絆とか、愛憎渦巻く陰謀劇とかすごく好きだったのに……。こういうぴりっとした部分があったからこそ、あのラストがとても生きるんですよねぇ。あんまり需要がないのかなぁとしょんぼりです。

img封印のエスメラルダ 赤薔薇の女王
山本瑤/香坂ゆう
集英社コバルト文庫(2009.02)
ISBN:978-4-08-601258-4
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