翼の帰る処2 上 ―鏡の中の空― / 妹尾ゆふ子

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行妹尾ゆふ子

北嶺が北方人に攻め入られた傷も癒えぬ中、新年の参賀のため都に向かう皇女とヤエト達。皇女の治める北嶺が国に格上げされることに伴い、隠居を夢見るヤエトの前には自身も出世するという隠居から更に遠ざかる未来しか待っていなかった。しかも、皇帝が告げたヤエトの処遇は、ヤエトの想像をはるかに超える破格の待遇で……

面白かった!皇帝のヤエトに対する嫌がらせがすごすぎてとても笑ってしまいました。

隠居を夢見る我らがヒーロー、中間管理職の苦労が絶えない虚弱体質の尚書官ヤエト(アラフォー)と、元気いっぱいで不思議な魅力を持つ皇女さまの物語、待望の続刊です。やっぱり今回も面白かった!上下巻と二ヶ月連続での刊行なので、ぐっと我慢して下の発売前まで待ってました。鳥頭なのですぐ忘れ……、と、この話で鳥はほめ言葉かも……。

空を翔る鳥の描写がとても気持ちよくて、なんだか素敵だなぁと思いました。やっぱり空はロマンです。そして、世界の謎が少しずつ小出しに出てきて、どかっと転がるのは下巻なのかな、と思う展開でした。そんな中でも渋いじいさま・ジェイルサイドの背景やらなんやらはなるほど、と思いつつ。

姫様がとても素敵なのだけど、やっぱりヤエトが良いです。隠居願望を持ってるくせに頼られたら動いてしまう、そして周りの人もヤエトを心配しつつも頼ってしまうという何という悪循環。自分でも悪循環に陥っていること、そして隠居に一歩ずつ遠ざかっていくことが分かっているのに動くのがやめられないという端から見ていてとても面白い状況です。しかも、ヤエトのツッコミ(自己に対しても、他者に対しても)がいちいち面白いから更に読む手が止まりません。皇帝の嫌がらせも的確すぎてすごい。

他者の追従を許さない天然全開のセルクや、想像以上に重要な役目を担いそうなヤエトに恋するスーリヤ、そしてあんな状態になってしまった姫様やいかにというところで続きがとても楽しみです。発売日はまだかな!

翼の帰る処2 上 ―鏡の中の空―
妹尾ゆふ子/ことき
幻狼ファンタジアノベル(2009.07)
ISBN:978-4-344-81707-4
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