シャーレンブレン物語 ふたりの聖女 / 柚木空

本の感想, 作者名 や~わ行・他柚木空

キスカの陰謀により<癒し姫>の周辺人事が一変し、<癒し姫>ユリウスから遠ざけられてしまったミナワはユリウスに会うこともできずにいた。時を同じくして、地方で疫病が発生し、触れるだけで病気を治すという「癒しの力」を持った銀の乙女が現れるという噂が流れ、ミナワは不安を積もらせる。そしてついに王都にまで疫病が蔓延し、奥に引き篭もったままの<癒し姫>への不審が人々に積もる頃合いを見計らったように噂の銀の乙女が王都に出現する。

クライマックスに向けてがつんとシリアスモード。

ユリウス、ミナワ、アレクシオ、そしてキオたちのなにげのない幸せな日常が急に終わりを告げた巻でした。1巻目から、ホワホワした雰囲気を持つくせに若干容赦ない展開に持って行くなぁというシリーズでしたが、今回のはさらに輪をかけてシリアスな展開。
歴代の癒し姫が力を失っていったという事実、神殿の裏で張り巡らされる種々の陰謀、そして王都を襲う疫病、謎の力を持つ乙女に折良く現れるかの集団の人ともう全部が全部次の巻には綺麗につながってすがすがしい解決編を!と熱望してしまう程不穏な展開の連続でした。そんな中、シリーズ序盤では陰謀方面から意識的に遠ざけられていたミナワが、正面切って啖呵を切った所は格好良かったです。大好きな人たちのために凛々しくなる女の子は好き好き。

端々に語られるユリウスとミナワの互いを想う気持ちにキュンキュンしたり、アレクシオ父に思わず和んでしまったりと不穏の連続の中にも救いはあったのですが、最後の最後にまさかここで、と続きが気になって仕方がない幕引き。続きも早く読みたいです。

imgシャーレンブレン物語 ふたりの聖女
柚木空/鳴海ゆき
小学館ルルル文庫(2009.12)
ISBN:978-4-452139-9
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